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【STEP3】交換取引に準ずるもの
(1) 会計処理
収用等による圧縮記帳の場合、税務上、直接減額方式と圧縮記帳方式が認められている。
【STEP2】で解説したとおり、直接減額方式は、取得原価を減額するため、取得原価主義の考え方に照らして適切ではない。そのため、会計上は、積立金方式が望ましい。
しかし、収用等により資産を譲渡し新たに取得した資産が、譲渡資産と同一種類、同一用途である等取得資産の価額として譲渡資産の帳簿価額を付すことが適当と認められるときに、譲渡益相当額をその取得価額から控除した場合(直接減額方式)は当面、監査上妥当なものとして取り扱う(43号一2、Ⅲ2)。
なお、収用等により資産を譲渡した事業年度に圧縮対象資産を取得できなかった場合の圧縮記帳見込額は、未決算特別勘定等の適当な科目で貸借対照表の負債の部に計上する(43号一(注2))。
《設例2》
土地が収用されたため、補償金全額で新たな土地を取得した。
- 譲渡した土地の帳簿価額 ・・・ 10,000
- 補償金 ・・・ 20,000
- 圧縮限度額 ・・・ 10,000
- 法定実効税率 ・・・ 35%
(1) 積立金方式
(※1) 圧縮限度額10,000-(10,000×35%)
固定資産圧縮積立金は、土地の売却時に取り崩す。
(※2) 圧縮限度額10,000×35%
会計上の土地の計上額は20,000である。一方、税務上の土地の計上額は、10,000である。
したがって、会計上の土地>税務上の土地のため、将来加算一時差異が生じる。
繰延税金負債は、売却により将来加算一時差異が解消された場合、取り崩す。
(2) 直接減額方式
(※3) 圧縮限度額10,000
会計上と税務上の土地の帳簿価額が一致しているため、税効果の計上はない。
(2) 表示
交換取引に準ずる収用等に伴う代替資産の取得や、特定資産の買換え等による固定資産の取得の場合、本来なら、損益計算上、圧縮損と譲渡益とを相殺表示することが望ましいが、両建表示しても監査上妥当なものとして取り扱う(43号Ⅲ3)。
また、交換取引に準ずるものの場合、取得資産につき圧縮記帳を行った旨及び圧縮額を財務諸表に注記する。なお、当該注記は、圧縮記帳が行われた事業年度の財務諸表についてのみ行えば足りる(43号一(注3)、Ⅲ5)。