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[無料公開中]〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第1回】「CFOのみなし役員該当性」

筆者:中尾 隼大

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〈ポイント解説〉

役員報酬税務

【第1回】

「CFOのみなし役員該当性」

 

税理士 中尾 隼大

 

【 質 問 】

当社は財務部門の強化、そして将来的なIPOまで見込み、外部から実績のあるCFO(最高財務責任者)を招へいすることとなりました。

当該CFOは、取締役としての役員登記はしませんが、金融機関等との交渉で資金調達を一手に担い、成果を出すことを期待していますし、社長は自身の「右腕」として、経営判断について財務的な観点から加わってもらいたいと言っています。また、重要クライアントとの交渉にも参加してもらう予定です。報酬は年棒制ですが、貢献度に応じてインセンティブを与える計画です。

この場合、法人税法上、何か留意する点はありますか。

【 回 答 】

法人税法上は、「みなし役員」に該当すれば、一般的な「役員」としての取扱いを受け、支給する給与は役員報酬として定期同額給与などの規定が適用されます(法法34)。

今回のご質問の場合、当該CFOが社長の「右腕」として経営判断に貢献しているため、みなし役員とされる可能性が高まると考えられます。したがって、インセンティブの支給方法等に留意する必要があるでしょう。

○●○● 解 説 ●○●○

CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)、そしてCFO等という肩書は、最近特に散見され、中小企業においても浸透しつつあるようである。これらは、会社法上に法定される存在ではなく、元々は米国の業務執行役員制度に端を発し、日本の企業が取り入れ始めた制度であるといわれている。

ところで、法人税法上における役員は、

法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者(下線部筆者)

とされており(法法2十五)、会社法上の役員より広範に設計されていることは周知の通りである。このうち下線部分に該当すれば、法人の意思決定に影響を与えることが可能な立場にあるとされ、これがいわゆる「みなし役員」と取り扱われる根拠である。

みなし役員に該当すれば形式的な役員と同様、法人税法34条の規定の適用を受けることとなり、定期同額給与等の規定が適用されるため、留意する必要があるだろう。

この「法人の経営に従事している」の具体的な判断は、法人の使用人以外の者のうち(法令7一)(※1)、以下のような者が該当するとされている(法基通9-2-1)。

(※1) 使用人であっても、同族会社の使用人であれば、持株割合による判定が別途あることを念のため申し添える(法令7二)。

 取締役、理事になっていない総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、副理事長、組合長等の表面的な役員

 合同会社の業務執行役員

 人格のない社団等における代表者若しくは管理人

 法定役員ではないが定款等で役員とされるもの

 相談役、顧問その他これらに類する者で、その法人内における地位、職務等からみて実質的にその法人の経営に従事していると認められるもの

上記のうち、本件の前提であるCFOに関しては、「実質的に法人経営に従事している」という条件に該当すれば「みなし役員」とされるが、事実認定や実態に即して判断されるため事前の判断が難しく、判然としていないのが実態であると思われる。

この点、に該当するか否かの判断基準について、以下のように説く見解がある(※2)

(※2) 山本守之『判決・裁決例から見た役員報酬・賞与・退職金(四訂版)』(税務経理協会、1999)12頁。

(1) 取締役会等に出席して事業計画の策定や経営に関する重要案件の決定に参画しているかどうか

(2) 社員の採用権等、人事及び給与に関する権限を有しているかどうか

(3) 主要な取引先の選定及び重要な契約に関する決定権を有しているかどうか

(4) 金融機関の選択、融資等の重要な資金計画に関する決定権を有しているかどうか

本件で問われたCFOが上記(1)(4)に該当するか否かの判断については、CFOは単なる経理責任者ではなく、事業計画を作成して資金調達を行ったり、証券会社や監査法人等との折衝によってIPOに備えたり、何より事実上、社長の「右腕」として経営判断に深く関わるのであれば、みなし役員とされる可能性は十分高いと考えられる。

みなし役員該当性を争点とした事例は国税不服審判所の裁決例に特に多く見られるが、審査請求や訴訟まで発展せず、税務調査段階で終了しているケースも相当数あると思われる。経営形態が多岐にわたる中小企業にとって、事前の慎重な判断のために今後の議論の発展や法による明示が望まれるところではあるが、経営形態が多種多様であるからこそ、判断基準が未だ判然としていないのが実情であろう。

このような現状を踏まえた実務上の対処としては、本件のCFOのようにみなし役員の対象となり得る存在をリストアップすると同時に、その業務内容や権限を明らかにしておくことが肝要であると思われる。その上で、その存在が日々どのような業務を行っているかを説明できるエビデンスを備え、当該対象者と他の従業員に諸条件の線引きがあれば明示し、納税者としてみなし役員該当・非該当の判断について論拠を整理しておくことで、税務上のリスクを事前に軽減することが可能であると考える。

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
法規・・・法人税法施行規則
法基通・・・法人税基本通達
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
措規・・・租税特別措置法施行規則
措通・・・租税特別措置法関係通達
(例)法法34①一・・・法人税法34条1項1号

(了)

「〈ポイント解説〉役員報酬の税務」は、毎月第3週に掲載されます。

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筆者紹介

  • 中尾 隼大

    (なかお・しゅんた)

    税理士
    税理士法人中尾総合事務所 所長
    https://www.nakao-tax.com

    中国税理士会税務研究所 研究員

    平成22年 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(現:PwC税理士法人)入所
    平成24年 税理士登録
    平成25年 税理士法人中尾総合事務所設立 現在に至る

    【著作・論文】
    「一般社団法人を利用した租税回避スキームに関する試論」第40回 日税研究賞 税理士の部 入選
    「これで万全!!2019年10月 消費増税・軽減税率対策 転嫁・インボイスはこう進める」共著(ぎょうせい・2019)
    「個人版事業承継税制のポイントと有利判定シミュレーション」共著(日本法令・2019)

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