谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第37回】
「租税法律主義と租税回避との相克と調和」
-不当性要件と経済的合理性基準(3)-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回は、IBM事件・東京高判平成27年3月25日訟月61巻11号1995頁を取り上げて、経済的合理性基準の意味内容について検討したが、今回からは、「極めて画期的な内容の判決」(太田洋「ユニバーサル・ミュージック事件東京地裁判決の分析と射程」租税研究844号(2020年)50頁、51頁)として最近注目を集めているユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本判決」という)を取り上げて、経済的合理性基準の意味内容について検討することにする。今回は、まず、不当性要件に関する本判決の判断枠組みについて紹介しつつ若干の検討を行い、次回以降の検討課題を明らかにしておくことにしよう。
本件は、「ヴィヴェンディ・グループ」という多国籍企業グループ内における極めて複雑な組織再編成等スキームに関する事案であるが、その骨子のみを述べておくと、グループ内の日本法人(原告)が、グループ内金融会社(同族会社)である外国法人から、「企業グループにおいて借入金の返済に係る経済的負担を資本関係の下流にある子会社に負担させる」(本判決第3(当裁判所の判断)3(2)イ(イ))いわゆるデット・プッシュ・ダウン(debt push down)方式により借入れ(本件借入れ)を受け、これに係る支払利息を損金の額に算入して確定申告を行ったところ、所轄税務署長が法人税法132条1項の適用により当該支払利息の損金算入を否認した事案である。
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