公開日: 2021/04/28 (掲載号:No.417)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第55回】「会計上の見積り開示」

筆者: 西田 友洋

【STEP1】開示目的の理解

見積基準では、会計上の見積りの注記の内容は、見積基準に定められている「開示目的」に照らして判断するため、まず、「開示目的」を理解する必要がある(見積基準4、7)。

会計上の見積りは、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的な金額を算出するが、以下の特徴により、財務諸表に計上する金額の不確実性の程度も様々となる。

✓ 財務諸表に計上する金額に係る見積り方法が様々

✓ 見積りの基礎情報が財務諸表作成時にどの程度入手可能であるかは様々

したがって、財務諸表の計上金額のみでは、当該金額が含まれる項目が翌年度の財務諸表に影響を及ぼす可能性があるかどうかを財務諸表利用者が理解することは困難である。

このため、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスク(有利となる場合及び不利となる場合の双方が含まれる)がある項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを目的とする

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第55回】

「会計上の見積り開示」

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

ASBJより2020年3月31日に「見積りの不確実性の発生要因」に係る注記情報の充実を目的として、企業会計基準第31項「会計上の見積りの開示に関する会計基準(以下、「見積基準」という)」が公表された。

適用時期は、以下のとおりである(見積基準10)。

〔原則〕

2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る(連結)財務諸表から適用する。

〔容認〕

公表日以後終了する事業年度の年度末に係る(連結)財務諸表から適用できる。

また、適用初年度の取扱いは、以下のとおりである(見積基準11)。

➤適用初年度において、見積基準の適用は表示方法の変更として取り扱う。

➤ただし、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第14項の定め(表示方法の変更による組替え)にかかわらず、見積基準に定める注記事項について、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができる

上記のとおり、見積基準は、2021年3月期から適用される。また、有価証券報告書のみならず、計算書類においても注記が必要となるため、上場会社のみならず、非上場会社においても対応が必要となる。そのため、今回は、この見積基準について解説する。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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