谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第46回】
「租税法律主義の基礎理論」
-遡及立法禁止の原則-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回から租税法律主義の内容を検討しているが、今回は、遡及立法禁止の原則を取り上げ検討する。
遡及立法の禁止は、税法の効力(適用範囲)に関して「時間的限界」の角度から論じられることもあり(金子宏『租税法〔第23版〕』(弘文堂・2019年)119-122頁参照)、また、「国会の権限の時間的範囲(時間的な立法管轄権)の問題として理解されるべきである」(渕圭吾「租税法律主義と『遡及立法』」フィナンシャル・レビュー129号(2017年)93頁)と説かれることもあるが、以下では、まずは、租税法律主義の予測可能性・法的安定性保障機能の観点から、遡及立法禁止の原則を検討することにする。
なお、第43回以来、公益財団法人日本税務研究センターの「憲法と租税法」共同研究会で分担した研究の成果をベースにして「租税法律主義の基礎理論」を検討してきたが、その成果である拙稿「租税法律主義(憲法84条)」を収録した日税研論集77号(拙稿は243頁以下)が今月初旬に刊行されたので、今回は同号280頁以下の叙述をベースにして遡及立法禁止の原則について検討することにする。
Ⅱ 租税法律主義の予測可能性・法的安定性保障機能
遡及立法禁止の原則は、税法の分野では、租税法律不遡及の原則と呼ばれることがあるが(清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)31頁、拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)【35】参照)、主として、租税法律主義の予測可能性・法的安定性保障機能の観点から、租税法律主義の趣旨に遡及課税の禁止を加えるものとして論じられてきた。
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