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〈知識ゼロからでもわかる〉ブロックチェーン技術とその活用事例 【第6回】「契約×ブロックチェーン」

〈知識ゼロからでもわかる〉 ブロックチェーン技術とその活用事例 【第6回】 「契約×ブロックチェーン」   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   第2回で解説したとおり、「スマートコントラクト」を利用できる業務は、ブロックチェーンを有効に活用でき、価値を生み出せる可能性が高いと考えられる。契約条件、履行内容、将来発生するプロセス等をブロックチェーン上に記録し、第三者を介在させずに取引などを実現させることが可能になる。 前回の内容と一部重複する記載もあるが、「契約×ブロックチェーン」という側面から概説を行う。 1 保険契約 保険契約は、保険会社と保険をかける個人や法人との間で締結される契約であるが、契約条件、履行内容、将来発生するプロセスなど、様々なステークホルダーが保険契約に関わることになる。現在において、未だに紙でやりとりされる情報も少なくなく、契約審査、請求、事故調査、及び保険金の支払いなどには多くの手間と時間がかかっている。 このような状況で、情報を電子化しステークホルダーで共有し、保険にまつわるプロセスを効率化する必要がある。保険会社のシステムを通じて情報を共有することも可能であるが、保険において保険金支払いの根拠となる情報が改ざんされるリスクもあることから、一度記録されたデータが限りなく改ざん不可能に近く、権利処理と相性のよいブロックチェーンに注目が集まっている。   2 不動産契約 不動産契約は、スマートコントラクトとブロックチェーンを活用することで、不動産取引を行うための契約、決済、送金等をオンライン上で行うことが可能となり、必要事項を入力し、あとは自動で取引が履行されることになる。また、ブロックチェーンの非改ざん性の高さや過去の全ての取引を閲覧できるといったプロセスの透明性が確保でき、従来の不動産取引の際の信用を弁護士などの第三者機関に依存する必要がなくなることになる。 これにより、従来の契約プロセスと比較して、途中のプロセスを省略することができ、契約を自動的に履行することが可能となるため、素早く低コストで契約できることになる。現行法制度上の対抗要件(不動産取引の場合は登記)との調整が今後の課題として挙げられる。   3 デリバティブ契約 先物取引、スワップ取引、オプション取引などのデリバティブ取引では、様々な条件で資金のやりとりが行われる。それらの条件をスマートコントラクトによって定めておけば、自動的に条件判断と決済処理を行うことが可能になると考えられる。 例えば、先物取引では、顧客は取引金額の一部を契約時に証拠金として金融機関に差し入れることになるが、その後の原資産価格の変動により、追加証拠金の差入れが必要となる場合がある。そこで、スマートコントラクトにあらかじめ追加証拠金の計算方法を設定しておくと、スマートコントラクトが自動的に取引所などから原資産価格のデータを入手して追加証拠金額を計算し、顧客への請求を行う。請求された追加証拠金は、証拠金にあてる現金の所有権を管理するブロックチェーン上で顧客から金融機関に支払われる。 このようにデリバティブ取引の複雑な業務を、スマートコントラクトを用いて自動化することで、金融機関がオペレーションコストを削減できるであろう。   4 遺言・相続財産管理 登記の対象にならない二者間の契約関係についても、ブロックチェーンで共有・追跡可能となり、その結果、契約上の権利についても事実上の対抗力を持たせることが可能となる。将来的な法整備が進んだ場合には、権威や信用力をもつエンティティが存在しなくても、権利証明等が対抗力を持つことになり、行政機関などの役割を代替可能となる可能性がある。 例えば、遺言をあらかじめスマートコントラクトとして定めておくことにより、当人が死亡したことをきっかけとして、遺言が自動的に執行されるようにすることが可能になると考えられる。これにより、第三者による遺言の改ざんを防ぎ、秘匿性のある遺言を残すことができる。また、相続財産の預金や株式など相続財産の目録を電子管理することにより、手続の短縮と業務の効率化につながるであろう。 (了)

#No. 411(掲載号)
#松澤 公貴
2021/03/18

《速報解説》 所有者不明土地問題解決を図る民法・不動産登記法等の改正法案が明らかに~施行日前開始の相続から適用される改正事項も~

《速報解説》 所有者不明土地問題解決を図る民法・不動産登記法等の改正法案が明らかに ~施行日前開始の相続から適用される改正事項も~   Profession Journal編集部   国内で拡大する所有者不明土地問題を解決するため、法務省の法制審議会(民法・不動産登記法部会)が2月にまとめた「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱」に基づき、このほど3月5日付けで既存法の改正及び新法の法律案が今国会に提出され、法務省のホームページでその内容が明らかになった。 今回の法律案の趣旨は冒頭述べた通り、所有者不明土地の発生を未然に防止することとされ、相続登記の義務化(相続財産については原則相続開始から3年以内の所有権移転登記を義務化。違反の場合は10万円以下の過料(改正不動産登記法案第76条の2))や、相続財産の国庫への帰属(相続放棄)が注目されている(法律案では後者の制度が新法で規定されている)。 ここで、これら未然防止策の1つとして、未分割遺産に係る制度見直しなど、相続実務に影響のある民法改正も織り込まれている点に注意したい。具体的には、特別受益(民法903条)や寄与分(民法904条の2)については、相続開始から10年経過後にする遺産分割については、一定の場合の除き、適用を認めないこととされる(改正民法案904条の3(下記参照))。他に、遺産分割の禁止(民法908条)についても相続開始から10年の期限が設けられる。 また、法律の施行時期については2法案共に、原則公布日から2年以内(相続登記義務化は3年以内)とされているが、上記の第904条の3は施行日前に相続が開始した遺産分割についても適用される(改正民法等改正法案附則第3条(下記参照))。経過措置は設けられているが、遺産分割協議が5年以上続いているようなケースでは改正法の影響を受ける可能性もあるため、改正内容だけでなく施行時期についても留意が必要だ。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 410(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/03/11

