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【STEP10】連結財務諸表/会計処理
連結財務諸表における税効果会計の会計処理について検討する。ただし、会計処理自体は上記【STEP5】の(1)及び(2)と同様である。
(1) 繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係る税効果を除く)の計上又は取り崩し
繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係るものを除く)の増減額を「法人税等調整額」を相手勘定科目として計上する(個別指針2)。会計処理は【STEP5】と同様である。
(2) 直接純資産の部に計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果の計上又は取り崩し- その他有価証券評価差額金の場合
会計処理は【STEP5】と同様である。
(3) 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺
同一納税主体ごとに繰延税金資産と流動負債の繰延税金負債を相殺して表示する。(連結指針42)。
そのため、連結納税における法人税は同一の納税主体であるため、親会社及び子会社の法人税に係る繰延税金資産と繰延税金負債を、流動項目と固定項目ごとに、相殺して表示する(実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」Q17)。
一方、地方税に係る繰延税金資産と繰延税金負債は、各連結納税会社=納税主体となるため親会社と子会社、子会社間で相殺することはできない。
また、税効果会計においては、以下の注記が必要である(連結財務諸表規則15条の5)。
① 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳(評価性引当額を含む)
② 税金等調整前当期純利益に対する法人税等及び法人税等調整額の合計額の比率(税効果会計適用後の法人税等の負担率)と法定実効税率との間に重要な差異があるときは、その差異の原因となった主要な項目別の内訳
(※) 法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との間の差異が法定実効税率の100分の5以下の場合は不要。
③ 税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨及び修正額
④ 決算日後に税率の変更があった場合には、その内容及びその影響
連結納税親会社の個別財務諸表における法人税に係る繰延税金資産の計上額が、連結財務諸表の繰延税金資産の計上額を大幅に上回る場合で、その上回る金額に重要性がある場合には、連結納税親会社の個別財務諸表に追加情報の注記が必要である(実報7号Q4)。
なお、連結計算書類では上記のような注記は必ずしも求められていない。
《設例2》
A社グループは連結納税制度を当期末から採用した(承認手続の開始及び承認日は当期に属する)。A社グループの会社は以下の2社である(前期末は単体納税である)。
・連結納税会社(親会社)A社 企業分類「2」
・連結納税会社(子会社)B社 企業分類「4」だけど「3」
・連結納税主体 企業分類「3」
また、B社及び連結納税主体の一時差異等加減算前課税所得の見積り期間は5年とする。
連結財務諸表における会計処理を検討する。
(1) 法定実効税率は以下のとおりである。
(2) 一時差異は以下のとおりである。なお、連結財務諸表固有の一時差異はない。
(3) 個別財務諸表及び連結財務諸表における繰延税金資産の計上額は以下のとおりである。
※小数点以下は四捨五入(必要に応じて数値の調整あり)
※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。
(4) 連結修正及び繰延税金資産・法人税等調整額の金額は以下のとおりである。
* * *
以上、10のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。
※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。
▷個別財務諸表
▷連結財務諸表
【参考】
- 実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」(ASBJ)
- 実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」(ASBJ)
(了)
「フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 」は、毎月最終週に掲載されます。