谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第40回】
「租税法律主義と租税回避との相克と調和」
-不当性要件と経済的合理性基準(6)-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
第37回以来、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)における不当性要件に関する同判決の判断枠組みを検討してきた。なお、そうこうしているうちに本年6月24日に控訴審判決が東京高裁で示されたが(T&Amaster841号(2020年7月6日)4頁参照)、この判決については次回検討することにする。
第37回には、不当性要件の趣旨解釈によって導き出した経済的合理性基準について、会社法における経営判断原則の「応用」により、相応性基準ともいうべき、会社による行為計算の選択に関する広範な裁量を尊重する判断基準(裁量尊重基準)を判示した旨の理解を示した上で、第38回には、会社法における経営判断原則の検討を通じてその意義及び実質的根拠、さらには同原則に基づく司法審査の「姿勢」を明らかにし、第39回には、相応性基準による裁量審査(相応性審査)に関連して行政法における比例原則の検討を通じて、相応性審査と比例原則による裁量審査との異同に留意しつつ、目的・手段の合理的関連性基準を明らかにした。
今回は、第38回Ⅳで予告しておいたところに従い、以上の検討を踏まえた上で、本件東京地判における経営判断原則の「応用」について、同判決の実体的判断内容ではなく判断過程に着目して、検討することにしたい。
Ⅱ 二段階審査(1)-経営判断を基礎付ける客観的事情の存否-
本件東京地判は、まず冒頭で、結論を次のように判示した(下線筆者)上で、その理由について、以下で述べるとおり、経済的合理性基準に係る判断を二段階に分けて判示していると解される。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。