公開日: 2014/01/23 (掲載号:No.53)
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平成25年分 確定申告実務の留意点 【第3回】「住宅税制の要件・手続(まとめ)」

筆者: 篠藤 敦子

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【2】 所得税額の特別控除

住宅を取得等した場合に適用できる所得税額の特別控除は、新たに住宅を取得した時だけでなく、既存の住宅に増改築等を行った場合も対象となる。

(1) 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合

① 制度の概要

[適用となるケース]

① 借入金等を利用する場合(措法41①、措法41⑩)

借入金等を利用して住宅を新築又は取得した場合

② 借入金等を利用しない場合(措法41の19の4①)

認定長期優良住宅(*1)を新築又は取得した場合(①との選択適用)

(*1) 認定長期優良住宅とは、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に規定する認定長期優良住宅をいう。

[平成25年に居住の用に供した場合の税額控除額]

① 借入金等を利用する場合(措法41③五、措法41⑪三)

借入金等の年末残高合計額×1%(100円未満の端数切捨て、以下すべて同じ)

・控除期間:10年

・控除限度額:1年につき20万円(取得等した住宅が認定長期優良住宅又は認定低炭素住宅(*2)の場合には30万円)

(*2) 認定低炭素住宅とは、都市の低炭素化の普及の促進に関する法律に規定する低炭素建築物に該当する家屋又は同法の規定により低炭素建築物とみなされる特定建築物に該当する家屋(特定建築物に該当する家屋については、平成25年6月1日以後に自己の居住の用に供した場合に対象となる)をいう。

② 借入金等を利用しない場合(措法41の19の4①②、措令26の28の6)

標準的な費用(*3)(500万円が限度)×10%

・その年に控除しきれない金額がある場合には、翌年の所得税額から控除する。

(*3) 標準的な費用とは、国土交通大臣が定めるもので、次の金額に床面積を乗じた金額をいう。

構 造	1㎡当たりの金額 木造、鉄骨造	33,000円 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造	36,300円 上記以外の構造	33,000円

② 適用要件

この制度の適用を受けるためには、次の要件を満たす必要がある(措法41①、措令26①)③④)。

(ア) 新築された住宅又は建築後使用されたことのない住宅を取得すること。

(イ) 新築又は取得の日から6ヶ月以内に居住の用に供し、適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること。

(ウ) 床面積(*)50㎡以上、床面積の1/2以上を居住の用に供していること。

(*) 床面積の判断基準(措通41-10~12

・登記簿上の表示で判断

・マンションの場合は、専有部分の床面積で判断(共用部分は含めない)

・店舗併用住宅や共有者がいる住宅の場合は、店舗部分や共有持分も含めた建物全体の床面積で判断

(エ) 配偶者や直系血族等、特別の関係のある者からの取得ではないこと。

(オ) その年分の合計所得金額が3,000万円以下居住者であること。

(カ) 居住の用に供した年とその前後2年ずつ(計5年)の間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)等の適用を受けていないこと。

(キ) 借入金を利用する場合は、10年以上にわたって分割返済する借入金であること。

③ 適用手続

適用初年度は、給与所得者であっても確定申告をする必要がある。
確定申告書には、次の書類を添付し、納税地の所轄税務署長に提出する(措法41(24)、措規18の21)。

(ア) 給与所得の源泉徴収票(給与所得者の場合)

(イ) 計算明細書

・借入金等を利用する場合

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書

・認定長期優良住宅について特別控除の適用を受ける場合

認定(長期優良)住宅新築等特別税額控除額の計算明細書

(ウ) 住民票の写し

(エ) 借入金等を利用する場合:住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

(オ) 登記事項証明書、請負契約書等の写し(取得等年月日、対価の額、床面積を明らかにするもの)

(カ) 認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合:認定通知書の写し等の各種証明書

 

(2) 中古住宅を取得した場合

① 制度の概要

[適用となるケース]
借入金等を利用して中古住宅を取得した場合(措法41①)