プロフェッションジャーナル No.410が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年3月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.410を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/03/11

〈判例評釈〉ユニバーサルミュージック高裁判決 【第3回】

〈判例評釈〉 ユニバーサルミュージック高裁判決 【第3回】   公認会計士・税理士 霞 晴久   4 控訴審判決要旨 (1) 行為・計算要件について 国(控訴人)側は、「(本件組織再編に係る)本件一連の行為が一体として税負担減少結果を生じさせたものとして(法人税法132条1項にいう)『その法人の行為又は計算』に当たり(主位的主張)、少なくとも本件一連の行為のうち本件設立を除く各行為が『その法人の行為又は計算』に当たる(予備的主張1)」と主張したのに対し、東京高裁は、「本件各事業年度におけるXの法人税につき、これを容認した場合には法人税の負担を減少させる結果となる『その法人の行為又は計算』は、本件借入れであると認められる」から、「本件借入れを除けば、これを容認したとしても、本件各事業年度における被控訴人の法人税の負担を減少させる結果となるとは認められない」と判示し、「本件借入れ以外の控訴人主張に係る各行為は、本件各更正処分の適法性を検討するに当たり、法人税法132条1項に基づく同族会社等の行為計算の否認の対象となる『その法人の行為又は計算』に当たるとはいえない」として、国側の主張を排斥した。 (2) 不当性要件の判断枠組みについて 法人税法132条1項の不当性要件の判断枠組みについて、東京高裁は、 とし、従来からの通説的見解である経済合理性基準の立場を明確にしている。 その上で、東京高裁は、「経済的合理性を欠く同族会社等の行為又は計算が、同族会社であるためにされた不自然、不合理な租税負担の不当回避行為として、不当性要件に該当することになる」とし、不当性要件の判断枠組みとして、ヤフー/IDCF事件最高裁判決(※9)が採用した考え方を引用している。 (※9) ヤフーについては、最高裁平成28年2月29日第一小法廷判決(平成27年(行ヒ)第75号、TAINSコード:Z266-12813)、IDCFは、最高裁平成28年2月29日第二小法廷判決(平成27年(行ヒ)第177号、TAINSコード:Z266-12814)。 すなわち、 と判示している。 (3) 当てはめ A) 本件8つの目的について 東京高裁は、「本件8つの目的を〈ア〉日本の関連会社の経営の合理化、〈イ〉ユニバーサル・ミュージック部門(UMG部門)のオランダ法人の負債軽減及び〈ウ〉日本の関連会社の財務の合理化という観点から分けて検討してみても、不自然なものではない」とし、「税負担の減少以外にこれを行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するといえ、被控訴人(ひいては、その完全子会社になった後、Xに吸収合併されることになるU社)に税負担の減少以外の経済的利益をもたらすものといえる」と判示した。 B) 本件借入れに関する事情 U社は、Xに吸収合併される前の3事業年度において、営業利益を約74~111億円計上していたことから、東京高裁は、本件借入れにより生ずる支払利息(年約40億円)は、①本件合併によりU社の事業を承継するXがその営業利益によって賄うことができる範囲内のものとされたこと、②20年の返済期間は、被控訴人の平成20年度の税引き後利益の予想に基づく試算に基づいて決定されたこと、③現にXによる本件借入れの利息の支払が困難になったなどの事情はうかがわれないことから、「本件借入れに当たり、元本の返済又は利息の支払が困難になるおそれがあったとは認められず、本件借入れの融資条件は、被控訴人にとって不当に不利益となるものとは認められない」と判示した。 また、XがIF社から本件借入れを行うに当たり、担保を提供していないことについて、東京高裁は、「Xは、その設立後、V社グループのCMSに参加したこと、本件借入れの目的が平成20年8月31日当時において約1,144億円の価値を有していたU社株式を含むV社グループ傘下の各日本法人の株式を取得することとされていたこと、本件借入れの条件が本件合併によりU社を承継したXの営業利益によって返済可能な範囲で定められたことを踏まえたものであり、本件借入れが無担保で行われたことは不自然ではなく、合理的な理由があるということができる」と判示した。 (4) 結論 以上から、東京高裁は、 とした。 (続く)

