公開日: 2017/06/29 (掲載号:No.224)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」

筆者: 西田 友洋

【STEP2】法定実効税率の算定

繰延税金資産及び繰延税金負債は一時差異等に法定実効税率を乗じて算定する。
【STEP2】では、この法定実効税率を算定する。

(1) 法定実効税率とは

(2) 法定実効税率の算定

(1) 法定実効税率とは

法定実効税率とは、法律で定められている税率により計算された税額の課税標準(課税所得)に対する割合(負担率)のことである。

税金には、いろいろあるが、税効果会計の対象となるのは、利益(課税所得)に対する税金である(実務指針36)。そのため、法定実効税率の算定に使用する税率は利益(課税所得)に係る税金の税率である。具体的には、以下の表の「税効果会計の対象」欄に「」を付した税金を法定実効税率の算定に使用する。

税 金 P/L計上箇所 税効果会計の対象 法人税 法人税・住民税及び事業税 ○ 住民税 法人税割 法人税・住民税及び事業税 ○ 均等割 法人税・住民税及び事業税 × 事業税 所得割 法人税・住民税及び事業税 ○ 付加価値割 販売費及び一般管理費 × 資本割 販売費及び一般管理費 × 地方法人特別税 法人税・住民税及び事業税 ○ 消費税(控除対象外消費税額等) 販売費及び一般管理費 × 償却資産税 販売費及び一般管理費 × 固定資産税 販売費及び一般管理費 × 事業所税 販売費及び一般管理費 × 法人税等の過少申告加算税、延滞税 原則、法人税・住民税及び事業税の次に適当な名称を付して記載 × 留保金課税 法人税・住民税及び事業税 ×

 

(2) 法定実効税率の算定

具体的には、法定実効税率は以下のように算定する(企業会計基準適用指針第27号「税効果会計に適用する税率に関する適用指針(以下、「税率指針」という)」3(4))。

◆法人事業税(及び法人住民税)について超過税率適用の場合は、以下のように計算する。

◆法人事業税(及び法人住民税)について標準税率適用の場合は、以下のように計算する

そして、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、以下のとおりである。

① 法人税、地方法人税及び地方法人特別税の場合

決算日において国会で成立している税法(法人税、地方法人税及び地方法人特別税の税率が規定されているもの(以下「法人税法等」という))に規定されている税率による(税率指針5)。

② 住民税(法人税割)及び事業税(所得割)(以下、「住民税等」という)の場合

繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日において国会で成立している税法(住民税等の税率が規定されているもの(以下「地方税法等」という))に基づく税率による(税率指針6)。

具体的には、以下のとおりである(税率指針7、8)。

(ⅰ) 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立していない場合(地方税法等を改正するための法案が国会に提出されていない場合を含む)

▷決算日において国会で成立している地方税法等を受けた条例に規定されている税率(標準税率又は超過課税による税率(以下、「超過税率」という))

(ⅱ) 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立している場合

(ア) 改正地方税法等を受けて改正された条例(以下「改正条例」という)が決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立している場合

▷決算日において成立している条例に規定されている税率(標準税率又は超過税率)

(イ) 改正地方税法等を受けた改正条例が決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立していない場合(標準税率の場合は(A)、超過税率の場合は(B))

〈(A)決算日において成立している条例に標準税率で課税することが規定されているとき〉

▷改正地方税法等に規定されている標準税率

〈(B)決算日において成立している条例に超過税率で課税することが規定されているとき〉

▷改正地方税法等に規定されている標準税率に、決算日において成立している条例に規定されている超過税率が改正直前の地方税法等の標準税率を超える差分を考慮する税率

 この場合、原則として、次のいずれかの方法により算定する。

・改正地方税法等に規定されている標準税率に、決算日において成立している条例に規定されている超過税率が改正直前の地方税法等の標準税率を超える数値を加えて算定する。算定した税率が、改正地方税法等に規定されている制限税率を超える場合は、当該制限税率とする(以下、「数値加算法」という)。

・改正地方税法等に規定されている標準税率に、決算日において成立している条例に規定されている超過税率における改正直前の地方税法等の標準税率に対する割合を乗じて算定する。算定した税率が、改正地方税法等に規定されている制限税率を超える場合は、当該制限税率とする(以下、「割合法」という)。

⇒数値加算法、割合法のいずれかの採用については、連結グループで統一することが考えられるが、統一しないことによる繰延税金資産及び繰延税金負債への影響に重要性が乏しい場合、統一しないことも認められると考えられる

《設例①》

東京都で外形標準課税「適用」法人の場合、法定実効税率は以下のとおりとなる。

東京都で外形標準課税「非適用」人の場合、法定実効税率は以下のとおりとなる。

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第35回】

「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

平成27年12月28日に企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(以下、「回収指針」という)」が公表されている(なお、回収指針は、平成28年3月28日に改正が行われている)。

そこで、今回は回収指針に基づいて、個別財務諸表における税効果会計を解説する。今回の解説は、本連載【第4回】「個別財務諸表における税効果会計」の改訂版である。なお、本解説では3月末決算の会社を前提に解説している。

「税効果会計」とは、将来の税金を減少させる効果を繰延税金資産として計上し、将来の税金を増加させる効果を繰延税金負債として計上する会計処理である。

例えば、会計上は当期に費用計上するが、税務上は翌期以降に損金算入する場合、将来に損金算入されることにより将来の課税所得が減少し、将来の税金が減少する。この減少の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金資産(回収可能性ありの場合、詳細は【STEP4】参照)として計上する。
反対に、税務上は当期に損金算入するが、会計上は翌期以降に費用計上する場合、将来の当該費用計上額は税務上加算され、将来の課税所得は増加し、将来の税金が増加する。この増加の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金負債として計上する。

また、税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。今回は「個別財務諸表における税効果会計」について解説する。

個別財務諸表における税効果会計は、以下の5つのステップに分けることができる。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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