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[無料公開中]〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第9回】「役員に対する経済的利益の供与」

筆者:中尾 隼大

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〈ポイント解説〉

役員報酬税務

【第9回】

「役員に対する経済的利益の供与」

 

税理士 中尾 隼大

 

【 質 問 】

当社は、役員に対し、金銭による役員報酬の他に、経済的利益の供与と言える支給があります。具体的には、法人が所有する不動産を役員に対して相場より安価で提供しています。また、この不動産を低廉価格で役員に譲渡することも検討しています。

これらについて問題点はないか教えてください。

【 回 答 】

低廉による不動産の貸付等、役員に対して継続的に毎月おおむね一定額が供与される経済的利益は、定期同額給与に該当します。この場合、不相当高額給与の形式基準は、経済的利益部分を含めて判断されるため、株主総会等による支給限度額を設定する際、当該経済的利益部分も含める必要があります。

また、役員への低廉譲渡を予定していた場合、仮に株主総会等で決議を行い、事前に確定した旨のエビデンスを残していたとしても、事前確定届出給与による損金算入はできません。

○●○● 解 説 ●○●○

(1) 経済的利益の概要

役員に対する給与は金銭により支給されることが一般的であるが、「債務の免除による利益その他の経済的な利益」もこの「給与」に含まれるため(法法34④)、定期同額給与等の諸規制を受けることとなる。

役員に対しての給与とされる経済的利益は、具体的例示として法基通9-2-9に定められているところであるが、所得税法上、経済的な利益として課税されない程度のものであり、かつ、当該法人がその役員等に対する給与として経理しなかった場合には、給与とはされない(同通達9-2-10)。すなわち、法人の選択により法人税法上の取扱いが変わることを意味するため、留意が必要となる。

今回の事例では、役員に不動産を低額で提供しており、今後、低廉価格で譲渡することを予定しているとのことであるが、これらはどちらも経済的利益となる。

例えば、税務上の時価1,000万円の不動産を役員に対して600万円で譲渡した場合、差額の400万円が損金不算入となり、同時に源泉徴収義務が発生することとなる。

 

(2) 毎月おおむね一定額の経済的利益の場合

上記のように、役員に対する経済的利益は法人税法上の「給与」として取り扱われる。このうち、継続的に供与され、経済的利益の額が毎月おおむね一定である場合は定期同額給与に該当し(法令69①二)、改めて損金算入の可否判断がなされることとなる。

本事例のように、役員に不動産を低額で提供している場合は通常これに該当し、この他にも保険料負担や利息支払いなどが該当する。特に、法人が年払いによりこれらを支払う場合でも、役員にとっては毎月定額のベネフィットを受ける実態があるため、「毎月おおむね一定」であるとされる。翻せば、法人側の費用の支出時期では判断されないこととなる(※)

(※) 佐藤友一郎編著『法人税基本通達逐条解説 九訂版』(税務研究会出版局、2019)823頁。

ここで、会社法361条1項3号では、「報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法」を株主総会の決議によって定めるとされている。この意味は、金銭以外の経済的利益の供与についても株主総会で定めておくことが求められているということである。なお、このような議案を株主総会に提出した取締役は、当該事項を相当とする理由を説明しなければならないとも示されている(会社法361④)。

上記の会社法の定めは、役員に対する不相当高額給与該当性の判断に影響する。すなわち、本連載の【第3回】で触れた形式基準による不相当高額給与の判定も行われることとなるため、役員に対して経済的利益の供与を行う場合、経済的利益の算定方法やその金額についても株主総会等で決議しておく必要があることに留意すべきである。

 

(3) 事前確定届出給与の適用可否

それでは、役員に対する経済的利益の供与が事前に確定していたとして、事前確定届出給与の制度を適用し、本事例で予定するような低廉譲渡によって損金算入することはできるのだろうか。

事前確定届出給与は、所定の時期に確定額を支給する定めに基づく給与に限られていた。ここで、現在は削除されている旧・法基通9-2-15では、確定額の意義として現物資産による提供などは「確定額」に含まれず、事前確定届出給与に該当しない旨が示されていた。すなわち、旧来から現物資産による経済的利益の供与は事前確定届出給与が適用できないと解されており、現物給与など経済的利益の供与による給与は変動するものであるため、事前に確定しているとは言えないためであると一般に説かれてきた。

上記の通り、現在では当該通達が削除されているが、この理由は平成29年度税制改正にある。すなわち、事前確定届出給与については、確定した額の金銭、確定した数の株式等、又は確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で一定の要件を満たすものに限られるとされ(法法34①二)、事前確定届出給与の対象は、これら3類型のみである旨が明確化されたためである。

したがって、上記3類型以外の支給は事前確定届出給与が適用できないという整理となり、役員への低廉譲渡を予定していたからといって、事前確定届出給与に関する届出書を提出しておけば損金算入される、というものではない点は、以前と変わりないことは確認しておきたい。

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
法規・・・法人税法施行規則
法基通・・・法人税基本通達
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
措規・・・租税特別措置法施行規則
措通・・・租税特別措置法関係通達
所令・・・所得税法施行令
(例)法法34①一・・・法人税法34条1項1号

(了)

次回の「〈ポイント解説〉役員報酬の税務」は、2020年1月23日に掲載します。

連載目次

〈ポイント解説〉

役員報酬の税務

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筆者紹介

  • 中尾 隼大

    (なかお・しゅんた)

    税理士
    税理士法人中尾総合事務所 所長
    https://www.nakao-tax.com

    中国税理士会税務研究所 研究員

    平成22年 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(現:PwC税理士法人)入所
    平成24年 税理士登録
    平成25年 税理士法人中尾総合事務所設立 現在に至る

    【著作・論文】
    「一般社団法人を利用した租税回避スキームに関する試論」第40回 日税研究賞 税理士の部 入選
    「これで万全!!2019年10月 消費増税・軽減税率対策 転嫁・インボイスはこう進める」共著(ぎょうせい・2019)
    「個人版事業承継税制のポイントと有利判定シミュレーション」共著(日本法令・2019)
    「ワークフロー式消費税[軽減税率]申告書作成の実務」共著(日本法令・2020)

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