公開日: 2017/10/26 (掲載号:No.241)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第39回】「親会社が存在しない会社間における株式交換(対価が自己株式の場合)」

筆者: 西田 友洋

【STEP1】結合企業における個別財務諸表上の会計処理

結合企業(株式交換完全親会社)の個別財務諸表上では、以下の会計処理を行う。

(1) 取得原価の算定

(2) 増加する資本の処理

(1) 取得原価の算定

結合企業が取得する被結合企業(株式交換完全子会社)株式の取得原価は、結合企業が処分する自己株式の時価(株式交換日の株価)で算定する(基準23、適用指針110、112)。

外部のアドバイザー等に支払った報酬・手数料等の取得関連費用がある場合、個別財務諸表上、被結合企業株式の取得原価に含めて会計処理する。連結財務諸表上は、発生時に費用処理する(適用指針110、会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」56)。

(2) 増加する資本の処理

増加すべき株主資本の金額(交付する株式の対価)から処分した自己株式の帳簿価額を控除した金額を払込資本(資本金、資本準備金、その他資本剰余金)として会計処理する。払込資本の内訳項目は、会社法の規定に基づき会計処理する。控除した金額がマイナスとなる場合には、その他資本剰余金のマイナスとして処理する(適用指針112)。

なお、その他資本剰余金の残高が会計期間末において、マイナスとなった場合、その他資本剰余金がゼロになるように、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する(企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」12)。

【留意点】

結合企業の株主は、株式交換において取引が発生していないため、会計処理は必要ない。

  

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第39回】

「親会社が存在しない会社間における株式交換

(対価が自己株式の場合)」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、親会社が存在しない会社間における株式交換(対価が自己株式の場合)を解説する。また、株式交換前に株式の持ち合いはなく、かつ、株式交換後も結合企業(株式交換完全親会社)は、被結合企業(株式交換完全子会社)の元々の株主の子会社又は関連会社には該当しない場合を前提とする。なお、親会社が存在しない会社間における株式交換(対価が自己株式の場合)に関する全ての論点を取り扱っているわけではない。

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社に取得させることをいう(会社法2条31項)。そして、親会社が存在しない会社間における株式交換(対価が自己株式の場合)は企業結合の会計処理上、「取得」に該当する。

「取得」とは、共同支配企業の形成(※)又は共通支配下の取引(【第18回】参照)に該当しない企業結合をいう。「取得」の場合、「パーチェス法」で会計処理する(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下、「基準」という)」17)。パーチェス法とは、被取得企業から受け入れる資産及び負債の取得原価を、原則として、対価として交付する現金及び株式等の時価とする会計処理をいう(企業会計基準適用指針第 10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「適用指針」という)」29)。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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