公開日: 2014/02/27 (掲載号:No.58)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第2回】「固定資産の減損」

筆者: 西田 友洋

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【STEP2】減損の兆候の有無の判定

【STEP2】では、減損の兆候の有無について検討する。

減損の兆候とは、資産又は資産グループに減損が生じている「可能性」を示す事象をいう(適用指針11)。以下の4つのいずれかに該当する場合、減損の兆候ありと判断する。

(1) 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっているか、又は、継続してマイナスとなる見込みである場合

(2) 資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、又は、生ずる見込みである場合

(3) 経営環境が著しく悪化したか、又は、悪化する見込みである場合

(4) (市場価格がある資産で)市場価格が著しく下落している場合

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上記の減損の兆候の有無の判定は、通常の企業活動において実務的に入手可能なタイミングにおいて利用可能な情報に基づき行う(適用指針76)

減損の兆候ありと判断された場合には、【STEP3】を検討する。減損の兆候なしと判断された場合は、【STEP3】以降の検討は不要である。

(1) 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナス、又は、継続してマイナスとなる見込みの場合

営業活動から生ずる損益には、本社費等の間接的に生ずる費用も含まれる。

また、「継続してマイナス」とは、概ね過去2期がマイナスであることをいう。ただし、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合は該当しない。「継続してマイナスとなる見込み」とは、前期と当期「以降」が明らかにマイナスとなる見込みの場合をいう(適用指針12(2))。

 

なお、事業の立上げ時など、当初より継続して営業損益がマイナスとなることが予定されている場合、予め合理的な事業計画(当該事業計画の中で投資額以上のキャッシュ・フローを生み出すことが実行可能なもの)が策定されており、実際のマイナスの額が当該事業計画にて予定されていたマイナスの額よりも著しく下方に乖離していないときには、減損の兆候には該当しない(適用指針12(4))。

ただし、長期(例えば、10年間)にわたって営業損益がマイナスの場合、事業計画どおりに進んでいたとしても、安易に減損の兆候に該当しないと判断してよいわけではない。形式的な検討ではなく、本質的に検討する必要がある。

(2) 資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、又は、生ずる見込みである場合

回収可能価額を著しく低下させる変化とは、以下のような変化が該当する(適用指針13)。

 事業の廃止 又は 不採算事業の整理、リストラ等の回収可能価額を著しく低下させるような事業の再編成を行う場合

 当初の予定よりも著しく早期に除却や売却などにより処分する場合

 回収可能価額を著しく低下させるような用途転用がある場合

 遊休状態で、将来の用途が定まっていない場合(ただし、遊休状態が、資産をほとんど利用しなくなってから間もない場合で、将来の用途を定めるために必要と考えられる期間にある場合には、減損の兆候に該当しない(適用指針85))

 稼働率が著しく低下した状態が続いていて、回復する見込みがない場合

 著しい陳腐化等の機能的減価がある場合

 建設仮勘定について、計画の中止又は大幅な延期が決定されたことや当初の計画に比べ著しく滞っている場合

また、回収可能価額を著しく低下させる変化が生ずると見込まれる時点とは、取締役会等の意思決定時点である(適用指針82)。したがって、変化が実際に生じた場合のみならず、取締役会等で変化について意思決定した場合も減損の兆候に該当する。

(3) 経営環境が著しく悪化したか、又は、悪化する見込みである場合

経営環境の著しい悪化とは、「市場環境の著しい悪化(価格の高騰や大幅な下落等)」、「技術的環境の著しい悪化」、「法律的環境の著しい悪化(重要な法律改正、規制緩和、規制強化等)」が該当する(適用指針14)。

(4) (市場価格がある資産で) 市場価格が著しく下落している場合

市場価格が著しく下落している場合とは、少なくとも市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合が該当する(適用指針15)。

ただし、50%程度以上下落していない場合でも、例えば、処分が予定されている資産で、市場価格の下落により、減損が生じている可能性が高いと見込まれる(重要な売却損失の発生が見込まれる)場合には、減損の兆候ありと判断することもある(適用指針89)。

市場価格とは、市場において形成されている取引価格等であるが、固定資産には、市場価格が観察可能な場合は多くない。したがって、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標が容易に入手できる場合(容易に入手できる評価額や指標を合理的に調整したものも含まれる)には、これらを、減損の兆候を把握するための市場価格とみなして使用する(適用指針15)。

容易に入手できる土地の価格指標としては、以下がある(適用指針90)。

 

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第2回】

「固定資産の減損」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

固定資産の減損とは、「固定資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態が相当程度確実な場合に限って、回収可能性を反映させるように固定資産の帳簿価額を減額(減損損失を計上)する会計処理」をいう(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書(以下「意見書」という)三3、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(以下「適用指針」という)134)。

言い換えると、固定資産を使って、固定資産の帳簿価額以上のキャッシュ・フローの獲得ができない場合、その状況(収益性の低下の状況)を表す会計処理である。

また、固定資産の減損は時価評価ではなく、収益性の低下を固定資産の帳簿価額に反映させるものであるため、取得原価主義のもとで行われる帳簿価額の臨時的な減額である(意見書三1)。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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