公開日: 2015/05/28 (掲載号:No.121)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第17回】「棚卸資産の評価基準~通常の販売目的で販売する棚卸資産の評価基準~」

筆者: 西田 友洋

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【STEP3】正味売却価額の算定

収益性が低下しているかどうかの判定においては、正味売却価額が必要となる。一方、正味売却価額ではなく、収益性が低下しているかどうかの判定において再調達原価(購買市場の時価に、購入に付随する費用を加算したもの(基準6))を用いることができる場合もある。そのため、まず、正味売却価額を用いるのか、再調達原価を用いるのかを判断する。

(1) 再調達原価の採用の適否

(2) 正味売却価額の算定

※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。

(1) 再調達原価の採用の適否

製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額が当該再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として、再調達原価(最終仕入原価を含む)を用いることができる(基準10)。それ以外の場合は、正味売却価額を用いる。

  • 再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額が当該再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合
    → 再調達原価
  • 上記以外
    → 正味売却価額

再調達原価を用いる場合は、【STEP4】を検討する。正味売却価額を用いる場合は、(2)を検討する。

(2) 正味売却価額の算定

正味売却価額とは、期末における売価から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいう。「売価」は売却市場において市場価格が観察できるかどうかで算定方法が異なる。したがって、正味売却価額は市場価格が観察できるかどうかで算定方法が異なる。

売却市場において市場価格が観察できる場合、正味売却価額とは、期末における売価(売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいう(基準5)。

売却市場において市場価格が観察できない場合、正味売却価額とは、期末における合理的に算定された価額(売価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいう(基準8)。

市場価格の観察の可否	正味売却価額 売却市場において市場価格が観察できる場合	売却市場の時価から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したもの(基準5) 売却市場において市場価格が観察できない場合	合理的に算定された価額から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したもの(基準8) (※)合理的に算定された価額には、以下のものが含まれる。 ・期末前後での販売実績に基づく価額(基準8) ・契約により取り決められた一定の売価(基準8) ・相対取引による価額(基準34) ・販売可能見込価額(基準34)

(注) 期末時点の正味売却価額を把握する場合、突発的な売価変動の影響を受けるおそれがある。しかし、正味売却価額は、本来、将来販売時点の見込みであるため、期末時点の正味売却価額が突発的な要因により、異常な水準となっているときには、期末時点の正味売却価額を用いることが不適切であることは明らかである。このような場合には、期末時点の売価ではなく、期末付近の合理的な期間の平均的な売価に基づく正味売却価額によることが適当である(基準43)。

見積追加製造原価とは、販売までに追加の製造原価が発生する場合の当該見積額をいう。

見積販売直接経費とは、棚卸資産の出荷の輸送費、販売手数料、倉庫料等の販売に直接関連して発生する費用をいう。

(次ページ【STEP4】へ進む)

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第17回】

「棚卸資産の評価基準

~通常の販売目的で販売する棚卸資産の評価基準~」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、棚卸資産の評価について解説する。具体的には、「通常の販売目的で販売する棚卸資産の評価基準」について解説する。

「通常の販売目的で販売する棚卸資産の評価基準」とは、以下のように評価することをいう。

通常の販売目的で販売する棚卸資産は、帳簿価額をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が帳簿価額よりも下落している場合(収益性が低下している場合)には、正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合、帳簿価額と正味売却価額との差額は評価損として計上する(企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準(以下、「基準」という)」7)。

なお、「トレーディング目的で保有する棚卸資産の評価基準」、「販売用不動産等の評価」については、本フロー・チャートでは解説していない。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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