公開日: 2020/10/29 (掲載号:No.392)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第52回】「パフォーマンス・シェア・ユニットの会計処理」

筆者: 西田 友洋

【STEP1】業績評価期間の会計処理

【STEP1】では、以下の会計処理について検討する。

(1) 株主総会における導入の決議及び取締役会における具体的な報酬の算定方法の決議(株主総会から委任されたものの決議)時点の会計処理

(2) 導入後の業績評価期間の各期末日における会計処理

(1) 株主総会及び取締役会決議日時点

決議時点では、株式や新株予約権の発行がなく、また、何らかの義務が生じていないことから、会計処理は必要ないと考えられる(研究報告Ⅵ6.(3)①ア)。

(2) 業績評価期間中の各期末日(四半期決算日を含む)

パフォーマンス・シェア・ユニットでは、労働等の役務の提供を受ける企業が、事前に定められた条件(業績の達成度合いに連動する株式数の決定方法)に従い、事後的に役員等に金銭債権等を付与し、当該金銭債権等の現物出資を受ける。

当該金銭債権等は、業績評価期間の役務に対応する形で事後的に付与されるため、パフォーマンス・シェア・ユニット導入時から株式交付時点までに係る役員等からの役務提供について、業績評価期間にわたり株式報酬費用等及び対応する負債(引当金)を計上することが考えられる(研究報告Ⅵ6.(3)①イ)。

また、株式報酬費用等の金額の算定方法であるが、当初決議時点において、業績目標の達成度合いごとに「株数」を決定する場合では、業績目標の達成度合いだけでなく、株価の変動によっても交付される株式の時価総額が異なる。この場合、最終的な金銭債権等の金額は、「業績評価期間の末日等の株価 × 株数(業績目標の達成度合いにより変動)」という算式で決定され、業績評価期間の経過期間に応じて義務が生じていると考えられる。そのため、費用計上額も毎期末の時価(株価)により算定していくことになると考えられる。

具体的には、事業年度をまたいで業績評価期間が設定されている場合に、各期末の費用計上累計額は以下のとおり算定され、前期末時点での費用計上累計額との差額が当期に費用計上される(研究報告Ⅵ6.(3)②)。

期末の株価 × 期末時点の業績目標の達成可能性を考慮した株数 ×(経過月数 ÷ 業績評価期間)

なお、業績目標の達成見込みは、条件と業績目標の達成可能性を勘案し、期待値法又は最頻値法などの方法の中から、適切と考えられる方法を用いて、金額を算定することが考えられる(研究報告Ⅵ6.(3)②)。

 

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第52回】

「パフォーマンス・シェア・ユニットの会計処理」

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

「パフォーマンス・シェア」とは、中長期の業績目標の達成度合いに応じて交付される株式による報酬のことである。パフォーマンス・シェアの導入方法としては、以下の2つの方法がある。

➤ 初年度発行-業績連動譲渡制限解除型

➤ 業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)

「初年度発行-業績連動譲渡制限解除型」とは、譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)の譲渡制限解除の条件に業績等条件を課すものである。これは、平成29年度税制改正により、税務上損金算入が認められないことになったため、今後、導入する企業は多くないと考えられる。

「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」とは、初年度に役員等に対して業績等に連動する金銭債権等を付与することを決定し、その後、一定の業績等連動期間後に実際に付与された金銭債権等を現物出資財産として払い込みをしてもらい、株式を発行するものである。平成29年度税制改正により、一定の要件を満たす場合には、税務上損金算入が認められることとなった。

「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」は、業績条件の達成度合いに応じて株式数が変動するため、「初年度発行-業績連動譲渡制限解除型」よりもインセンティブ効果が高いと考えられる。

今後、企業が導入する場合は、「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」が多いと考えられることから、本解説では、「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」を前提に解説する。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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