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【STEP4】親会社による100%子会社の吸収合併
非支配株主がいない子会社を吸収合併する場合、言い換えると100%子会社を吸収合併する場合、親会社では以下の順に検討する。
(1) 子会社の資産及び負債の引き継ぎ
(2) 株主資本項目以外の純資産項目の引き継ぎ
(3) 株主資本項目の会計処理
(1) 子会社の資産及び負債の引き継ぎ
【STEP1】で算定した子会社の資産及び負債を引き継ぐ(適用指針206(1))
(2) 株主資本項目以外の純資産項目の引き継ぎ
【STEP1】で算定した子会社の合併期日の前日の評価・換算差額等(親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く)及び新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぐ。評価・換算差額等を連結財務諸表の帳簿価額で引き継ぐ場合、子会社のその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金の適正な帳簿価額のうち、支配獲得後に子会社が計上したものを引き継ぐ(適用指針206(2)②)。
(3) 株主資本項目の会計処理
上記(1)及び(2)の合計額と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額との差額を、「抱合せ株式消滅差益」等の勘定科目で特別損益に計上する(適用指針206(2)①ア)。
「抱合せ株式消滅差益」
=上記(1)及び(2)の合計額 - 抱合せ株式(子会社株式)
この差額は、株主との資本取引ではなく、子会社を通して実現した事業投資の成果であるために、損益として計上する。
この後は、【STEP5】を検討する。
【合併による繰延税金資産の回収可能性の判断】(再掲)
繰延税金資産の回収可能性は、合併存続会社の収益力に基づく課税所得の十分性等により判断し、企業結合による影響は、企業結合年度から反映させる。
将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を過去の業績等に基づいて判断する場合には、企業結合年度以後、合併消滅会社に係る過年度の業績等を合併存続会社に係るものと合算した上で課税所得を見積る(適用指針75)。
したがって、企業結合年度前に合併の方針が決まっていたとしても、合併による課税所得の増減の影響は、企業結合年度以後から反映させることになる。
《設例2》
【前提条件】
- 親会社A社は子会社B社の100%の株式を保有している(支配獲得時から持分比率は変動していない)。
- 親会社A社は連結財務諸表を作成していない。
- 親会社A社の当期末の貸借対照表は以下のとおりである。
- 子会社B社の当期末の貸借対照表は以下のとおりである。
- 当期末に親会社A社は子会社B社を吸収合併する。
- 連結財務諸表上の帳簿価額を合理的に算定することが困難と認められるため、合併にあたっては、子会社の適正な帳簿価額を引き継ぐ。
【会計処理】
(※1) 子会社の帳簿価額
(※2) A社保有株式の帳簿価額
(※3) 差額
合併後のA社の貸借対照表