公開日: 2017/06/29 (掲載号:No.224)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」

筆者: 西田 友洋

【STEP5】会計処理

【STEP5】では、税効果会計の会計処理について検討する。

(1) 繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係る税効果を除く)の計上

繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金等に係るものを除く)の増減額を「法人税等調整額」を相手勘定科目として計上する(実務指針2)。
繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金等に係るものを除く)の会計処理の例は以下のとおりである。

(※1) 当期末の繰延税金資産-前期末の繰延税金資産

(※2) 当期末の繰延税金負債-前期末の繰延税金負債

 

(2) 直接純資産の部に計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果- その他有価証券評価差額金の場合

その他有価証券評価差額に係る税効果会計の会計処理(時価>取得価額の場合)は以下のとおりである。

(※) (時価-取得価額)× 法定実効税率

 

(3) 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺

流動資産の繰延税金資産と流動負債の繰延税金負債は相殺して表示する。また、投資その他の資産の繰延税金資産と固定負債の繰延税金負債も相殺して表示する(実務指針30)。

また、税効果会計においては、以下の注記が必要である(基準第四、財務諸表等規則8の12)。

① 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳(評価性引当額を含む)

② 税引前当期純利益に対する法人税等及び法人税等調整額の合計額の比率(税効果会計適用後の法人税等の負担率)と法定実効税率との間に重要な差異があるときは、その差異の原因となった主要な項目別の内訳

(※) 法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との間の差異が法定実効税率の100分の5以下の場合は不要。

③ 税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨及び修正額

④ 決算日後に税率の変更があった場合には、その内容及びその影響

なお、計算書類では、「繰延税金資産及び繰延税金負債(重要でないものを除く)の発生の主な原因」の注記をすれば足り(会社計算規則107)、上記のような注記は必ずしも求められていない。

*  *  *

以上、5つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。
※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。

【参考】

(了)

「フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 」は、毎月最終週に掲載されます。

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第35回】

「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

平成27年12月28日に企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(以下、「回収指針」という)」が公表されている(なお、回収指針は、平成28年3月28日に改正が行われている)。

そこで、今回は回収指針に基づいて、個別財務諸表における税効果会計を解説する。今回の解説は、本連載【第4回】「個別財務諸表における税効果会計」の改訂版である。なお、本解説では3月末決算の会社を前提に解説している。

「税効果会計」とは、将来の税金を減少させる効果を繰延税金資産として計上し、将来の税金を増加させる効果を繰延税金負債として計上する会計処理である。

例えば、会計上は当期に費用計上するが、税務上は翌期以降に損金算入する場合、将来に損金算入されることにより将来の課税所得が減少し、将来の税金が減少する。この減少の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金資産(回収可能性ありの場合、詳細は【STEP4】参照)として計上する。
反対に、税務上は当期に損金算入するが、会計上は翌期以降に費用計上する場合、将来の当該費用計上額は税務上加算され、将来の課税所得は増加し、将来の税金が増加する。この増加の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金負債として計上する。

また、税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。今回は「個別財務諸表における税効果会計」について解説する。

個別財務諸表における税効果会計は、以下の5つのステップに分けることができる。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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