#No. 410(掲載号)
#霞 晴久
2021/03/11

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第27回】「親族外承継における分割型分割の活用」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第27回】 「親族外承継における分割型分割の活用」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 梶本 岳   相談内容 私は、汎用部品の製造業を営むS社の社長Yです。当社は創業オーナーで会長のM氏が株式の全てを保有しています。M氏には息子がいますが、当社の経営には関与しておらず、M氏も息子に事業を承継する意思がないことから、1年後を目途に非同族の私YがM氏から株式を承継する方向で事業承継計画を検討しています。 M氏は、事業承継にあたってS社株式の売却による多額の収入を得ることは望んでいません。一方で、S社の保有資産のうち、M氏が社宅として使用している土地・建物、社用車、安定収入が見込める賃貸アパートの承継を望んでおり、S社からこれらの資産を分離して、M氏が新たに設立するL社に保有させたいと考えています。 【図1】M氏の希望する会社形態 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 これらの資産をS社から切り離してL社に保有させることで、私YがS社株式を取得する際の資金負担を抑えることができると思いますし、M氏やご家族にとっても、法人で安定収入が見込めるこのような形態が良いのではないかと考えています。 M氏の希望する資産をS社から切り離すにあたっては、私がM氏にS社株式の売買代金を支払い、その売買代金でS社から土地・建物、社用車、賃貸アパートをM氏に取得してもらう方法が良いでしょうか。また、他に税負担を少なくできる方法はないでしょうか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 親族外承継における個人財産の承継 (1) 譲渡による場合 非上場の同族会社が、親族外の役員・従業員の中から後継者を選定して事業承継を行う場合、オーナー経営者の個人財産の処遇が問題になりやすいところです。 S社が保有する個人財産をM氏又はL社に譲渡する場合、不動産を譲渡するS社は含み益が固定資産売却益として実現するため、法人税が課税されることになります。 また、Y氏がS社株式を先に取得する場合には、不動産の時価が株式の評価額にも反映されることになります。したがって、株式を譲渡するM氏には株式の売却益に対する譲渡所得税が余分に課税されることになりますし、S社から不動産(土地を除く)を時価で取得する際には消費税も負担しなければなりません。 (2) 会社分割による場合 【図2】のように、個人財産を分割型分割によりL社に切り離す場合には、会社分割後にS社の株式を譲渡する見込みであっても完全支配関係が継続しているものとして税制適格要件を満たすことが可能です。 【図2】分割型分割実行後の株式譲渡 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 平成29年度の税制改正により、分割法人(S社)の支配株主(M氏)が、分割承継法人(L社)の発行済株式の全部を直接又は間接に継続して保有することが見込まれていれば、分割後にS社の株式を継続保有する必要はなく、S社株式をY氏に譲渡することが見込まれていたとしても完全支配関係が継続しているものとして税制適格要件を満たすことになりました(法令4の3⑥二ハ(1))。 したがって、M氏の希望する資産をL社が承継しても、S社やM氏に課税関係が生じることはなく、M氏は個人財産の承継により価値が減少したS社株式の譲渡による所得税20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)だけで課税関係が終了することになります。   [2] 不動産の移転コスト 会社分割においては、不動産の移転コスト(主に名義変更による登録免許税と不動産取得税)がなるべく生じないように分割承継資産を決定することが一般的です。 分割型分割により個人財産の承継を行う場合には、税制適格要件を満たすためにオーナーが株式を保有し続ける分割承継法人(L社)に個人財産を移転させる必要があります。したがって、不動産の移転コストについても留意が必要です。 ① 登録免許税 分割型分割により不動産を承継する場合、不動産を購入した場合と同様に固定資産税評価額の2%(1,000分の20)の登録免許税が課税されます(登録免許税法第9条、同法別表第一の一(ニ)ハ)。 ② 不動産取得税 不動産を購入した場合には、固定資産税評価額の3%(非住宅の家屋については4%)の不動産取得税が課税されますが、以下の要件を満たす分割型分割については、不動産取得税が非課税となります(地方税法第73条の7第2号、地方税法施行令第37条の14)。 本事例においては、分割事業である不動産賃貸業に係る主要な資産(社宅・賃貸アパート)が分割承継法人L社に移転して引き続き営まれる見込みであること、M氏が分割事業に係る従業者(※)としてL社の業務に従事することが見込まれているため、不動産取得税の非課税要件を満たすことが可能です。 (※) 「従業者」として認められる者とは、役員、使用人その他の者で、分割の直前において分割事業に現に従事していた者のことをいいます。また、M氏1名しか分割事業に従事していない場合、M氏が分割承継法人へ異動しているか、又はS社とL社の取締役を兼務していれば非課税要件が満たされます(出所:東京都主税局「会社分割に係る不動産取得税の非課税措置について」を筆者加工)。   [3] 結論 親族外承継を行うにあたって、オーナーの個人財産を事業会社から移転させる必要があるときは、移転コストを抑えることができる分割型分割が有効な選択肢の1つといえるでしょう。 S社が保有する個人財産を分割型分割でL社に承継すれば、社宅や賃貸アパートに含み益があってもS社やM氏に課税関係が生じることはなく、M氏はS社株式の譲渡所得に対する所得税と登録免許税の負担だけで、L社への個人財産の承継という希望を叶えることが可能です。 ただし、分割承継法人(L社)に承継させたい個人財産に金融機関の担保設定がなされていたり、個人財産の分離により分割法人(S社)の債務の履行に支障を及ぼす可能性がある場合など、金融機関をはじめとする債権者の理解を得ることが難しい場合には再考が必要でしょう。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 410(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2021/03/11

金融・投資商品の税務Q&A 【Q61】「源泉徴収選択口座内に上場株式等に係る譲渡損失と配当がある場合の確定申告」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q61】 「源泉徴収選択口座内に上場株式等に係る譲渡損失と配当がある場合の確定申告」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 源泉徴収選択口座における所得計算 (1) 確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得 特定口座のうち、源泉徴収選択口座を開設して、上場株式等を保有する場合、その源泉徴収選択口座内でその年中に譲渡した上場株式等に係る譲渡所得等の金額(特定口座内保管上場株式等の譲渡による事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額)は、確定申告にあたって所得金額から除外して税額計算することができます。 また、譲渡について損失が生じた場合も同様に、確定申告における所得金額の計算から除外することが認められています。 (2) 源泉徴収選択口座における配当等の取扱い 源泉徴収選択口座内で発生する上場株式等の配当等(源泉徴収選択口座内配当等)については、当該源泉徴収選択口座内配当等以外の配当等に係る配当所得の金額とは区分して、所得計算することとされています。そして、当該源泉徴収選択口座に係る上場株式等の譲渡について損失が生じた場合には、源泉徴収選択口座内配当等の額の総額から、譲渡損失の金額を控除した残額に対して、源泉徴収税額を計算することとされています。 したがって、上場株式等に係る譲渡損失は、源泉徴収選択口座内で、その年中の配当等の金額と損益通算されることになりますので、上記 (1) に記載したとおり、確定申告を要しない、ということになるわけです。 また、源泉徴収選択口座内配当等は、上場株式等の配当などに対する申告不要制度を適用することができます。この申告不要制度の適用の選択は、その年中に交付を受けた源泉徴収選択口座内配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額の合計額ごとに行うこととされています。つまり、一回に支払いを受ける配当等の額ごとではなく、口座単位で選択することとされています。 (3) (1)の申告不要を選択しないで確定申告する場合の取扱い 源泉徴収選択口座内で保有している上場株式等の運用結果によっては、当該源泉徴収選択口座内で配当等と損益通算したとしても、なお控除しきれない損失が残ることがあります。その損失を、一般口座で保有する上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額と通算しようとする場合には、上記 (1) の申告不要を選択しないで、源泉徴収選択口座内で生じた上場株式等の譲渡に係る譲渡損失を確定申告の対象とする必要があります。 確定申告をして、源泉徴収選択口座で生じた譲渡損失を一般口座で保有する上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額と通算する場合には、上記 (2) に記載した口座単位での少額配当等の申告不要制度の選択適用は認められず、源泉徴収選択口座内で生じた配当等についても確定申告の対象とすることになりますので注意が必要です。これは、確定申告の対象としないと、当該配当等が源泉徴収選択口座内で源泉徴収をされないまま残ることになるためと考えられます。   2 本件へのあてはめ 源泉徴収選択口座内で生じた上場株式等の譲渡に係る譲渡損失(70万円)を、一般口座で保有する上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額(100万円)と通算するためには、源泉徴収選択口座内で生じた譲渡損失を確定申告する必要があります。そして、確定申告に際しては、譲渡損失だけではなく、配当もその対象とすることになり、下記の所得計算となります。   (了)

