谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第49回】
「租税法律主義の基礎理論」
-納税者の権利保護の要請-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
今回は、租税法律主義の内容のうち納税者の権利保護の要請を取り上げて検討する。この要請は、金子宏教授が夙に租税法律主義の内容として説いてこられたものであることから、まず、金子教授の見解からみておくことにしよう。
金子教授は納税者の権利保護の要請について次のとおり説いてこられた(同『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年)63頁[初出・1974年]。同『租税法〔第23版〕』(弘文堂・2019年)1069頁も同旨)。
租税法律主義は、租税の賦課・徴収が法律の根拠に基づき法律に従って行われることを要求するが、事実の認定を誤るとか、法律の解釈を誤るなど、違法な租税の賦課・徴収がなされることは、決して少なくない。たとえ、建前として、租税の賦課・徴収が法律の根拠に基づき法律に従って行われなければならないことになっていても、違法な租税の賦課・徴収が行われた場合に、納税者がそれを争い、自己の権利を守る手段が認められていなくては、租税法律主義は、実際には「画にかいたモチ」にすぎなくなってしまう。したがって、違法な租税の賦課・徴収に対して、納税者が争訟を提起し、自己の権利の保護を求めうることも、租税法律主義の一要素と考えるべきである。いうまでもなく、憲法32条の裁判を受ける権利の保障は、違法な租税の賦課・徴収によって権利を侵害された者が裁判所による権利の保護を求めうることを保障する趣旨を含んでいる。
Ⅱ 司法的救済の保障の原理に対する争訟制度上の制約
金子教授は、納税者の権利保護の要請について、さらに、法の支配の見地から、「租税法におけるルール・オブ・ローの実現のためには、納税者の権利保護の制度の確立と、それが効率的に機能することが不可欠である。」と述べ、憲法76条1項及び裁判所法3条1項の規定から「司法的救済の保障の原理」を導き出しておられるが(同・前掲『租税法理論の形成と解明 上巻』124頁[初出・2008年]。太字筆者。なお、法の支配については特に第44回Ⅲ参照)、その原理の意義について不服申立制度との関係で次のとおり述べておられる(同125-126頁[初出・2008年]。同・前掲『租税法』1072頁も同旨)。
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