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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第54回】株式会社デジタルデザイン「第三者委員会調査報告書(平成28年8月31日付)」

筆者:米澤 勝

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第54回】

株式会社デジタルデザイン

「第三者委員会調査報告書(平成28年8月31日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【第三者委員会の概要】

〔適時開示〕

〔第三者委員会〕

【委員長】

弁護士 六川 浩明

【委 員】

公認会計士・税理士 北村 恵美

〔調査期間〕

2016(平成28)年8月9日から8月31日まで

〔調査の目的〕

当社代表取締役社長が、自ら立て替え、使用した会社経費「立替精算書」の精算処理手続きにおいて、精算内容の確認作業が内部統制ルール上適切に行われておらず、領収書等の必要な証拠書類の不備や資金使途が不明確なものが確認されたことから、当該不適切な経費処理について、事実関係の調査を行い、それに至った原因を究明し、再発防止策の検討・提言を行うことを目的として、第三者委員会を設置した。

〔適時開示(調査結果)〕

 

【株式会社デジタルデザインの概要】

株式会社デジタルデザイン(以下「デジタルデザイン」と略称する)は、1996(平成8)年設立の情報サービス事業会社。資本金約9億8,000万円。連結売上高155百万円、連結経常利益5,706千円。従業員数13名(数字はいずれも平成28年1月期)。本店所在地は大阪市北区。東京証券取引所JASDAQ上場。

 

【調査委員会報告書の概要】

1  発覚の経緯

当初、デジタルデザインの公表した不適切な経費利用が発覚した経緯は、以下のようなものであった(太字、下線は、10月14日付けリリースによる)。

平成29年1月期第1四半期の決算処理過程の中で監査法人からの指摘があり、平成29年1月期第1四半期の期間中、当社代表取締役社長が、毎月自ら立て替え使用した会社経費(総額672,388円)の「立替精算書」の精算処理手続きにおいて、精算内容の確認作業が内部統制ルール上適切に行われておらず、領収書等の必要な証拠書類の不備や資金使途が不明確なものが確認されました。

ところが、この文章の冒頭部分は、調査報告書公表後の10月14日になって、次のように訂正される。

当初、大阪で実施していた役職員の経費精算業務が東京へ移管する際に、代表取締役社長の経費利用に関する不適切と思われる処理を把握し、監査法人へ相談した結果、平成29年1月期第1四半期の期間中、当社代表取締役社長が、毎月自ら立て替え使用した会社経費(総額672,388円)の「立替精算書」の精算処理手続きにおいて、精算内容の確認作業が内部統制ルール上適切に行われておらず、領収書等の必要な証拠書類の不備や資金使途が不明確なものが確認されました。

デジタルデザインの会計監査人であるひびき監査法人が指摘したとの説明から、デジタルデザインの管理部門が不審に思い、ひびき監査法人に相談した結果、当時の代表取締役社長であり、44%以上の株を所有する寺井和彦氏(以下「寺井元社長」と略称する)の経費利用に不適切な処理があったというように訂正されたものだが、なぜ、こうした訂正がなされるに至ったかについては、リリースでは、「一部事実と異なり、より具体的な説明が必要であるとの判断」に基づいて訂正したと説明するのみであり、詳細は開示されていない。

 

2 調査結果の概要

(1) 第三者委員会による区分

第三者委員会は、寺井元社長の立替経費の精算について、経費処理の判断基準を、勘定科目ごとに定める申請要件を満たすもの又は申請要件を形式的には充足していないものであっても客観的かつ明白に申請要件を充足するものについては「適正」とし、それ以外のものについては、内容を確認したうえで、申請要件を満たしていないものを「不備」、申請内容に不合理性や虚偽性が疑われるものを「不当」とする判断を行った。

(2) 調査結果の概要

第三者委員会の設置に先だって社内調査では、平成26年1月期から、平成29年1月第1四半期までの期間について行われているが、第三者委員会による調査報告書では、このうち、平成28年1月期までの3年間について、修正すべき件数と金額を公表している。