#No. 410(掲載号)
#西川 真由美
2021/03/11

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第20回】「家屋の所有者が居住用財産の譲渡損失以外の特例を受ける場合」-居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第20回】 「家屋の所有者が居住用財産の譲渡損失以外の特例を受ける場合」 -居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合-   税理士 大久保 昭佳   Q X(夫)とY(妻)は、共に12年程前から住んでいたX所有の家屋とY所有の土地を、本年3月に売却しました。 買換資産については、XとYがそれぞれ住宅ローンを組んで、同年5月に購入し、居住の用に供しています。 その他の適用要件が具備されている場合で、土地の売却については譲渡損失が発生したことから、Yに「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を適用して申告し、家屋については利益が発生したことから、Xについては「居住用財産の3,000万円特別控除(措法35②)」を適用して申告しようと考えています。 Xの申告は認められるでしょうか。 A Xは、「居住用財産の3,000万円特別控除」の特例を受けることができません。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る譲渡家屋の所有者以外の者が、その譲渡家屋の敷地の用に供されている土地等で、その譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えているものの全部又は一部を所有している場合において、租税特別措置法通達41の5-11(居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合の取扱い)に掲げる要件の全てを満たすときは、これらの者がともに同特例を受ける旨の申告をしたときに限り、その申告を認めるとされています。 そして、上記通達に掲げる注書2において、土地の所有者が「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受ける場合で、家屋の所有者が居住用の他の特例を受ける場合の注意点が示されています。 ※下線については筆者加筆。 したがって、家屋の所有者に譲渡損失がなく、土地の所有者に譲渡損失がある場合(【第19回】を参照)と違い、家屋の所有者であるXは「居住用財産の3,000万円特別控除」の特例を受けることができません。 (了)

#No. 410(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/03/11

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第69回】「歩道状空地事件」~最判平成29年2月28日(民集71巻2号296頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第69回】 「歩道状空地事件」 ~最判平成29年2月28日(民集71巻2号296頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 410(掲載号)
#菊田 雅裕
2021/03/11

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第49回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第49回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   (8) 売上割戻しの計上時期を定める法人税基本通達2-1-1の12 国税庁は、売上割戻しについて、変動対価の要因となるその他の事実の範囲に含まれ、いわば収益認識会計基準を適用して売上割戻しの金額を販売事業年度において適切に見積もって計上した場合にはこれを認める(引渡し等事業年度の引渡し時の価額等の算定に反映する)こととしている。つまり、収益認識会計基準において、売上割戻しは、変動対価として、売上時にこれを見積もって売上高(収益)から控除することとされており、税法上も合理的と認められる範囲でその処理を認めることとされている(法法22の2④⑤、法令18の2①~③、法基通2-1-1の11)というのである。 それでは、売上割戻しについて、上記法人税基本通達2-1-1の11の取扱いを適用しない場合にはどうなるか。 この点については、法人税基本通達2-1-1の12がその取扱いを定めている。本通達は、販売した棚卸資産に係る売上割戻しについて同通達2-1-1の11の取扱いを適用しない場合には、当該売上割戻しの金額をその通知又は支払をした日の属する事業年度の収益の額から減額することとしている。販売時には販売額で売上金額を計上した上で、売上割戻しの確定時(通知又は支払の時)に収益から減額する処理も従来と同様に認められるということである。ただし、同通達2-1-1の13を適用する場合は後で検討する。 収益認識会計基準を適用しない場合には、売上割戻しはこれが確定した時点で認識するという従来の会計慣行があり、これも一般に公正妥当と認められる会計処理の基準といえると考えたことによるものであり、同基準の導入前の公正な会計慣行を踏まえた旧通達2-5-1の取扱いのうち、法人税基本通達2-1-1の11に該当しない部分を実質的に存続することとしたものである(国税庁「平成30年5月30日付課法2-8ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明」33頁)。 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に言及する上記下線部分について、その明文上の法的根拠として法人税法22条4項を想定しているのであろうか。資産の販売等に係る収益の計上額を規律する法人税法22条の2第4項は、同項に優先して適用されることになる同項の「別段の定め」から同法22条4項を除いている。このような状況の中で、その22条4項を持ち出すことが可能であるかなどの疑問を提起することはできよう。 もっとも、従来は、売上割戻しの額を収益(売上高)から控除する方式のみならず、旧通達2-5-1において、法人税法22条3項2号括弧書き所定の債務確定基準により損金算入を認めることとしていた。損金の問題であれば法人税法22条4項の適用は必ずしも排除されていない。しかしながら、この法人税基本通達2-1-1の12は収益(売上高)から控除する方式を想定しているため、一筋縄ではいかない。 いずれの方式によるかによって軸となる根拠規定が異なり得ることから種々の理論的関心を引き起こすが、法人税法の課税所得の計算上は、基本的に両方式で差異はないことから、実務上は、この点が問題となることは少ないであろう。   (9) 一定期間支払わない売上割戻しの計上時期を定める法人税基本通達2-1-1の13・14 法人税基本通達2-1-1の13は、法人が売上割戻しについて同通達2-1-1の11の取扱いを適用しない場合において、当該売上割戻しの金額につき、相手方との契約等により特約店契約の解約、災害の発生等特別な事実が生ずる時まで又は5年を超える一定の期間が経過するまで、相手方名義の保証金等として預かることとしているため、相手方がその利益の全部又は一部を実質的に享受することができないと認められる場合には、その売上割戻しの金額については、同通達2-1-1の12にかかわらず、これを現実に支払った日(その日前に実質的に相手方にその利益を享受させることとした場合には、その享受させることとした日)の属する事業年度の売上割戻しとして取り扱うことを定めている。 また、この場合の「相手方がその利益の全部又は一部を実質的に享受すること」の意義が法人税基本通達2-1-1の14に定められている。 この法人税基本通達2-1-1の13の趣旨は、次のとおりである(上記趣旨説明34~35頁参照)。 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に言及する上記下線部分について、その明文上の法的根拠として法人税法22条4項を想定しているのであろうか。そうであれば、前述のとおり、この場面で同項を持ち出すことが可能であるかなどの疑問を提起することはできよう。 本通達は「5年を超える一定の期間」という数値基準を示しているが、このような数値基準を一種の割切基準として画一的に適用するのであれば、せめて通達ではなく政令で行うべきであろう。今後、限界事例において、通達でそのような割切基準を設けて適用することの法的根拠・拘束力や、5年という基準の根拠・その合理性が争点化することが予想される。   (了)

