谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第22回】
「租税法律主義と租税回避との相克と調和」
-租税回避の類型-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回は、租税回避の定義に関連して、課税要件アプローチの意義を検討したが、今回は、行為態様アプローチの意義を検討することにしたい。
行為態様アプローチは、課税要件論を前提にして租税負担の軽減・排除すなわち「課税要件の充足回避」の「手段」に着眼するものであるが、その「手段」は、立法者が課税要件を定めるに当たって想定していなかった法形式(「異常な」法形式)である。
「異常な」法形式の選択は、私法の世界では、私的自治の原則ないし契約自由の原則に照らし、立法者が課税要件を定めるに当たって想定していた法形式(「通常の」法形式)の選択と同じく、公序良俗・強行規定等に反しない限り、原則として問題のない行為である。これに対して、「異常な」法形式の選択も「通常の」法形式の選択も、基本的には同一の経済的成果等をもたらすにもかかわらず、前者は課税要件の充足回避(租税負担の軽減・排除)に、後者は課税要件の充足(租税負担の発生)にそれぞれ帰結するので、前者すなわち「異常な」法形式の選択は、税法の世界では、租税負担公平の原則に照らし、これに反する不公平な行為として問題にされるのである(【66】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)。
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