【図表】 第三者委員会により「不備・不当」と判断された件数と金額

(3) 「不備」と「不当」

第三者委員会は、3年間における寺井元社長による立替経費の申請は、1,458件約920万円であり、そのうち、1,092件約440万円が「不備」、42件約27万円が「不当」と判断した。

このうち、「不当」とは、「申請内容に不合理性や虚偽性が疑われるもの」というのがその定義であるから、この42件27万円の経費精算については、寺井元社長が、本来会社に請求すべきでない経費を請求し、いわば私的に費消したということで、寺井元社長の責任が問われることは言うまでもない。

一方、「不備」とされた精算にそこまで責任を問えるのかどうか。第三者委員会は、「不備」とは、「申請要件を満たしていないもの」と定義しているので、以下、個別に申請要件を確認してみたい。「不備」と認定された件数、金額ともに最も多い「会議費」の申請要件については、以下のように記述されている(報告書p.3以下)。

会議費

  • 当社の勘定科目細則によると「会議費」は「会議のために要した費用をいい、通常の昼食程度の飲食費用を含む」と定められている。
  • 上記の定めに従い、会議費の申請の際、目的、人数(会社名、氏名)、金額(1人当たり5,000円以内。なお、5,000円という額が社内規程に明記されているわけではないが当社の慣行として取り扱われてきた。)を「立替経費精算書」の備考欄に記載することが必要である。

ここから読みとれる「不備」の理由としては、以下の3点が考えられよう。

 領収書等が貼付されていない。

 1人当たり5,000円を超える会議費が支出されている。

 備考欄の記載事項が不足している。

いずれも、経費精算においては、よく見られる事象であり、本来であれば。経費精算担当者が不備を指摘したうえで、是正を求めていれば、問題になることはなかったのではないかと思われる。

(4) 会計処理の修正

第三者委員会は、こうした「不備」及び「不当」については、過大に計上された「販管費」であり、これらはすべて、寺井元社長に対する「短期貸付金」として会計処理されるべきであるとして、有価証券報告書及び決算短信等の訂正を進言している。

これは、法人税における考え方からも妥当な修正であるものと思料する。

 

3 発生原因と看過原因(報告書p.3以下)

発生原因について、第三者委員会は、寺井元社長自らが、「立替経費精算書」に明細を記入し、同氏のみが捺印し、経理部に提出することにより、経費精算手続きがされていた事実を挙げる。同時に、デジタルデザインには、「社長活動費用」という予算項目が存在、毎月20万円強が計上されていることから、寺井元社長は、その20万円強を真実は経費ではない場合であっても経費申請をしていたことが認められたと断定している。

また、デジタルデザインにおいては、寺井元社長以外の役員及び従業員は、経費精算ルールを遵守していたにもかかわらず、寺井元社長のみが、経費精算規定に定める承認手続きを無視していたとして、寺井元社長による不適切な処理が看過された理由を、同氏によるルールの無視にあるとしている。

寺井元社長がルールを無視できた背景については、寺井元社長は、「当社の創立者であり大株主(44%)であることから、事実上のオーナーであり、経理部による実質的チェック機能が働いていなかった」と断定している(報告書p.12)。

 

4 今後の措置と対応(報告書p.12以下)

第三者委員会による今後の措置と対応は、以下の2項目である。ただし、これらの措置については、すべてすでに実行されており、結果的に、第三者委員会はデジタルデザインが行った再発防止策を追認した格好になっている。

(1) 「社長活動費」の廃止

(2) 社長の経費精算プロセスの見直し

第三者委員会は、社長活動費について、寺井元社長が恣意的判断に基づき、経費申請を行っていたと認定して廃止を提言しているが、実際には、平成28年6月から予算項目としては廃止されている。

また、社長による経費精算プロセスも、同時期に、以下のように変更されて運用されている。

① 社長自身が、立替経費精算書を作成する。

② 社長以外の者が、立替経費精算書を承認する。具体的には、管理部上長→事業部上長→社長以外の代表取締役又は取締役が、承認する。

③ 立替経費を精算する会計上の処理が、大阪オフィスで行われる。

④ 立替経費額が、社長の役員報酬振込口座に、月額報酬と併せて振り込まれる。

 

