公開日: 2018/11/29 (掲載号:No.296)
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これからの国際税務 【第10回】「ポストBEPSにおける『税の安定性プロジェクト』の進捗」

筆者: 青山 慶二

これから国際税務

【第10回】

「ポストBEPSにおける『税の安定性プロジェクト』の進捗」

 

早稲田大學大学院会計研究科 教授
青山 慶二

 

1 増幅が懸念される「税の不安定性」リスクへの対応

BEPSプロジェクトの成果物は、国際課税ルールの間隙をついて二重非課税の便益を不当に得ている多国籍企業をターゲットにした各種処方箋であり、BEPS防止措置実施条約の締結や移転価格税制の改正などがその具体例である。

しかし、近年はBEPSプロジェクト以前から、二重課税事案の解決のための相互協議が増加しその解決が遅延していることが問題視されていたことから、新規の処方箋については、その解釈・適用の如何によっては新たな二重課税リスクを追加し、納税者・当局の双方にとって予測可能性をさらに弱めることが懸念されていた。条約における主要目的テスト(PPT)や評価困難な無形資産への移転価格税制の適用など、BEPSが新規導入した課税メカニズムの中には、各国での経験が豊かとはいえないものも含まれていることも、その懸念を増幅させていたのである。加えて、BEPSの実行段階において、国内法制の整備に際してBEPS合意の枠を超えた一国限りの立法も急に目立ち始めた。

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これから国際税務

【第10回】

「ポストBEPSにおける『税の安定性プロジェクト』の進捗」

 

早稲田大學大学院会計研究科 教授
青山 慶二

 

1 増幅が懸念される「税の不安定性」リスクへの対応

BEPSプロジェクトの成果物は、国際課税ルールの間隙をついて二重非課税の便益を不当に得ている多国籍企業をターゲットにした各種処方箋であり、BEPS防止措置実施条約の締結や移転価格税制の改正などがその具体例である。

しかし、近年はBEPSプロジェクト以前から、二重課税事案の解決のための相互協議が増加しその解決が遅延していることが問題視されていたことから、新規の処方箋については、その解釈・適用の如何によっては新たな二重課税リスクを追加し、納税者・当局の双方にとって予測可能性をさらに弱めることが懸念されていた。条約における主要目的テスト(PPT)や評価困難な無形資産への移転価格税制の適用など、BEPSが新規導入した課税メカニズムの中には、各国での経験が豊かとはいえないものも含まれていることも、その懸念を増幅させていたのである。加えて、BEPSの実行段階において、国内法制の整備に際してBEPS合意の枠を超えた一国限りの立法も急に目立ち始めた。

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連載目次

これからの国際税務

筆者紹介

青山 慶二

(あおやま・けいじ)

現 職:千葉商科大学大学院 客員教授
    21世紀政策研究所 国際租税研究主幹
専 門:国際租税

【略歴】
1971年 東京大学法学部卒業
1973年 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士)、国税庁入庁
1998年 国税庁国際業務課長
2003年 ニューヨーク大学ロースクール客員研究員
2004年 国税庁審議官(国際担当)
2006年 国税庁退職、筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授
2012年 早稲田大学大学院会計研究科教授(2019年3月定年退職)
2020年 千葉商科大学大学院客員教授

【主な審議会等委員】
OECD租税委員会(1998年~2000年、2004年~2006年)
経済産業省国際課税小委員会座長(2008年~2014年)
国連経済社会理事会・税に関する専門家委員会 委員(2009年~2014年)
国際租税協会(IFA)常設研究企画委員会 委員(2010年~2018年)
政府税制調査会専門家委員会 特別委員(2010年~2011年)

【近年の著書】
『米国内国歳入法第482条(移転価格)に関する財務省規則』社団法人日本租税研究協会(1995年)
『国際課税の理論と実務』(共著)有斐閣(1997年)
『改訂版国際課税の理論と課題』(共著)税務経理協会(1999年)
『租税条約の理論と実務』(共著)清文社(2008年)
『日本の税をどう見直すか』(共著)日本経済新聞出版社(2010年)
『国際課税の理論と実務73の重要課題』(共著)大蔵財務協会(2011年)
『現代税制の現状と課題(国際課税編)』(単著)新日本法規出版(2017年)

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