[平成25年に居住の用に供した場合の税額控除額(措法41③五)]
借入金等の年末残高合計額×1%

・控除期間:10年

・控除限度額:1年につき20万円

② 適用要件

この制度の適用を受けるためには、次の要件を満たす必要がある(措法41①、措令26②~④)。

(ア) 建築後使用されたことのある家屋で、次のいずれかに該当するものを取得したこと。

・耐火建築物:取得日以前25年以内に建築されたもの

・耐火建築物以外:取得日以前20年以内に建築されたもの

・上記に該当しない住宅:一定の耐震基準に適合するもの(*)

(*) 一定の耐震基準に適合するものとは、取得日前2年以内に耐震基準適合証明書による証明のための家屋の調査が終了したもの、取得日前2年以内に住宅性能評価書により耐震等級に係る評価が等級1~等級3と評価されたもの、取得日前2年以内に既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されているもの

(イ) 【2】(1)②(イ)~(キ)と同じ

③ 適用手続

基本的な手続及び添付書類は【2】(1)③と同じである。
取得した住宅が「一定の耐震基準に適合するもの」である場合には、要件に応じて次の書類も必要となる(措法41(24)、措規18の21)。

(ア) 耐震基準適合証明書

(イ) 住宅性能評価書の写し

(ウ) 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類

 

(3) 既存住宅を増改築した場合

① 制度の概要

[適用となるケース]
借入金等を利用して既存住宅を増改築等(*)した場合(措法41①)

(*) 増改築等とは、次のいずれかに該当する工事をいう(措法41⑬、措令26(25))。

・増築、改築、建築基準法に規定する大規模修繕又は大規模模様替え

・区分所有部分の床、階段又は壁の過半について行う一定の修繕、模様替え

・居室、調理室、浴室、便所その他の一室の床又は壁の全部について行う修繕、模様替え

・建築基準法施行令の構造強度等に関する規定又は地震に対する安全性に係る基準に適合させるための一定の修繕、模様替え

・一定のバリアフリー改修工事、一定の省エネ改修工事

[平成25年に居住の用に供した場合の税額控除額]
借入金等の年末残高合計額×1%

・控除期間:10年

・控除限度額:1年につき20万円

② 適用要件

この制度の適用を受けるためには、次の要件を満たす必要がある(措法41①、措令26(27))。

(ア) 自己所有かつ自己の居住の用に供する家屋 について行う増改築等であること。

(イ) 増改築等の日から6ヶ月以内に居住の用に供し、適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること。

(ウ) 【2】(1)②(ウ)~(キ)と同じ

(エ) 工事費用が100万円超であり、その1/2以上が居住用部分の工事費用であること。

③ 適用手続

基本的な手続及び必要な書類は【2】(1)③と同じである。増築、改築以外の工事については、増改築等工事証明書等の添付も必要となる(措法41(24)、措規18の21)。

 

(4) 省エネ改修工事をした場合(【2】(3)の要件に該当する場合には(3)との選択適用)

① 制度の概要

[適用となるケース]

① 借入金等を利用する場合(措法41の3の2⑤)

・・・断熱改修工事等(*1)をした場合

② 借入金等を利用しない場合(措法41の19の3①)

・・・一般断熱改修工事等(*2)をした場合

(*1) 断熱改修工事等とは、次の工事をいう(措法41の3の2⑥)。

・断熱改修工事等(居室のすべての窓の改修工事又はその工事と併せて行う床、天井、壁の断熱工事で、改修部位の省エネ性能が平成11年基準以上となるもの)

・断熱改修工事等のうち、改修後の住宅全体の省エネ性能が平成11年基準相当となると認められる工事(特定断熱改修工事等)

・上記2つの工事と併せて行う一定の修繕、模様替えの工事

(*2) 一般断熱改修工事等とは、次の工事をいう(措法41の19の3④)。

・すべての居室の窓全部の改修工事、又はその工事と併せて行う床、天井、壁の断熱工事で、その改修部位の省エネ性能が平成11年基準以上となるもの

・上記工事と併せて行う一定の太陽光発電設備の取替え又は取付けに係る工事

[平成25年に居住の用に供した場合の税額控除額]