【調査報告書の特徴】

全文13ページで、そのうち8ページを調査結果の申請件数と金額の数字だけを列挙した内容が占める調査報告書を一読したとき、筆者は、「創業者であり、大株主でもある寺井元社長と他の取締役との間における経営権を巡る争い」に、第三者委員会がお墨付きを与える形で関わることになったのではないかと考え、本事例をこの連載で検証するべきものであるとまでは認識していなかった。

ところが、後述するとおり、第三委員会による調査報告書公表後、現経営陣と寺井元社長との間で争いが生じていることが次々と表面化したため、あらためて、報告書の内容とその後の展開を検討することとした次第である。

 

1 第三者委員会による調査の特徴

本事例でも、第三者委員会の設置に先立って、社内調査が実施され、第三者委員会の調査はこの社内調査に依拠しながら進められたことがうかがえる。その一方、当事者である寺井元社長に弁明の機会を与えたのかどうかは必ずしも明確ではなく(一切コメントがない)、また、寺井元社長をはじめとする取締役を監視すべき立場にあった監査等委員である社外取締役2名を含む監査等委員会が機能していなかった――寺井元社長によるルールの無視を看過していたことからすれば、機能していなかったという表現は過言ではないものと思料する――理由についても、報告書上に何らコメントがない。

しかも、完全に「不適切な処理」と言えるのは、第三者委員会が「不当」と判断した42件約27万円の経費精算に過ぎない。

こうしたことから、先に述べたように、筆者の中では、本報告書は、現経営陣が、寺井元社長の恣意的で、かつ、社内規定に違反した経費精算を発見したことを奇貨として、創業者であり、大株主でもある寺井元社長を経営から外すために利用したのではないかという憶測につながったわけだが、ともあれ、本報告書の公表を受けて、10月12日、寺井元社長は代表取締役の職を辞任するとともに、4ヶ月間にわたる役員報酬の50%減俸という処分を受け入れたことがリリースされた。

 

2 調査報告書公表後のデジタルデザインのリリース

その後、デジタルデザインと寺井元社長との間では、経営権を巡る争いが次々と生じている。以下、時系列に沿って、まとめておきたい。

なお、本件は現在進行形であり、先行きを予想することは本稿の目的ではないことから、あくまで、デジタルデザインのリリースをもとに事態の推移をまとめたものであることをお断りしておく。

(1) 寺井元社長による取締役辞任届の提出(2016年11月8日)

寺井元社長は、10月27日付の取締役辞任届をデジタルデザインに提出するが、デジタルデザインは、「役員規程」第7条第1項「役員は、辞任しようとするときは、辞任理由のいかんにかかわらず、6か月前までに会社に届け出なければならない」という定めにより、直ちに認められるものではないとして、これを返送した。

同時に、寺井元社長が、同氏の保有するデジタルデザイン株について、停止条件付株式譲渡契約を締結したことが判明したことから、同契約は、取締役会の許可を得ずに締結したものであり、監査等委員によって、大阪地方裁判所に違法行為差止仮処分を申し立てる予定であること、インサイダー取引に該当する懸念があるため、証券取引等監視委員会へ通報したことを公表した。

(2) 寺井元社長による臨時株主総会招集請求(2016年11月14日)

寺井元社長は、上記(1)の取締役辞任届の提出と同時に、デジタルデザインに対し、臨時株主総会の招集請求を行った。請求内容は以下のとおり。

(1) 株主総会の目的たる事項

① 取締役1名解任の件

当社取締役1名(代表取締役 碇利之氏)の解任

② 取締役5名選任の件

候補者5名(藤澤信義氏、塩澤卓也氏、安藤潔氏、糸井琢弥氏、山元秀樹氏)

③ 監査等委員である取締役1名選任の件

候補者1名(山口慶一氏)

(2) 招集の理由(要旨)

