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【STEP4】自社利用のソフトウェアの会計処理
自社利用のソフトウェアでは、資産計上をするかどうかを判断するため、将来の収益獲得又は費用削減が確実であるかを検討する。また、ソフトウェアの導入費用及び減価償却を検討する。
(1) 将来の収益獲得又は費用削減が確実であるか
(2) ソフトウェアの導入費用
(3) 減価償却
(1) 将来の収益獲得又は費用削減が確実であるか
ソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する。その結果、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合はソフトウェアを無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、費用処理する(指針11)。
確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、以下の検討は不要である。
資産計上される場合の例としては、以下が挙げられる(指針11)。
- 通信ソフトウェア又は第三者への業務処理サービスの提供に用いるソフトウェア等を利用することにより、会社(ソフトウェアを利用した情報処理サービスの提供者)が、契約に基づいて情報等の提供を行い、受益者からその対価を得ることとなる場合
- 自社で利用するためにソフトウェアを制作し、当初意図した使途に継続して利用することにより、当該ソフトウェアを利用する前と比較して会社(ソフトウェアの利用者)の業務を効率的又は効果的に遂行することができると明確に認められる場合
- ソフトウェアを利用することにより、利用する前と比べ間接人員の削減による人件費の削減効果が確実に見込まれる場合、複数業務を統合するシステムを採用することにより入力業務等の効率化が図れる場合、従来なかったデータベース・ネットワークを構築することにより今後の業務を効率的又は効果的に行える場合等で、ソフトウェア制作の意思決定の段階から制作の意図・効果が明確になっている場合
- 市場で販売しているソフトウェアを購入し、かつ、予定した使途に継続して利用することによって、会社(ソフトウェアの利用者)の業務を効率的又は効果的に遂行することができると認められる場合
【補足POINT-資産計上の開始・終了時点-】
- 自社利用のソフトウェアに係る資産計上の「開始」時点とは、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点である。これを立証できる証憑としては、例えば、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書、ソフトウェアの制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等がある(指針12)。
- 一方、自社利用のソフトウェアに係る資産計上の「終了」時点とは、実質的にソフトウェアの制作作業が完了したと認められる状況になった時点である。これを立証できる証憑としては、例えば、ソフトウェア作業完了報告書、最終テスト報告書等がある(指針13)。
(2) ソフトウェアの導入費用
① 購入ソフトウェアの設定等に係る費用
外部から購入したソフトウェアについて、そのソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用は、購入ソフトウェアを取得費用として当該ソフトウェアの取得価額に含める。ただし、これらの費用について重要性が乏しい場合には、費用処理することができる(指針14)。
② ソフトウェアを大幅に変更して自社仕様にするための費用
自社で過去に制作したソフトウェア又は市場で販売されているパッケージソフトウェアの仕様を大幅に変更して、自社のニーズに合わせた新しいソフトウェアを制作するための費用は、それによる将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合を除き、研究開発目的のための費用と考えられるため、購入ソフトウェアの価額も含めて費用処理する(指針14)。
将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、購入ソフトウェアの価額を含めて当該費用を無形固定資産として計上する(指針14)。
③ その他の導入費用
ソフトウェアを利用するための環境を整備し有効利用を図るための費用は、原則としてソフトウェアそのものの価値を高める性格の費用ではない。したがって、その費用は原則として発生時の費用として会計処理する(指針40)。
例えば、以下のような費用は、発生した事業年度の費用として会計処理する。
(ⅰ) データをコンバートするための費用
新しいシステムでデータを利用するために旧システムのデータをコンバートするための費用については、発生した事業年度の費用とする(指針16(1))。
(ⅱ) トレーニングのための費用
ソフトウェアの操作をトレーニングするための費用は、発生した事業年度の費用とする(指針16(2))。
なお、ソフトウェアを購入する際に、上記のような導入費用も含めた価額で契約等が締結されている場合には、導入費用は合理的な見積りによって購入の対価とそれ以外の費用とに区分して会計処理を行う(指針40)。
〈まとめ〉
【補足POINT-有機的一体として機能する機器組込みソフトウェア-】
- 有機的一体として機能する機器組込みソフトウェア(機械、器具備品等に組み込まれているソフトウェア)は独立した科目として区分するのではなく、当該機械等の取得原価に算入し、「機械及び装置」等の科目を用いて表示する(指針17)。
- しかし、ソフトウェアの交換(バージョンアップ)が予定されている場合で、バージョンアップによる機能向上が革新的であるようなときは、機器とは別個にソフトウェアとして処理することが適切な場合もある(指針41)。
- また、機械等の購入時にソフトウェア交換が、契約により予定され、新・旧ソフトウェアの購入価格が明確な場合には、ソフトウェア部分を区分して処理することもある(指針41)。
(3) 減価償却
① 減価償却方法
自社利用のソフトウェアにおいても、その利用の実態に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきである。ただし、一般的には、定額法による償却が合理的である(指針21)。
② 耐用年数
耐用年数は、ソフトウェアの利用可能期間によるが、原則として5年以内の年数とする。5年を超える年数とするときには、合理的な根拠に基づくことが必要である(指針21)。
利用可能期間については、毎期見直しを行う必要がある(指針21)。
例えば、利用可能期間の見直しの結果、新たに入手可能となった情報に基づいて当事業年度末において耐用年数を変更した場合には、以下の計算式により当事業年度及び翌事業年度の減価償却額を算定する(指針21)。
この後は、【STEP5】を検討する。