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【STEP3】決算時の会計処理
ポイント引当金の金額は、以下のような計算で算出することが多いと考えられる。
ポイント引当金
= 期末日のポイント残高 ×(1-失効率)× 1ポイント当たりの単価
(1) 期末日のポイント残高
システム上で、付与ポイント数、使用ポイント数、失効ポイント数を管理し、期末日のポイント残高を集計できるようにする必要がある。
(2) 失効率
失効率は、過去の使用実績及び失効実績に基づいて合理的に見積る必要がある。例えば、過去3年間の期末日のポイント残高に対する失効率の平均等で算定することが考えられる。
(3) 1ポイント当たりの単価
単価は、売価ベースと原価ベースで算定することが考えらえる。
① [売価ベース]:ポイント使用を販売価格の値引きと捉える考え方
② [原価ベース]:ポイント使用を商品又はサービスそのものとの交換と捉える考え方
例えば、1ポイント=1円(商品の原価率40%)の場合、売価ベースであれば、単価は1円であり、原価ベースであれば、単価は1円×40%=0.4円である。
《設例》
A社は、個人顧客Bに1,000,000円の商品を現金で販売(原価率40%)し、15,000ポイントを付与した。
ポイントは、1ポイント=1円として使用することができる。
その後、個人顧客Bに50,000円の商品を現金で販売(原価率30%)したが、個人顧客Bは5,000ポイント使用した。
ポイント使用時は、売上値引で処理する。
期末において、ポイント残高は10,000ポイントであり、失効率は20%であると見積った。
ポイント引当金に使用する1ポイント当たりの単価は売価ベースを用いる。
〈会計処理〉
1 ポイント付与時の会計処理
(※1) 1,000,000円×原価率40%=400,000円
2 ポイント使用時の会計処理
(※2) 50,000円×原価率30%=15,000円
3 決算時の会計処理
(※3) 10,000ポイント×(1-20%)×1円=8,000円
なお、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「収益認識基準」という)適用後は、以下のように会計処理する。
【販売時(ポイント付与時)】
ポイントが、重要な権利を顧客に提供する場合には、ポイント部分を履行義務として認識し、取引価格を売上部分(売上として計上する部分)とポイント部分(契約負債として計上する部分)にそれぞれの独立販売価格の比率で配分する必要がある。
また、独立販売価格の比率で配分する必要があるため、1ポイント当たりの単価は、売価ベースのみが採用される。
詳細は下記の拙稿を参照されたい。
なお、上記では、ポイント付与時に契約負債を計上する会計処理を紹介しているが、実務上は、収益認識基準適用後も決算時に契約負債を計上することで問題ない。
* * *
以上、3のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。
【参考】
- 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(ASBJ)
- 企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(ASBJ)
(了)
この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。