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【STEP2】資産計上又は費用計上の項目別判定
(1) ソフトウェア本体の購入又は作成費用
ソフトウェア本体を購入した場合、その購入費用は、ソフトウェアの取得価額に含める。また、ソフトウェアを作成した場合は、ソフトウェア作成にかかった費用(人件費、外注費、その他経費)を集計し、その金額を資産計上する。
(2) 購入ソフトウェアの設定等に係る費用
外部から購入したソフトウェアについて、そのソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用は、購入ソフトウェアを取得費用として当該ソフトウェアの取得価額に含める。 ただし、これらの費用について重要性が乏しい場合には、費用処理することができる(指針14)。
(3) ソフトウェアを大幅に変更して自社仕様にするための費用
自社で過去に制作したソフトウェア又は市場で販売されているパッケージソフトウェアの仕様を大幅に変更して、自社のニーズに合わせた新しいソフトウェアを制作するための費用は、それによる将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合を除き、研究開発目的のための費用と考えられるため、購入ソフトウェアの価額も含めて費用処理する。
将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、購入ソフトウェアの価額を含めて当該費用を無形固定資産として計上する(指針15)。
(4) その他の導入費用
ソフトウェアを利用するための環境を整備し有効利用を図るための費用は、原則としてソフトウェアそのものの価値を高める性格の費用ではない。したがって、その費用は原則として発生時の費用として会計処理する(指針40)。
例えば、以下のような費用は、発生した事業年度の費用として会計処理する(指針16)。
① データをコンバートするための費用
新しいシステムでデータを利用するために旧システムのデータをコンバートするための費用については、発生した事業年度の費用とする。
② トレーニングのための費用
ソフトウェアの操作をトレーニングするための費用は、発生した事業年度の費用とする。
なお、ソフトウェアを購入する際に、上記のような導入費用も含めた価額で契約等が締結されている場合には、導入費用は合理的な見積りによって購入の対価とそれ以外の費用とに区分して会計処理を行う(指針40)。
【補足POINT①-資産計上の開始・終了時点-】
➤自社利用のソフトウェアに係る資産計上の「開始」時点とは、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点である。自社でソフトウェアを作成する場合、例えば、要件定義が確定した時点から発生する費用を資産計上の開始時点とすることが考えられる。
これを立証できる証憑としては、例えば、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書、ソフトウェアの制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等がある。
➤一方、自社利用のソフトウェアに係る資産計上の「終了」時点とは、実質的にソフトウェアの制作作業が完了したと認められる状況になった時点である。
これを立証できる証憑としては、例えば、ソフトウェア作業完了報告書、最終テスト報告書等がある。
【補足POINT②-クラウド・サービスの場合-】
➤最近ではクラウド・サービスを利用する場合も多い。一方、クラウド・サービスを利用する場合の会計処理は、会計基準では明らかになっていない。そのため、現状では各社、サービス利用に応じて発生する各種コストごとに、資産計上するか、費用処理するかを検討していると考えられる。
例えば、初期設定費用及びカスタマイズ費用はソフトウェアや長期前払費用として計上し、毎年発生するランニングコストは発生時に費用処理するといった会計処理が考えられる。
〈まとめ〉
【補足POINT-有機的一体として機能する機器組込みソフトウェア-】
➤有機的一体として機能する機器組込みソフトウェア(機械、器具備品等に組み込まれているソフトウェア)は独立した科目として区分するのではなく、当該機械等の取得原価に算入し、「機械及び装置」等の科目を用いて表示する(指針17)。
➤しかし、ソフトウェアの交換(バージョンアップ)が予定されている場合で、バージョンアップによる機能向上が革新的であるようなときは、機器とは別個にソフトウェアとして処理することが適切な場合もある(指針41(2))。
➤また、機械等の購入時にソフトウェア交換が、契約により予定され、新・旧ソフトウェアの購入価格が明確な場合には、ソフトウェア部分を区分して処理することもある(指針41(2))。