公開日: 2023/11/16 (掲載号:No.544)
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〈令和5年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第1回】「令和5年分の年末調整に影響する改正事項」~控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し等~

筆者: 篠藤 敦子

〈令和5年分〉

おさえておきたい

年末調整のポイント

【第1回】

「令和5年分の年末調整に影響する改正事項」

~控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し等~

 

公認会計士・税理士 篠藤 敦子

 

11月に入り、今年も年末調整に向けた準備を始める時期となった。
今回から3回シリーズで、年末調整における実務上の注意点やポイント等を解説する。

令和5年分の年末調整に影響する改正事項としては、「控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し」がある。また、令和5年分以後の扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」部分には、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が追加されている。

第1回(本稿)では、上記2点について取り上げる。

なお、本年分の記事に加え、論末の連載目次に掲載された過去の拙稿もご参照いただきたい。

(※) 本稿では、年末調整で使用する各申告書等を次のとおり表記する。

・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等申告書

・給与所得者の保険料控除申告書
保険料控除申告書

・給与所得者の基礎控除申告書
基礎控除申告書

・給与所得者の配偶者控除等申告書
配偶者控除等申告書

・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除申告書

・給与所得に対する源泉徴収簿
源泉徴収簿

・給与所得の源泉徴収票
源泉徴収票

 

【1】 控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し

令和2年度税制改正により、令和5年分の所得税から扶養控除の対象となる国外居住親族の範囲に見直しが行われた。

見直しの詳細については、下記拙稿をご参照いただきたい。

年末調整時には、控除対象扶養親族として申告を受けている国外居住親族について、「生計を一にする事実」欄に、令和5年中にその親族に送金等をした金額の合計額を記載してもらう必要がある(所法194⑤)。

また、送金関係書類(その国外居住親族が、所得者から令和5年中に生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人に該当するものとして扶養控除の適用を受ける場合には、38万円送金書類)の提出又は提示を受け、送金額の確認を行う(所法194⑥)。

〈年末調整時の確認資料〉

(例) 控除対象扶養親族として申告している米国に居住する20歳の子(所得なし)に対して、令和5年中に500,000円送金している場合

※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。

なお、上記の見直しを受け、令和5年分以降の源泉徴収票の控除対象扶養親族の「区分」欄には、次の記載をすることとされた。

(※) 国税庁ホームページより抜粋

 

【2】 「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄の追加

令和5年分の扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」部分に、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が追加された。

当該欄が追加された背景や各項目の記載方法については、下記拙稿をご参照いただきたい。

例えば、令和5年中に次の収入(すべて国内におけるもの)がある37歳の親族(配偶者以外)のケースを考えてみる。

(例) 親族の収入:給与収入100万円、退職金700万円(勤続年数15年)

この親族は、所得税(令和5年分)では、合計所得金額が95万円(給与所得45万円+退職所得50万円)となるため控除対象扶養親族に該当しないが、住民税(令和6年分)では、合計所得金額が45万円(給与所得のみ)となり控除対象扶養親族に該当する(所法2①三十イ(2)、地方税法23①十三、50の2、292①十三、328)。

本ケースの場合、扶養控除等申告書の記載は次のとおりとなる。

※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。

*  *  *

次回(第2回)は、年末調整で提出を受ける各種申告書について、所得金額面からのチェックポイントを解説する予定である。

【関連記事】

〈令和4年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和3年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和2年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和元年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

(注) 上記の記事については、掲載後の税制改正等により、解説内容が現在の規定に基づくものとは異なるケースがある。過年度の記事内に順次コメントを入れるので留意していただきたい。

〔凡例〕
所法・・・所得税法

(了)

次回は11/22に公開予定です。

  

〈令和5年分〉

おさえておきたい

年末調整のポイント

【第1回】

「令和5年分の年末調整に影響する改正事項」

~控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し等~

 

公認会計士・税理士 篠藤 敦子

 

11月に入り、今年も年末調整に向けた準備を始める時期となった。
今回から3回シリーズで、年末調整における実務上の注意点やポイント等を解説する。

令和5年分の年末調整に影響する改正事項としては、「控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し」がある。また、令和5年分以後の扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」部分には、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が追加されている。