#No. 410(掲載号)
#泉 絢也
2021/03/11

2021年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

2021年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】   RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋   Ⅳ 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準   ASBJより「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に係る注記情報の充実を目的として、改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(以下、「改正遡及基準」という)」が公表された。 従来は重要な会計方針に関する注記は企業会計原則注解(注1-2)で定められていたが、改正遡及基準は、この規定を引き継いでいる。 また、2020年6月12日に、金融庁より「「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について」が公表され、財務諸表等規則及び連結財務諸表規則などが改正されている。   1 開示目的 改正遡及基準では、重要な会計方針に関する注記の開示目的が明らかにされている(改正遡及基準4-2)。 なお、今回の改正は、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続の開示上の取扱いを明らかにする一方、重要な会計方針に関する注記における従来の考え方を変更するものではなく、関連する会計基準等の定めが明らかな場合における重要な会計方針に関する注記について、これまでの実務を変更することを意図するものではない(改正遡及基準44-3)。   2 関連する会計基準等の定めが明らかでない場合 「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」とは、特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しない場合をいう(改正遡及基準4-3)。例えば、以下が該当する(改正遡及基準44-4、44-5)。   3 重要な会計方針に関する注記 (1) 注記項目 財務諸表には、重要な会計方針を注記する(改正遡及基準4-4)。重要な会計方針に関する注記例としては、企業会計原則等にも記載されていた以下の項目が挙げられている。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる(改正遡及基準4-5、財務諸表等規則ガイドライン(以下、「財ガ」という)8の2 2、連結財務諸表規則ガイドライン(以下、「連結ガ」という)13-5 2)。 (2) 会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合 会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、会計方針に関する注記を省略することができる(改正遡及基準4-6)。 (3) 企業の対応 改正の趣旨を踏まえ、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続(上記2参照)が、重要な会計方針に関する注記の開示目的に照らし必要な開示が十分なされているか否かを再度、検討し、新たに重要な会計方針として注記を加える必要がないか検討する必要がある。   4 未適用の会計基準等に関する注記 (1) 改正内容 未適用の会計基準等に関する注記に関する定めは、これまで会計方針の変更の取扱いの一部として定められていたため、専ら表示及び注記事項を定めた会計基準等に対しては適用されないと解されていた。 しかし、未適用の会計基準等に関する注記に関する定めは、既に公表されているものの、未だ適用されていない新しい会計基準等「全般」に適用されることを明確にしている(改正遡及基準28-3)。そのため、今後は、表示及び注記事項を定めた会計基準等で未適用のものがある場合は、当該会計基準等についても「未適用の会計基準等に関する注記」が必要となる。 (2) 注記内容 既に公表されているものの、未だ適用されていない新しい会計基準等がある場合には、以下について注記する。なお、専ら表示及び注記事項を定めた会計基準等に関しては、以下の③の事項の注記を要しない。また、連結財務諸表で注記を行っている場合は、個別財務諸表での注記を要しない(改正遡及基準22-2)。 (3) 未適用の会計基準等 今回の決算では、早期適用していない場合、以下の会計基準等が未適用の会計基準等に該当する。 ①-1 収益認識に関する会計基準等の事例(オーエスジー(株):2020年11月期 有価証券報告書) ①-2 収益認識に関する会計基準等の事例((株)ミロク:2020年10月期 有価証券報告書) ② 時価の算定に関する会計基準等の事例((株)マネーフォワード:2020年11月期 有価証券報告書)   5 適用初年度の取扱い 改正遡及基準を適用したことにより新たに注記する会計方針は、表示方法の変更には該当しない。ただし、改正遡及基準を新たに適用したことにより、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに注記する場合には、追加情報としてその旨を注記する(改正遡及基準25-3)。   6 適用時期 適用時期は、以下のとおりである(改正遡及基準25-2)。   7 計算書類 改正遡及基準の公表は、現状の実務を変更するものではないため、会社計算規則は改正されていない。 なお、改正遡及基準では、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合も、関連する会計基準等の定めが明らかな場合と同じく、採用した会計処理の原則及び手続の概要を重要な会計方針として注記する。そのため、当該採用した会計処理の原則及び手続が計算書類を理解するために重要であると考えられる場合には、会社計算規則第101条第1項第5号の「その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項」に該当し、その概要を注記する必要がある(法務省「「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について」第3 意見の概要及び意見に対する当省の考え方10)。 また、上記4の未適用の会計基準等に関する注記及び上記5の追加情報については、計算書類においても重要性がある場合、注記する必要がある。 Ⅴ 会計上の見積りの開示に関する会計基準   ASBJより2020年3月31日に「見積りの不確実性の発生要因」に係る注記情報の充実を目的として、企業会計基準第31項「「会計上の見積りの開示に関する会計基準(以下、「見積基準」という)」が公表された。 