公開日: 2020/12/24 (掲載号:No.400)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第54回】「繰延資産」

筆者: 西田 友洋

【STEP1】繰延資産計上時の会計処理

(1) 繰延資産の内容

繰延資産として計上できる項目の内容は、以下のとおりである(実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「繰延資産取扱い」という)3(1)~(5)」)。

株式交付費 株式募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・株券等の印刷費、変更登記の登録免許税、その他株式の交付等のために直接支出した費用。 ※なお、株式の分割や株式無償割当てなどに係る費用は、繰 延資産には該当せず、支出時に費用(販管費又は営業外費用)として処理する。 社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む) 社債募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・社債券等の印刷費、社債の登記の登録免許税その他社債発行のため直接支出した費用。 創立費 会社の負担に帰すべき設立費用、例えば、定款及び諸規則作成のための費用、株式募集その他のための広告費、目論見書・株券等の印刷費、創立事務所の賃借料、設立事務に使用する使用人の給料、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、創立総会に関する費用その他会社設立事務に関する必要な費用、発起人が受ける報酬で定款に記載して創立総会の承認を受けた金額並びに設立登記の登録免許税等。 開業費 土地、建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利子、使用人の給料、保険料、電気・ガス・水道料等で、会社成立後営業開始時までに支出した開業準備のための費用。 開発費 新技術又は新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のために支出した費用、生産能率の向上又は生産計画の変更等により、設備の大規模な配置替えを行った場合等。ただし、経常費の性格をもつものは開発費には含まれない。 (「研究開発等に係る会計基準」の対象となる研究開発費については、開発費には含まれない)

(2) 繰延資産の会計処理

繰延資産の会計処理は、以下のとおりである(繰延資産取扱い3(1)~(5))」。

株式交付費 支出時に営業外費用として計上 繰延資産として計上可。ただし、株式交付から3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却する。 社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む) 繰延資産として計上可。ただし、社債発行費は、社債の償還までの期間にわたり利息法により償却する。 新株予約権の発行に係る費用は、新株予約権の発行のときから、3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却する。 新株予約権付社債で、一括法により処理するときは、当該新株予約権付社債の発行に係る費用は、社債発行費として処理する。 創立費 繰延資産として計上可。ただし、会社の成立のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却する。 開業費 支出時に営業外費用として計上(ただし、販管費としても計上可) 繰延資産として計上可。ただし、開業のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却する。 開発費 支出時に売上原価又は販管費として計上 繰延資産として計上可。ただし、支出のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法等により償却する。

【会計処理の継続性(繰延資産取扱い3(7))】

同一の繰延資産項目に係る会計処理が前事業年度に行われていて、当事業年度の会計処理が前事業年度の会計処理と異なる場合、原則として、会計方針の変更として取り扱う。ただし、支出内容に著しい変化がある場合には新たな会計事実の発生として考え、直近の会計処理とは異なる会計処理を選択することができる。この場合、以下について、追加情報として注記する。

直近の会計処理とは異なる会計処理方法を選択した旨

引き続き同一の会計処理方法を採用したと仮定した場合と比較したときの影響額

会計方針の変更として取り扱わなかった理由(新たな会計事実の発生として判断した理由)

 

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第54回】

「繰延資産」

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

将来の期間に影響する特定の費用は、原則、費用として計上するが、「繰延資産」として資産に計上することもできる。そして、「繰延資産」として計上できるのは、以下の項目のみである。

本解説では、「繰延資産」の会計処理について解説する。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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