谷口教授と学ぶ
税法の基礎理論
【第26回】
「租税法律主義と租税回避との相克と調和」
-「租税回避の意図」の意義と必要性-
大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回は租税回避論の沿革とりわけ淵源を概観したが、その中で同族会社の行為計算否認規定においては当初から「所得税逋脱ノ目的」が、また、ドイツから継受した租税回避論においては租税逋脱との共通の要素としての「故意」がそれぞれ問題とされていたことを確認した。
今日の租税回避論においても、とりわけ租税回避を行為概念として論じ(第23回参照)、その不当性を論ずる場合(第24回Ⅲ参照)には、租税回避概念の主観的要素として租税回避の「意図」ないし「目的」が論じられることがあるが、今回は、そのような主観的要素が租税回避論においてどのような意義ないし性格をもつか及び租税回避の概念要素として必要かどうかを検討することにする。
Ⅱ 租税回避の概念と租税回避の意図
1 わが国の租税回避論
前回概観したように、同族会社の行為計算否認規定は、大正12年所得税法改正による創設時には、その要件の1つとして「所得税逋脱ノ目的」(73条の3)を定め、それが昭和15年法人税法制定時に「法人税逋脱ノ目的」(28条)とされ、これが昭和22年法人税法全文改正では「法人税の負担を免れる目的」(34条)とされたが、昭和25年法人税法によって「法人税の負担を不当に減少させる結果」(31条の2)という現行法(132条1項)と同じ文言による要件で定められた。
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