また、2020年6月12日に、金融庁より「「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について」が公表され、財務諸表等規則及び連結財務諸表規則などが改正されている。   1 開示目的 見積基準では、次のように開示目的を定めている(見積基準4)。   2 開示対象項目の識別 会計上の見積りの開示を行うにあたり、まず、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目(開示対象項目)を識別する。識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債である。また、翌年度の財務諸表に与える影響を検討するにあたっては、影響の金額的大きさ及びその発生可能性を総合的に勘案して判断する(見積基準5)。 開示対象項目を識別する際のポイントをまとめると、以下のとおりである(見積基準5、23、24)。   3 注記 (1) 注記項目 会計上の見積りの注記は独立して、注記する(見積基準6)。そして、上記2で識別した開示対象項目について、識別した会計上の見積りの内容を表す項目名を注記し(見積基準6)、各項目ごとに以下の事項を注記する(見積基準7、8、27、29、30)。また、識別した項目が複数ある場合には、それらの項目名は単一の注記として記載する(見積基準6)。 なお、会計上の見積りに関する注記の検討においては、米国基準及びIFRS適用会社の事例が参考になるため、以下に例示する。 ① ソニー(株):【米国基準】2020年3月期 有価証券報告書(項目:営業権及びその他の無形固定資産の減損) ② (株)LIFULL:【IFRS基準】2020年9月期 有価証券報告書(項目:繰延税金資産の評価) ③ コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(株):【IFRS基準】2019年12月期 有価証券報告書(項目:非金融資産の減損) (2) 連結財務諸表を作成している場合 連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表において当該注記を行うときは、上記(1)の注記事項について連結財務諸表における記載を参照することができる(下記表の容認開示①)。 なお、識別した項目ごとに、当年度の個別財務諸表に計上した金額の算出方法に関する記載をもって上記(1)②の注記事項に代えることができる。この場合であっても、連結財務諸表における記載を参照することができる(見積基準9)(下記表の容認開示②)。 (3) KAMとの関係 KAM(【第1回】Ⅲ参照)として、見積り項目が選ばれる可能性が多いと考えられる。そして、監査人からKAMの記載にあたって、注記内容のさらなる充実を求められる可能性がある。そのため、あらかじめ、会計上の見積りに関する注記のドラフトを作成し、監査人と事前に十分に協議することで、決算の早期化に役立てることができると考えらえる。   4 適用初年度の取扱い 適用初年度において、見積基準の適用は表示方法の変更として取り扱う。ただし、改正遡及基準第14項の定め(表示方法の変更による組替え)にかかわらず、見積基準に定める注記事項について、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができる。   5 適用時期 適用時期は、以下のとおりである(改正遡及基準25-2)。   6 計算書類 2020年8月12日に、「会社計算規則の一部を改正する省令」が公表された。見積基準が公表されたことに伴い、会社計算規則が改正されている。 (1) 注記項目 計算書類においても、以下の注記が必要である(会社計算規則102の3の2)。 (※) 会社計算規則では「可能性」と記載されているが、見積基準の「リスク」と同義であると考えられる。 (2) 会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報について 会社法上の計算書類においても注記を求められることによる実務上の負担等も考慮し、各社の実情に応じて必要な限度での開示を可能とするため、注記項目は、概括的に、「上記①に掲げる項目に係る会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報」とされている。したがって、見積基準第8項(上記3(1)②参照)において具体的に例示された事項であったとしても、各社の実情を踏まえ、計算書類においては当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には、計算書類において当該事項について注記しないことも許容される(法務省「「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について」第3 意見の概要及び意見に対する当省の考え方7)。 (3) 注記が必要な会社 「会計上の見積りに関する注記」が必要な会社は、以下のとおりである。 Ⅵ 新型コロナウイルス感染症に関連する会計処理及び開示   新型コロナウイルス感染症における会計処理の検討事項としては、以下が挙げられる。   1 上場有価証券の評価 新型コロナウイルス感染症により業績が低迷している会社については、株価が下落している場合もある。そのため、会社で保有している上場有価証券について、減損の検討が必要となる場合もあると考えられる。 (※) 回復可能性がある場合とは、時価の下落が一時的なもので、期末日後、概ね1年以内に時価が取得原価にほぼ近い水準まで回復する見込みのある場合をいうが、これを立証することは、通常難しいと考えられる。 【会計処理】   2 関係会社株式の評価 新型コロナウイルス感染症の影響により、関係会社(子会社及び関連会社)の業績が悪くなっている場合も多いと考えられる。この場合、関係会社株式の評価を慎重に検討する必要がある。非上場の関係会社株式の評価における具体的な検討は、以下のとおりである。なお、上場の関係会社株式の評価は、上記1のとおりである。 (1) 株式の評価 関係会社の財政状態の悪化(下記①参照)により実質価額が著しく下落(下記②参照)した場合は、減損処理する。 ① 財政状態の悪化 期末の1株当たり純資産が、関係会社株式を取得したときの1株当たり純資産と比較して相当程度下回っている場合 ② 実質価額の著しい下落 実質価額(=1株当たり純資産 × 所有株式数)と株式の取得原価を比較し、実質価額が50%程度以上下落している場合 【会計処理】 ただし、実質価額について、関係会社の事業計画等をもとに回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、減損処理は不要である。 