① 借入金等を利用する場合(措法41の3の2⑤)

A×2%+(住宅借入金等の年末残高-A)×1%

・A:住宅借入金等年末残高のうち、特定断熱改修工事等に要した額(200万円が限度)、住宅借入金等の年末残高は1,000万円が限度

・控除期間:5年

・控除限度額:1年につき12万円

② 借入金等を利用しない場合(措法41の19の3①二)

次のいずれか少ない金額(200万円が限度、太陽光発電設備設置工事が含まれる場合は300万円が限度)×10%

(ア) 一般断熱改修工事に要した費用の額

(イ) 一般断熱改修工事の標準的な費用の額

② 適用要件

この制度の適用を受けるためには、次の要件を満たす必要がある(措法41の3の2⑤⑥、措法41の19の3①二、③⑥)。

(ア) 自己所有かつ自己の居住の用に供する家屋 について行う改修工事であること。

(イ) 増改築等の日から6ヶ月以内に居住の用に供し、適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること。

(ウ) 【2】(1)②(ウ)(オ)と同じ

(エ) 借入金等を利用する場合は、5年以上にわたって分割返済する借入金であること。

(オ) 工事費用が30万円超であり、その1/2以上が居住用部分の工事費用であること。

(カ) 借入金等を利用しない場合は、前年においてこの制度の適用を受けていないこと。

③ 適用手続

基本的な手続及び必要な書類は【2】(1)③と同じである。増改築等工事証明書の添付が追加で必要となる。
また、借入金等を利用しない場合には、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」に代えて「住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書」を添付する。

 

(5) バリアフリー改修工事をした場合(【2】(3)の要件に該当する場合には(3)との選択適用)

① 制度の概要

[適用となるケース]
特定居住者(*1)が借入金等を利用して一定のバリアフリー改修工事(*2)をした場合(措法41の3の2①、措法41の19の3①)

(*1) 特定居住者とは、次のいずれかに該当する居住者をいう(措法41の3の2①)。

・50歳以上である者

・介護保険法に規定する要介護又は要支援の認定を受けている者

・所得税法上の障害者である者

・高齢者等(65歳以上の親族、要介護・要支援認定を受けている親族、障害者である親族)と同居を常況としている者

(*2) 一定のバリアフリー改修工事とは、高齢者等が自立した日常生活を営むのに必要な修繕又は模様替えで、次のいずれかに該当する工事を含む増改築等をいう(措法41の3の2②)。

・介助用の車いすで移動するために通路や出入口を拡張する工事

・階段の設置(既存の階段を撤去する場合に限る)又は改良により勾配を緩和する工事

・浴室の改良工事のうち一定のもの

・便所の改良工事のうち一定のもの

・浴室等に手すりを取り付ける工事

・浴室等の床の段差を解消する工事

・出入口の戸の改修工事

・浴室等の床を滑りにくい材料に取り替える工事

[平成25年に居住の用に供した場合の税額控除額]

① 借入金等を利用する場合(措法41の3の2①)

A×2%+(住宅借入金等の年末残高-A)×1%

・A:住宅借入金等年末残高のうち、バリアフリー改修工事等に要した額(200万円が限度)、住宅借入金等の年末残高は1,000万円が限度

・控除期間:5年

・控除限度額:1年につき12万円

② 借入金等を利用しない場合(措法41の19の3①一)

次のいずれか少ない金額(200万円が限度)×10%

(ア) バリアフリー改修工事に要した費用の額

(イ) バリアフリー改修工事の標準的な費用の額

(*) 省エネ改修工事をした場合の特別税額控除の適用を受ける場合は、控除額は合計で20万円(太陽光発電設備設置工事が含まれる場合は30万円)

② 適用要件

【2】(4)②と同じ。

③ 適用手続

基本的な手続及び必要な書類も【2】(4)③と同じである。
適用要件に応じて介護保険の被保険者証の写しの添付が必要となることもある。

 

