谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第36回】
「租税法律主義と租税回避との相克と調和」
-不当性要件と経済的合理性基準(2)-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回は、同族会社の行為計算否認規定の不当性要件について、判例・学説における経済的合理性基準の形成・展開の過程を辿ったが、今回からは、経済的合理性基準の意味内容について検討することにする。
今回は、IBM事件・東京高判平成27年3月25日訟月61巻11号1995頁が示した不当性要件の解釈を、前回その展開過程をみた金子宏教授の見解と比較検討しながら、経済的合理性基準の意味内容について検討することにしたい。
IBM事件については、不当性要件に関する要件事実論がおそらく初めて正面から争われたものと思われることから、既に第11回で「租税法律主義と実質主義との相克-税法上の目的論的事実認定の過形成③-」として、要件事実論の観点から、東京高判における不当性要件に係る事実判断の構造を検討したが、今回は、そこでの検討と重複するところもあるものの、その事実判断の構造の基礎にある不当性要件の解釈論それ自体について検討することにする。
なお、以下の検討は、税法の解釈論のレベルでの不当性要件の検討であり、第11回とは議論のレベルを「一応」(第11回の検討が不当性要件の解釈論を前提とするという意味で「一応」)異にするが、それでも、両方のレベルを通じて筆者の基本的な考え方は同じであり、その意味では、以下の検討も、拙稿「租税回避否認規定に係る要件事実論」伊藤滋夫=岩﨑政明編『租税訴訟における要件事実論の展開』(青林書院・2016年)276頁、287頁以下をベースにしたものである。
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