① 近年は売上高が低迷しており、今期に入って営業損失を計上している。

② 取締役の刷新について検討を提案したにも関わらず、碇取締役主導の下、有効な議論がされなかった。

③ 役員を一新することが必要であり、一般株主の利益に資する。

これに対し、デジタルデザインは、同月16日、「株主による臨時株主総会招集請求に関する当社の意見」を公表し、「請求理由に困惑」しているとしながらも、平成29年4月開催の定時株主総会における会社提案の取締役選任議案に株主による提案を可及的に含めることとし、臨時株主総会を開催しない姿勢を示した。

ところが、同日のリリースでは、寺井元社長の申立てに基づき、大阪地方裁判所から「株主総会招集許可申立書」の送達を受けたことを公表した。

これを受けて、デジタルデザインは、「臨時株主総会開催に関するお知らせ」を12月6日にリリース、2017年1月31日(その後、2月10日に変更)に、臨時株主総会を開催する旨を公表した。

(3) デジタルデザインによる資本業務提携及び第三者割当(2016年12月21日)

12月21日、デジタルデザインは、「資本業務提携並びに第三者割当により発行される新株式及び新株予約権の募集及び主要株主の異動に関するお知らせ」を公表して、株式会社リゾーム及び株式会社ステラリンクとの資本業務提携を公表し、普通株式67,175株を1株につき950円で発行すること、新株予約権605,475個を1個につき30.02円で発行することをリリースした。

これらの第三者割当により調達する資金は626百万円を超え、新株予約権が行使された場合における寺井元社長の持株比率は44.44%から35.56%まで低下する。

(4) 寺井元社長による新株式の発行差止仮処分の申立てと決定(2016年12月28日)

2017年1月6日を払込期日とする上記(3)の資金調達に関し、寺井元社長は、新株及び新株予約権の発行差止の仮処分を申し立てた。デジタルデザインのリリースによれば、申立てに至った経緯は次のとおりである。

当社が平成28年12月21日付取締役会決議により、新株及び新株予約権を第三者割当の方法により発行し6億円超の資金調達をしようとすることは、現取締役らによる支配権の維持を目的とするものであり、合理的な資金調達を目的としたものではなく、著しく不公正な方法による新株等発行である。

12月27日、大阪地方裁判所は、新株及び新株予約権の発行を仮に差し止める内容の決定を行った。

これに対し、デジタルデザインは、年が明けた2017年1月4日、大阪地方裁判所に対して、保全異議の申立てを行ったが、翌5日の審尋を経た結果、デジタルデザインの主張は認められず、1月6日、大阪地方裁判所は、仮処分決定を認可した。判断理由の概要をデジタルデザインのリリースから引用する。

 

  • 株主構成の変更自体を主要な目的とする不公正発行に該当すると認める。
  • 債権者が望む株主総会決議の可決の可能性の低下という「不利益を受けるおそれ」が生じたものと認められる。
  • 債権者が回復しがたい損害が生じるおそれがあることから保全の必要性も認められる。

(5) 臨時株主総会の開催日変更(2017年1月6日、10日)

大阪地方裁判所により、新株及び新株予約権の発行差止仮処分の認可を受けたデジタルデザインは、同日、寺井元社長により招集請求がされ、2017年2月10日に開催予定であった臨時株主総会の期日を2月28日とすることを公表した。

本稿執筆時点において、臨時株主総会における会社提案の内容が明らかになってはいないため、今後の現経営陣と寺井元社長との間の争いの帰趨については判断がつきかねるところであるが、これまでのところ、寺井元社長の方が優勢である感は否めないようである。今後のリリースを注視したい。

(了)

「会計不正調査報告書を読む」は、不定期の掲載となります。

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会計不正調査報告書を読む

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筆者紹介

  • 米澤 勝

    (よねざわ・まさる)

    税理士・公認不正検査士(CFE)

    1997年12月 税理士試験合格
    1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
    1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
    2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
    2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

    【著書】

    ・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

    ・『架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2011)

    ・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

    【寄稿】

    ・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

    ・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

    【セミナー・講演等】

    一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
    「会計不正の早期発見
    ――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

    公益財団法人日本監査役協会主催
    情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

    株式会社プロフェッションネットワーク主催
    「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

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