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【STEP1】株式交換完全親会社の個別財務諸表上の会計処理
他の会社の子会社及び関連会社ではないX社が、X社株式を支払対価として、他の会社の子会社及び関連会社ではないY社株式を株式交換により取得した場合、X社は株式交換完全親会社となり、取得の会計処理を行う(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「指針」という)」110)。Y社は、株式交換完全子会社となる。
(1) 株式交換完全子会社株式の取得原価の算定
① 新株を発行する場合
新株を発行する場合、株式交換完全子会社株式の取得原価は、株式交換完全親会社が交付する株式の時価(株式交換日の株価)で算定する(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準基準(以下、「基準」という)」23、指針37、38)。
② 条件付取得対価の場合
(ⅰ) 将来の業績に依存する場合
条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合(※1)、対価を追加的に交付する又は引き渡すときには、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識する。そして、のれんを追加的に認識するか、又は負ののれんを減額する(※2)。
また、条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合(※1)で、対価の一部が返還されるときには、条件付取得対価の返還が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、返還される対価の金額を取得原価から減額する。そして、のれんを減額するか、又は負ののれんを追加的に認識する(基準27(1))(※2)。
(※1) 「条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合」とは、被取得企業又は取得した事業の企業結合契約締結後の特定事業年度における業績の水準に応じて、取得企業が対価を追加で交付する若しくは引き渡す又は対価の一部の返還を受ける条項がある場合等をいう(基準(注3))。
(※2) 追加的に認識又は減額するのれん又は負ののれんは、「企業結合日」時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は当期の損益に計上する(基準(注4))。
(ⅱ) 特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合
条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合(※3)、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、以下の会計処理を行う(基準27(2))。
① 追加で交付可能となった条件付取得対価を、その時点の時価に基づき認識する。
② 企業結合日現在で交付している株式又は社債をその時点の時価に修正し、当該修正により生じた社債プレミアムの減少額又はディスカウントの増加額を将来にわたって規則的に償却する。
(※3) 「条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合」とは、特定の株式又は社債の特定の日又は期間の市場価格に応じて当初合意した価額に維持するために、取得企業が追加で株式又は社債を交付する条項がある場合等をいう(基準(注5))。
【新株予約権を交付する場合又は新株予約権付社債を承継する場合】
株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式交換完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、当該新株予約権又は新株予約権付社債の時価を子会社株式の取得原価に加算し、同額を新株予約権又は新株予約権付社債として純資産又は負債に計上する(指針110-2)。
【取得関連費用の会計処理】
連結財務諸表上、取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、発生した事業年度の費用(販売費及び一般管理費)として処理する(基準26)。個別財務諸表上は、取得関連費用は、株式交換完全子会社株式の取得原価に含めて会計処理する(指針110)。
(2) 株主資本の会計処理
① 新株を発行する場合
株式交換完全親会社が新株を発行した場合には、払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として会計処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社計算規則39条2項に従い、株式交換契約で定めた金額に基づき決定する(指針111)。
② 自己株式を処分する場合
株式交換完全親会社が自己株式を処分した場合には、増加すべき株主資本の額(自己株式の処分の対価の額。新株の発行と自己株式の処分を同時に行った場合には、新株の発行と自己株式の処分の対価の額)から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加(当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金の減少)として会計処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社計算規則39条2項に従い、株式交換契約で定めた金額に基づき決定する(指針112)。
③ 自社の株式以外の財産を交付する場合
株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の株主に対して、株式交換完全親会社の株式以外の財産を交付する場合には、当該交付した財産の時価と企業結合日の前日における適正な帳簿価額との差額を株式交換日において、株式交換完全親会社の損益に計上する(指針113)。
なお、株式交換完全親会社の株主は、株式交換により取引は発生していないため、会計処理は不要である。