谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第24回】
「租税法律主義と租税回避との相克と調和」
-租税回避の法的評価-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
課税要件アプローチによる租税回避の包括的定義、すなわち、「課税要件の充足を避け納税義務の成立を阻止することによる、租税負担の適法だが不当な軽減または排除」(第21回Ⅲ1、【66】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号[以下同じ])という定義は、租税回避の概念を、「適法」及び「不当」という法的評価を要素(の一部)として構成するものである。
この定義は、租税回避を「課税要件の充足を避けることによる租税負担の不当な軽減又は排除」とする清永敬次教授の定義(同『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)42頁)をベースとするものである。ただ、清永教授の定義には「不当」という法的評価しか盛り込まれていないが、同教授がその定義の後「租税回避行為」の項目の最後の「なお書」(同・前掲書44頁。下線筆者)で次のとおり述べておられることからすると、清永教授も租税回避を「適法」と評価しておられると解することができる。
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