【STEP3】減損損失の認識の判定
【STEP3】では、減損損失の認識について検討する。減損損失の認識では、以下の3つの検討が必要である。
(1) 将来キャッシュ・フローの見積り期間の設定
(2) 将来キャッシュ・フローの見積り
(3) 割引「前」将来キャッシュ・フローと固定資産の帳簿価額との比較
(1) 将来キャッシュ・フローの見積り期間の設定
将来キャッシュ・フローの見積り期間は、①主要な資産(キャッシュ・フロー生成にとって最も重要な構成資産)の経済的残存使用年数か、②20年のいずれか短い方で設定する。土地の使用期間は無限であること等から、見積り期間に上限が設けられている。
経済的残存使用年数(税法の耐用年数ではない)とは、その資産が経済的に使用可能と予測される残りの年数である(適用指針21)。ただし、税法の耐用年数に不合理がなければ、税法の耐用年数に基づく残存耐用年数を経済的残存使用年数として用いることができる(適用指針100)。
(2) 割引「前」将来キャッシュ・フローの見積り
見積り期間を設定したら、これに対応する将来キャッシュ・フローを見積もる。将来キャッシュ・フローは、以下の①と②の合計で求める。
① 資産の使用によって各年に得られるキャッシュ・フロー(見積り期間は(1)で決定した期間まで)
② 資産の将来の使用「終了」時点における正味売却価額、もしくは、(1)の見積り期間満了時点における回収可能価額
正味売却価額及び回収可能価額については【STEP4】で解説する。
また、将来キャッシュ・フローを見積もる際には、取締役会等で承認された中長期計画が存在する場合と存在しない場合で留意点がある(適用指針36)。
(ⅰ) 取締役会等で承認された中長期計画が存在する場合
取締役会等の承認を得た中長期計画の前提となった数値を、経営環境などの企業の外部要因に関する情報や企業が用いている内部の情報(例えば、予算、業績評価の基礎データ、売上見込みなど)と整合的に修正し、資産の現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して、将来キャッシュ・フローを見積もる。
中長期計画の見積期間を超える期間の将来キャッシュ・フローを算定する場合、原則として、取締役会等の承認を得た中長期計画の前提となった数値(経営環境などの企業の外部要因に関する情報や企業が用いている内部の情報と整合的に修正した後のもの)に、合理的な反証がない限り、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定又は逓減する成長率(ゼロやマイナスになる場合もある)の仮定をおいて見積もる。一定又は低減する成長率の仮定をおいて見積もる必要があるため、逓増する成長率(例えば、来年は2%、2年後は3%、3年後は4%・・・)の仮定をおくことはできない。
(ⅱ) 取締役会等で承認された中長期計画が存在しない場合
中長期計画が存在しない場合、経営環境などの企業の外部要因に関する情報や企業が用いている内部の情報に基づき、資産の現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して、将来キャッシュ・フローを合理的に見積もる。
(3) 割引「前」将来キャッシュ・フローと固定資産の帳簿価額との比較
将来キャッシュ・フローを見積もったら、その金額を割り引くことなく、そのまま、固定資産の帳簿価額と比較して、実際に減損損失の認識が必要かどうか検討する。
割引「前」将来キャッシュ・フローが固定資産の帳簿価額を下回る場合、減損損失を認識する(適用指針18)。下回らない場合は減損損失の認識は不要となる。
●固定資産の帳簿価額 > 割引「前」将来キャッシュ・フロー
⇒ 減損損失の認識が必要
●固定資産の帳簿価額 ≦ 割引「前」将来キャッシュ・フロー
⇒ 減損損失の認識は不要