谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第41回】
「租税法律主義と租税回避との相克と調和」
-不当性要件と経済的合理性基準(7)-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
第37回から前回まで4回にわたって、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)が示した不当性要件の判断枠組み及びそこでの経済的合理性基準に係る判断を検討してきた。この判決は「極めて画期的な内容の判決」(太田洋「ユニバーサル・ミュージック事件東京地裁判決の分析と射程」租税研究844号(2020年)50頁、51頁)として注目を集めたが、本年6月24日に、結論は同じでも、一見すると「地裁が示した不当性要件の判断枠組みは否定した」(T&Amaster841号(2020年7月6日)4頁)ようにも思われる控訴審判決が、東京高裁で示された(未公刊。以下「本件東京高判」という)。
今回は、本件東京高判の判断枠組みについて、本件東京地判やヤフー事件・最判平成28年2月29日民集70巻2号242頁(以下「ヤフー事件最判」という)のそれと比較検討することによって、その意味内容を明らかにすることにしたい。
Ⅱ 不当性要件の判断枠組み
1 法人税法132条1項の趣旨及び目的と経済的合理性基準
本件東京高判は、基本的には従来の裁判例と同じく、不当性要件の判断枠組みの出発点において、次のとおり、法人税法132条1項の趣旨及び目的から経済的合理性基準を導き出している。
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