「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の主な改正点と留意点 【第4回】「各論における改正事項『貸倒引当金』」及び「チェックリスト利用上の注意点」
金銭債権について、取立不能のおそれがある場合には、その取立不能見込額を貸倒引当金として計上しなければならない。
この「取立不能のおそれがある場合」とは、債務者の財政状態や取立てのための費用や手続の困難さ等を総合的に判断することになるが、会計上、取立不能見込額の算定方法は、一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に区分し、それぞれの区分に応じて貸倒引当金を算定する。
実際の算定に当たっては、過去の貸倒実績率等の合理的基準により算定することが求められる等、中小企業にとってはハードルの高いものとなっている。
税効果会計を学ぶ 【第7回】「一時差異等に係る税効果の認識」
一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収又は支払いが見込まれない税金の額を控除し、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上しなければならない(個別税効果会計実務指針16項)。
個別税効果会計実務指針21項では、大きく①収益力に基づく課税所得の十分性、②タックスプランニングの存在、③将来加算一時差異の十分性を規定している。
我が国では、税法上、将来加算一時差異をもたらすケースはそれほど多くはない。このため、繰延税金資産の可能性を判断する際には、上記①収益力に基づく課税所得の十分性がポイントになることが多いと考えられる。
《速報解説》 株式保有特定会社に係る「財産評価基本通達」の一部改正(案)について
平成25年4月2日付で国税庁からパブリックコメント『「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見公募の手続の実施について』が発表された。
これは、平成25年2月28日の東京高裁判決を受けたもので、改正の概要は次の通りである。
monthly TAX views -No.3-「番号制度をどう税制に活用するか、これからの課題」
国民一人ひとりに住民基本台帳に基づく番号を割り振って、年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務の6分野での活用する、番号制度(民主党政権下では「マイナンバー」と称した)導入の法律(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案)が成立しそうだ。
この法律は、昨年の通常国会に民主党政権が提出し、自民、公明、民主の3党で修正合意していたが、同年11月の衆院解散で廃案になったものである。
これにより、個人に、生涯変わらない番号が交付され、様々なサービスを受けることが可能になる。
わが国を除く先進諸国は、IT時代に不可欠な番号というツールを活用して、効果的で効率的な行政を展開しており、やっとわが国もその仲間入りしたということであろう。
株式交換前に株式交換完全子会社が自己株式を保有している場合の会計・税務処理
当社(P社)は、70%所有の子会社(S社)を適格株式交換により完全子会社にしたいと思っています。S社が自己株式を保有していることから当社とS社との間で株式の持合が生じることになりますが、気をつけるべき点はありますか?
法人税の解釈をめぐる論点整理 《寄附金》編 【第1回】
法人が対価性のない、あるいは対価性の乏しい行為をすることで、第三者に対して経済的な利益の移転がなされる場合がある。そのような利益の移転行為については、法人の事業に直接又は間接的に関連する場合と、間接的にも関連しない場合があり得るが、その境界は必ずしも明確でないといえる。
そこで、そのような利益の移転行為については、それが法人の事業と直接関連することが明らかな場合を除き、寄附金に該当するものとして、一定の基準によって損金算入限度額を定めて、その限度額の範囲内でのみ損金算入を認め、それを超える部分については損金算入を認めないものとされている(法法37①)。
〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制─企業戦略への影響と対策─ 【第5回】「調整所得金額」及び「適用除外」
前回は、本制度による損金不算入額計算の第二段階である「控除対象受取利子等合計額」及び「関連者純支払利子等の額」に関して、確認すべきポイントを解説した。
今回は引き続き、損金不算入額計算の最終段階として、関連者純支払利子等の額と比較するための基準となる「調整所得金額」について解説を行うとともに、「損金不算入額」及び本制度の適用の対象外となる「適用除外」について併せて解説を行う。
企業不正と税務調査 【第5回】「経営者による不正」 (2)架空(水増し)人件費
架空の人件費の計上による裏金作り/所得隠しは、かつては一般的な脱税手法であったが、近年は、税務調査において露見する可能性が高いということが経営者に浸透したためか、報道される件数は減っている。
しかし、昨年夏、パチンコ業界大手のガイア社が、グループ全体で40億円の所得隠しがあり給与の水増しが行われていたという報道があり、業種・業態によっては、こうした裏金作り/所得隠しスキームは健在であることが裏づけられた。
組織再編税制における不確定概念 【第5回】「みなし配当と株式譲渡損の両建て」
受取配当等の益金不算入については、二重課税の排除を目的とした制度であるため、その制度趣旨に合致する範囲内においては、租税回避行為であると認定すべきではないと考えられる。
しかしながら、実務上、みなし配当と株式譲渡損が両建てになるケースも少なからず存在し、とりわけ、平成22年度税制改正によりグループ法人税制が導入される前においては問題とされていた。
本稿では、グループ法人税制が導入された後においても残されている問題点について解説を行う。
税務判例を読むための税法の学び方【7】 〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋(その2)
形式的効力を同じくする法令間において、ある事柄について一般的に規定した法令がありながら、同じ事柄について特別の「事項、場合、対象、地域など」を限定してその一般的に規定した法令と異なる内容を規定した法令がある場合には、この両者は、一般法と特別法の関係にある(前者が一般法、後者が特別法)という。