公開日: 2020/01/30 (掲載号:No.354)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第46回】「ポイント引当金」

筆者: 西田 友洋

【STEP3】決算時の会計処理

ポイント引当金の金額は、以下のような計算で算出することが多いと考えられる。

ポイント引当金
= 期末日のポイント残高 ×(1-失効率)× 1ポイント当たりの単価

【会計処理(税効果は除く)】 (借方)	ポイント引当金繰入額	××× 	(貸方)	ポイント引当金	×××

(1) 期末日のポイント残高

システム上で、付与ポイント数、使用ポイント数、失効ポイント数を管理し、期末日のポイント残高を集計できるようにする必要がある。

(2) 失効率

失効率は、過去の使用実績及び失効実績に基づいて合理的に見積る必要がある。例えば、過去3年間の期末日のポイント残高に対する失効率の平均等で算定することが考えられる。

(3) 1ポイント当たりの単価

単価は、売価ベースと原価ベースで算定することが考えらえる。

[売価ベース]:ポイント使用を販売価格の値引きと捉える考え方

[原価ベース]:ポイント使用を商品又はサービスそのものとの交換と捉える考え方

例えば、1ポイント=1円(商品の原価率40%)の場合、売価ベースであれば、単価は1円であり、原価ベースであれば、単価は1円×40%=0.4円である。

《設例》

A社は、個人顧客Bに1,000,000円の商品を現金で販売(原価率40%)し、15,000ポイントを付与した。
ポイントは、1ポイント=1円として使用することができる。

その後、個人顧客Bに50,000円の商品を現金で販売(原価率30%)したが、個人顧客Bは5,000ポイント使用した。
ポイント使用時は、売上値引で処理する。

期末において、ポイント残高は10,000ポイントであり、失効率は20%であると見積った。
ポイント引当金に使用する1ポイント当たりの単価は売価ベースを用いる。

〈会計処理〉

1 ポイント付与時の会計処理

(※1) 1,000,000円×原価率40%=400,000円

2 ポイント使用時の会計処理

(※2) 50,000円×原価率30%=15,000円

3 決算時の会計処理

(※3) 10,000ポイント×(1-20%)×1円=8,000円

なお、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「収益認識基準」という)適用後は、以下のように会計処理する。

【販売時(ポイント付与時)】

ポイントが、重要な権利を顧客に提供する場合には、ポイント部分を履行義務として認識し、取引価格を売上部分(売上として計上する部分)とポイント部分(契約負債として計上する部分)にそれぞれの独立販売価格の比率で配分する必要がある。

また、独立販売価格の比率で配分する必要があるため、1ポイント当たりの単価は、売価ベースのみが採用される。

詳細は下記の拙稿を参照されたい。

なお、上記では、ポイント付与時に契約負債を計上する会計処理を紹介しているが、実務上は、収益認識基準適用後も決算時に契約負債を計上することで問題ない。

*  *  *

以上、3のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。

※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。

【参考】

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第46回】

「ポイント引当金」

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、ポイント引当金について解説する。我が国では、小売業やサービス業などにおいて、企業の販売促進の手段の1つとして、ポイント制度を導入している会社が多い。ポイント制度は、消費者が商品を購入したり、サービスを利用するたびにポイントが付与され、次の商品の購入やサービスの利用時にポイントを使用できるものである。

ポイント制度は、以下の引当金の4要件(企業会計原則注18)を満たす場合、引当金を計上する必要がある。多くの場合、当期以前に付与したポイントが将来のポイント使用時に費用の発生(又は、収益の減少)につながり、ポイントが使用される可能性は高く、かつ、データが揃えば合理的に見積ることが可能であるため、4要件を満たす場合が多いと考えられる。

引当金の4要件

 将来の特定の費用又は損失である。

 その発生が当期以前の事象に起因する。

 発生の可能性が高い。

 金額を合理的に見積ることができる。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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