公開日: 2017/08/31 (掲載号:No.233)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第37回】「連結納税における税効果会計(回収指針対応版)」

筆者: 西田 友洋

【STEP9】連結財務諸表/回収可能性の検討

連結貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定する。しかし、未実現損益の消去に係る一時差異については、その検討方法が異なる。

そのため、納税会社ごとに未実現利益に係る一時差異とそれ以外の一時差異に分けて回収可能性を検討する必要がある。
また、連結納税のため、法人税部分と地方税部分にも分けて検討する必要がある。

(1) 未実現利益の消去以外の一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の検討

(2) 未実現損益の消去に係る一時差異における繰延税金資産及び繰延税金負債の検討

(1) 未実現利益の消去以外の一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の検討

未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産(法人税部分及び地方税部分)について、その全額を貸借対照表に計上できるわけではなく、将来の課税所得(税金)を減少させる部分しか連結貸借対照表に計上できない。そこで、連結貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定するために、未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産と個別財務諸表上の繰延税金資産を合算し、「繰延税金資産の回収可能性」を検討する(連結指針41)。

具体的には、以下のの検討が必要である。

① 企業分類の決定

② 回収可能性の検討

(ⅰ) 一時差異等の解消のスケジューリング

(ⅱ) 法人税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討

(ⅲ) 地方税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討

③ 支払可能性の検討

① 企業分類の決定

法人税部分の将来減算一時差異及び非特定連結欠損金個別帰属額における連結財務諸表の企業分類の決定は個別財務諸表と異なる。

(ⅰ) 将来減算一時差異(法人税部分)

将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性を判断する場合、連結所得で回収可能性が決まるため、連結納税主体の企業分類を用いる

(ⅱ) 特定連結欠損金個別帰属額(法人税部分)

個別財務諸表と同様に連結納税主体と連結納税会社の例示区分のうち、より下位の例示区分を用いる

(ⅲ) 非特定連結欠損金個別帰属額(法人税部分)

非特定連結欠損金個別帰属額も連結所得と相殺されることで解消するため、連結納税主体の企業分類を用いる

(ⅳ) 地方税部分

個別財務諸表と同様に連結納税会社の企業分類をそのまま用いる。

以上の(ⅰ)から(ⅳ)をまとめると以下のとおりとなる。

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

② 回収可能性の検討

(ⅰ) 一時差異等の解消のスケジューリング

上記【STEP4】(2)①と同様である。

(ⅱ) 法人税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討

連結財務諸表における法人税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討は、【STEP4】(2)②と基本的に同様だが、連結財務諸表では個別所得ではなく、連結所得をベースに回収可能性を検討するため、個別財務諸表における回収可能額が連結所得に基づいた回収可能額を超える場合がある。この場合、当該超過額に相当する繰延税金資産(=当該超過額×法人税の法定実効税率を乗じた金額)を修正する必要がある。

また、将来減算一時差異(法人税部分)は、連結納税主体の企業分類を用いるため、個別財務諸表と企業分類が異なることにより繰延税金資産を修正する場合がある。例えば、連結納税会社の企業分類が「2」で連結納税主体の企業分類が「3」(一時差異等加減算前課税所得の見積り期間は5年としている)の場合、将来減算一時差異(法人税部分)は個別財務諸表ではスケジューリング可能な一時差異等は全額繰延税金資産計上可能だが、連結財務諸表では、連結ベースの一時差異等加減算前課税所得の5年分を限度にしか繰延税金資産を計上できない。そのため修正が必要となる場合がある。

なお、非特定繰越欠損金個別帰属額(法人税部分)及び特定繰越欠損金個別帰属額(法人税部分)の企業分類は、連結財務諸表と個別財務諸表で変わりはない。

(ⅲ) 地方税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討

地方税部分は、単体納税のため個別財務諸表で計上した繰延税金資産に連結財務諸表固有の一時差異に係る繰延税金資産を合算して、個別財務諸表と同様に回収可能性を検討する。

③ 支払可能性の検討

繰延税金負債の支払可能性の検討の詳細については、上記【STEP4】参照。

(2) 未実現損益の消去に係る一時差異における繰延税金資産及び繰延税金負債の検討

未実現損益の消去に係る一時差異の税効果も法人税部分と地方税部分に分けて検討する。

未実現利益の消去の場合、法人税部分は、連結ベースの課税所得を限度に繰延税金資産を計上する。地方税部分は単体納税の場合と同様に単体の課税所得を限度に繰延税金資産を計上する。

一方、未実現損失の消去の場合、未実現損失を計上する前の連結ベースの課税所得を限度に繰延税金負債を計上する。地方税部分は単体納税の場合と同様に未実現損失を計上する前の単体の課税所得を限度に繰延税金負債を計上する(実報7号Q7)。

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第37回】

「連結納税における税効果会計(回収指針対応版)」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。今回は「連結納税における税効果会計」について解説する。なお、本解説では3月末決算の会社を前提に解説している。

連結納税における税効果会計は、個別財務諸表から連結財務諸表まで、以下の10のステップに分けることができる。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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