事業計画等は実行可能で合理的なものでなければならず、回復可能性の判定は、特定のプロジェクトのために設立された会社で、当初の事業計画等において、開業当初の累積損失が5年を超えた期間経過後に解消されることが合理的に見込まれる場合を除き、おおむね5年以内に回復すると見込まれる金額を上限として行う。 したがって、回復可能性を監査人に説明する際には、5ヶ年の実行可能で合理的な事業計画を作成し、どうしてそのような数値になるのか、具体的に説明する必要がある。 (2) 投資損失引当金の計上 関係会社株式の減損処理を行う必要はないが、以下のとおり、健全性の観点から、投資損失引当金を計上できる場合がある。 【会計処理】 (3) 債務超過に対する引当金 関係会社が債務超過である場合、実質価額がマイナスであるため、関係会社株式はゼロまで減損処理する。 一方、関係会社株式は、減損においてはゼロまでしか評価を切り下げることはできないが、子会社等の債務超過額は、最終的には、親会社が負担(子会社の場合は全額負担、関係会社の場合は他の株主との契約で決められた分の負担)する可能性が高いと考えられる。そのため、債務超過額のうち、負担する部分について関係会社事業損失引当金等で損失処理する必要がある。 【会計処理】 関係会社に対する債権がある場合及び関係会社に対して債務保証を行っている場合 関係会社に対する債権がある場合や関係会社に対して債務保証を行っている場合、関係会社に対する債権部分には貸倒引当金を計上し、債務保証部分には、債務保証損失引当金を計上する。そして、この2つの引当金の合計と債務超過額の差額を関係会社事業損失引当金等で計上することも考えられる(下図参照)。 一方、貸倒引当金や債務保証損失引当金としては計上せずに、債務超過額全額を関係会社事業損失引当金等で表示することも考えられる。   3 非上場株式の評価 関係会社以外の非上場の会社についても新型コロナウイルス感染症の影響により、業績が悪化している可能性がある。業績が悪くなっている場合、非上場株式の評価についても慎重に検討する必要がある。 非上場会社の財政状態の悪化(下記①参照)により実質価額が著しく下落(下記②参照)した場合は、減損処理する。 ① 非上場会社の財政状態の悪化 期末の1株当たり純資産が、非上場株式を取得したときの1株当たり純資産と比較して相当程度下回っている場合 ② 実質価額の著しい下落 実質価額(=1株当たり純資産×所有株式数)と株式の取得原価を比較し、実質価額が50%程度以上下落している場合 【会計処理】   4 固定資産(のれんを含む)の減損 新型コロナウイルス感染症の影響により、業績が悪化している事業拠点(会社全体、店舗、支店、工場等)が多くなっている可能性がある。業績が悪くなっている場合、固定資産(のれんを含む)の減損についても慎重に検討する必要がある。具体的な検討は、以下のとおりである。 【会計処理】   5 貸倒引当金 新型コロナウイルス感染症の影響により、得意先(関係会社を含む)の業績が悪化し、売上債権の回収が延滞したり、貸倒れが発生する可能性がある。また、関係会社へ貸付を行っている場合も貸付金の回収が延滞したり、貸倒れが発生する可能性がある。そのため、貸倒引当金についても慎重に検討する必要がある。 具体的には、期末日以前のみならず、期末日後の回収状況や法的整理等の情報を適時に入手した上で、債権を以下の3つに区分し、それぞれの区分ごとに貸倒引当金を算定する必要がある。特に、「貸倒懸念債権」又は「破産更生債権等」に該当する得意先、関係会社がないか慎重に検討する必要がある。 【会計処理】 貸倒引当金繰入額は、原則、その性質に応じて販管費又は営業外費用への計上であるが、新型コロナウイルス感染症の影響により発生した貸倒引当金繰入額は、非常に特殊な事象であるため、金額が多額に発生する場合には、特別損失に計上することも考えられる。   6 債務保証損失引当金 新型コロナウイルス感染症の影響により、関係会社の業績が悪化し、経営難に陥り、関係会社において取引先に対する仕入債務の返済や金融機関への借入金の返済が滞る可能性がある。このような場合に、関係会社の仕入債務や借入金について、親会社が債務保証を行っている場合、債務保証に係る損失が発生する可能性がある。そのため、債務保証損失引当金についても慎重に検討する必要がある。 具体的には、期末日以前のみならず、期末日後の関係会社の仕入債務の支払状況や金融機関への借入金の返済状況に関する情報を適時に入手し検討する必要がある。 【会計処理】 債務保証損失引当金繰入額は、発生事由等に応じて営業外費用又は特別損失に計上することが考えられる。   7 リストラクチャリング関連の引当金 新型コロナウイルス感染症の影響により、業績が悪化し、経営難に陥った場合、将来に向けた立て直しのためにリストラ(支店・店舗・工場の閉鎖、早期退職の募集等)を決定することが考えられる。このような場合、例えば、以下のような損失について見積もった上で、リストラクチャリング関連の引当金の計上を検討する必要がある。 (※) 従業員が早期退職制度に応募し、金額を合理的に見積もることができる時点で費用処理する。 【会計処理】 上記の勘定科目は例示であるため、実態に応じて適切な名称を付す必要がある。   8 繰延税金資産の回収可能性 新型コロナウイルス感染症の影響により、会社の業績が悪くなっている場合も多いと考えられる。その場合、繰延税金資産の回収可能性の検討において、以下の点について、慎重に検討する必要がある。 (1) 税効果の企業の分類 業績の悪化により、課税所得が減少する場合、税効果の企業の分類を変更しなければいけない可能性がある。 (2) 一時差異等加減算前課税所得の見積り 分類3及び分類4の会社の繰延税金資産の回収可能性の検討に当たっては、一時差異等加減算前課税所得は非常に重要である。 しかし、新型コロナウイルス感染症の将来への影響がわからない場合、合理的で説明可能な事業計画を作成することが難しいため、一時差異等加減算前課税所得を見積もることが困難となる可能性がある。そのため、社内での情報収集を早めに行うことが重要である。 また、事業計画を監査人に説明する際には、合理的で説明可能な事業計画を作成し、どうしてそのような数値になるのかを、具体的に説明する必要がある。 【会計処理(繰延税金資産を取り崩す場合)】   9 棚卸資産の評価 通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。 新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が伸びず棚卸資産の滞留が増加したり、赤字でないと販売できなくなるなどの状況が発生した場合には、多額の棚卸資産評価損を計上しなければいけない可能性がある。そのため、期末日前後の販売に関する情報を収集し、正味売却価額を合理的に見積もった上で、棚卸資産評価損を計上する必要がある。 【会計処理】 棚卸資産評価損は、原則、売上原価に計上するが、収益性の低下に基づく簿価切り下げ額が新型コロナウイルス感染症による臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには特別損失に計上できる。   