(6) 耐震改修工事をした場合(住宅借入金等特別控除の要件にも該当する場合には、重複適用可)

① 制度の概要

[適用となるケース]
住宅耐震改修(*)をした場合(措法41の19の2①)

(*) 住宅耐震改修とは、地震に対する安全性の向上を目的とした増築、改築、修繕又は模様替えをいう(措法41の19の2①)。

[平成25年に居住の用に供した場合の税額控除額]

次のいずれか少ない金額(200万円が限度)×10%

(ア) 住宅耐震改修に要した費用の額

(イ) 住宅耐震改修に係る耐震工事の標準的な費用の額

② 適用要件

(ア) 昭和56年5月31日以前に建築された、自己の居住の用に供する家屋に対する工事であること。

(イ) 耐震改修した家屋が、現行の耐震基準に適合するものであること。

③ 適用手続

適用のための手続及び必要な書類は、【2】(4)③と基本的に同じである。住宅耐震改修等証明書の添付が追加で必要となる(措法41の19の2②)。
また、「住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書」に代えて「住宅耐震改修特別控除額の計算明細書」を添付する。

*   *   *

次回(最終回)は、金融所得課税を取り上げ、解説を行う予定である。

〔凡例〕
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
措規・・・租税特別措置法施行規則
(例)措法33の4①・・・租税特別措置法33条の4第1項
※青文字の(24)・・・第24項

(了)

平成25年分

確定申告実務の留意点

【第3回】

「住宅税制の要件・手続(まとめ)」

 

公認会計士・税理士 篠藤 敦子

 

所得税には、住宅に係る各種の特例が設けられている。その主なものは、居住用財産を譲渡又は買換え、交換した場合等に適用される譲渡所得の特例と、居住用財産を取得又は増改築等をした場合に適用できる特別控除の制度である。

以下に、平成25年分の所得税に適用される主な住宅税制について、その概要と適用要件等をまとめることとする。なお、特例毎に詳細な適用要件が規定されているが、一般的なケースに必要となる主な要件のみ列挙している。

また、東日本大震災により被害を受けた場合の取扱いについては、国税庁ホームページ「東日本大震災により被害を受けた場合等の税金の取扱いについて」をご参照いただきたい。

 

【1】 譲渡所得の特例

譲渡益が計算される場合に適用することができる特例〕

(1) 3,000万円の特別控除

(2) 長期譲渡所得の特例(軽減税率)

(3) 特定居住用財産の買換えの特例

譲渡損失が計算される場合に適用することができる特例〕

(4)・(5) 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

(1) 3,000万円の特別控除

① 制度の概要

居住用財産を譲渡したときは、譲渡所得から最高3,000万円を控除することができる(措法35①)。この特例は、居住用財産の所有期間に関係なく適用できる。また、【1】(2)「長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率)」との重複適用が可能である。

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連載目次

〈確定申告実務の留意点〉

筆者紹介

篠藤 敦子

(しのとう・あつこ)

公認会計士・税理士

津田塾大学卒業
1989年 公認会計士試験第二次試験合格
1994年 朝日監査法人(現 あずさ監査法人)退社後、個人事務所を開業し、会計と税務実務に従事。
2008年より甲南大学社会科学研究科会計専門職専攻教授(2016年3月まで)
2010年より大阪電気通信大学金融経済学部非常勤講師

【著書等】
・『マンガと図解/新・くらしの税金百科』共著(清文社)
・『会計学実践講義』共著
・『日商簿記1級徹底対策ドリル 商業簿記・会計学編』共著(以上、同文舘出版)
・『148の事例から見た是否認事項の判断ポイント』共著(税務経理協会)
・「不動産取引を行った場合」『税経通信』2012年3月号(103-109頁)

【過去に担当した研修、セミナー】
SMBCコンサルティング、日本経済新聞社、日本賃金研究センター
社団法人大阪府工業協会、西日本旅客鉄道株式会社、社団法人埼玉県経営者協会
大阪法務局

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