第1回(本稿)では、上記2点について取り上げる。

なお、本年分の記事に加え、論末の連載目次に掲載された過去の拙稿もご参照いただきたい。

(※) 本稿では、年末調整で使用する各申告書等を次のとおり表記する。

・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等申告書

・給与所得者の保険料控除申告書
保険料控除申告書

・給与所得者の基礎控除申告書
基礎控除申告書

・給与所得者の配偶者控除等申告書
配偶者控除等申告書

・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除申告書

・給与所得に対する源泉徴収簿
源泉徴収簿

・給与所得の源泉徴収票
源泉徴収票

 

【1】 控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し

令和2年度税制改正により、令和5年分の所得税から扶養控除の対象となる国外居住親族の範囲に見直しが行われた。

見直しの詳細については、下記拙稿をご参照いただきたい。

年末調整時には、控除対象扶養親族として申告を受けている国外居住親族について、「生計を一にする事実」欄に、令和5年中にその親族に送金等をした金額の合計額を記載してもらう必要がある(所法194⑤)。

また、送金関係書類(その国外居住親族が、所得者から令和5年中に生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人に該当するものとして扶養控除の適用を受ける場合には、38万円送金書類)の提出又は提示を受け、送金額の確認を行う(所法194⑥)。

〈年末調整時の確認資料〉

(例) 控除対象扶養親族として申告している米国に居住する20歳の子(所得なし)に対して、令和5年中に500,000円送金している場合

※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。

なお、上記の見直しを受け、令和5年分以降の源泉徴収票の控除対象扶養親族の「区分」欄には、次の記載をすることとされた。

(※) 国税庁ホームページより抜粋

 

【2】 「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄の追加

令和5年分の扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」部分に、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が追加された。

当該欄が追加された背景や各項目の記載方法については、下記拙稿をご参照いただきたい。

例えば、令和5年中に次の収入(すべて国内におけるもの)がある37歳の親族(配偶者以外)のケースを考えてみる。

(例) 親族の収入:給与収入100万円、退職金700万円(勤続年数15年)

この親族は、所得税(令和5年分)では、合計所得金額が95万円(給与所得45万円+退職所得50万円)となるため控除対象扶養親族に該当しないが、住民税(令和6年分)では、合計所得金額が45万円(給与所得のみ)となり控除対象扶養親族に該当する(所法2①三十イ(2)、地方税法23①十三、50の2、292①十三、328)。

本ケースの場合、扶養控除等申告書の記載は次のとおりとなる。

※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。

*  *  *

次回(第2回)は、年末調整で提出を受ける各種申告書について、所得金額面からのチェックポイントを解説する予定である。

【関連記事】

〈令和4年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和3年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和2年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和元年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

(注) 上記の記事については、掲載後の税制改正等により、解説内容が現在の規定に基づくものとは異なるケースがある。過年度の記事内に順次コメントを入れるので留意していただきたい。

〔凡例〕
所法・・・所得税法

(了)

次回は11/22に公開予定です。

  

連載目次

〈おさえておきたい年末調整のポイント〉

「〈令和7年分〉おさえておきたい年末調整のポイント」

「〈令和2年分〉おさえておきたい年末調整のポイント」

「〈平成27年分〉おさえておきたい年末調整のポイント」(全3回)

「〈平成24年分〉おさえておきたい年末調整のポイント」(全2回)

筆者紹介

篠藤 敦子

(しのとう・あつこ)

公認会計士・税理士

津田塾大学卒業
1989年 公認会計士試験第二次試験合格
1994年 朝日監査法人(現 あずさ監査法人)退社後、個人事務所を開業し、会計と税務実務に従事。
2008年より甲南大学社会科学研究科会計専門職専攻教授(2016年3月まで)
2010年より大阪電気通信大学金融経済学部非常勤講師

【著書等】
・『マンガと図解/新・くらしの税金百科』共著(清文社)
・『会計学実践講義』共著
・『日商簿記1級徹底対策ドリル 商業簿記・会計学編』共著(以上、同文舘出版)
・『148の事例から見た是否認事項の判断ポイント』共著(税務経理協会)
・「不動産取引を行った場合」『税経通信』2012年3月号(103-109頁)

【過去に担当した研修、セミナー】
SMBCコンサルティング、日本経済新聞社、日本賃金研究センター
社団法人大阪府工業協会、西日本旅客鉄道株式会社、社団法人埼玉県経営者協会
大阪法務局

関連書籍

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公益財団法人 納税協会連合会 編集部 編

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