10 助成金の収益計上 新型コロナウイルス感染症等の影響に伴い、国や地方公共団体から助成金等の交付を受けた場合の税務上の収益計上時期は、以下のとおりである(国税庁「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係 問7)。 (1) 基本的な考え方 助成金等については、国や地方公共団体により助成金等の交付が決定された日に、収入すべき権利が確定すると考えられるため、原則として、その助成金等の交付決定がされた日の属する事業年度の収益として計上する。 (2) 特定の経費を補填する場合 その助成金等が、経費を補填するために法令の規定等に基づき交付されるものであり、あらかじめその交付を受けるために必要な手続(例えば、休業手当について雇用調整助成金を受けるための事前の休業等計画届の提出等)をしている場合には、その経費が発生した事業年度中に助成金等の交付決定がされていないとしても、その経費と助成金等の収益が対応するように、その助成金等の収益計上時期はその経費が発生した日の属する事業年度と同じ期である。 なお、新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置により、事前の休業等計画届の提出は不要とされているため、この場合の雇用調整助成金の収益計上時期は、原則どおり(上記(1)のとおり)、交付決定日の属する事業年度となる。   11 追加情報 前期において新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定(重要性がないものは除く)は、追加情報として開示されていた。 しかし、当期末より、見積基準が適用されるため、新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定は、見積基準で求められる注記(上記Ⅴ3参照)に含まれることが多いと想定される(翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある)ため、当該注記で記載することになる。 なお、新型コロナウイルス感染症の影響に重要性がないと判断される場合であっても、この判断について注記することが財務諸表利用者にとって有用な情報となる場合には、引き続き追加情報として開示することが追加情報の趣旨に沿った取扱いになる(ASBJ 第451回企業会計基準委員会(2021年2月9日開催)議事概要)。 【新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定の注記判断フロー】 なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、有価証券報告書の「経理の状況」より前及び事業報告においても記載が必要になる。   12 後発事象の注記 後発事象には、以下の2つがある。 新型コロナウイルス感染症の影響で、期末日後に様々な事象が発生したり、意思決定が行われるものと考えられる。後発事象の発生時点や内容により、修正後発事象又は開示後発事象のいずれに該当するかが異なるため、上記のいずれかに該当しそうな事象がある場合、適宜、監査人に確認することが望まれる。 《新型コロナウイルス感染症に関連する開示後発事象の例示》 (注) 上記項目は、開示後発事象としての例示であるが、発生時点等によっては、修正後発事象に該当する可能性もある。   13 継続企業の前提に関する注記 (1) 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況 新型コロナウイルス感染症の影響で、業績が悪化している場合、新たに「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況(以下、「事象又は状況」という)」が存在する場合に該当する可能性がある。 そのため、「事象又は状況」が存在する場合に該当していないかどうかを慎重に検討する必要がある。 《継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況の例示》 (2) 継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるとき 期末において、「事象又は状況」が存在する場合には、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策(効果的で実効可能なもの)を検討する必要がある。新型コロナウイルス感染症の影響により、以下の対応が必要であると考えられる。 そして、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する「重要な不確実性」が認められるときは、継続企業の前提に関する以下の事項を計算書類及び有価証券報告書に注記する。 なお、貸借対照表日後において、「事象又は状況」が解消し、又は改善したため、継続企業の前提に関する「重要な不確実性」が認められなくなったときには上記の注記を行う必要はない。ただし、この場合には、当該「事象又は状況」を解消し、又は改善するために実施した対応策が重要な後発事象として注記対象になることも考えられる。 (3) 有価証券報告書の「経理の状況」より前における記載 上記(2)の注記が必要でない(「重要な不確実性」がない)場合であっても、「事象又は状況」が存在する場合には、有価証券報告書の「事業等のリスク」及び「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」にその旨及びその内容等を開示する。 また、上記(2)の注記をする場合でも、当該注記に係る「事象又は状況」が発生した経緯及び経過等について、「事業等のリスク」及び「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載する。 (4) 事業報告における記載 会社法に基づく事業報告においても、株式会社の現況に関する事項(会社法施行規則120①Ⅳ、Ⅷ、Ⅸ等)に、適切な開示をすることが望まれる。 (5) 後発事象の注記 貸借対照表日後に「事象又は状況」が発生した場合で、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する「重要な不確実性」が認められ、翌事業年度以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼすときは、重要な後発事象として、以下の事項を計算書類及び有価証券報告書に注記する。 上記のような後発事象のうち、貸借対照表日において既に存在していた状態で、その後、その状態が一層明白になったものについては、継続企業の前提に関する注記の要否を検討する必要がある。 (了)

#No. 410(掲載号)
#西田 友洋
2021/03/11
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