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【STEP6】正常な営業循環過程から外れている棚卸資産の会計処理
正常な営業循環過程から外れている棚卸資産の場合、正常な営業循環過程から外れていない棚卸資産と検討過程が異なる。
(1) 合理的な価額の算定の可否
(2) 合理的な価額を算定できる場合
(3) 合理的な価額を算定できない場合
(1) 合理的な価額の算定の可否
営業循環過程から外れている棚卸資産ということは、廃棄や値引販売が見込まれる棚卸資産であることから、売却市場における市場価格を観察することはできないと考えられる。そのため、収益性の低下を反映するために合理的な価額を算定する必要がある。しかし、その価額を合理的に算定することはできない場合もある。そのため、まず、合理的に価額を算定できるかどうかを判断する。
合理的に価額を算定できる場合は、(2)を検討する。合理的に価額を算定できない場合は、(3)を検討する。
(2) 合理的な価額を算定できる場合
営業循環過程から外れている棚卸資産について、収益性の低下を反映するために合理的に価額を算定できる場合、帳簿価額と合理的に算定した価額の差額を評価損として計上する。
具体的な会計処理及び表示は、【STEP5】と同様である。
(3) 合理的な価額を算定できない場合
営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額を算定することができない場合には、その状況に応じ、以下のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するよう会計処理を行う(基準9)。
① 帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む)まで切り下げる方法
② 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法
① 帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む)まで切り下げる方法
帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む)まで切り下げる方法とは、帳簿価額と処分見込価額の差額を評価損として計上する方法である。この方法は、棚卸資産自体が物質的に劣化しており、今後、販売できる見込がなく、処分することしかできない場合等に採用することが考えられる。
② 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法
一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法とは、回転期間に応じて規則的に評価損を計上する方法である。例えば、回転期間が1年以上の棚卸資産は取得原価の50%まで評価損を計上し、1年半以上の棚卸資産は取得原価のうち70%まで評価損を計上し、回転期間が2年以上の棚卸資産は取得原価の全額を評価損として計上する。
この方法は、ライフサイクルが短く、一定の期間を超えると、販売価格が下がり、販売することはできるが、値引き販売しないと販売することができない場合等に採用することが考えられる。
この方法を採用する場合、会社の実態を適切に財務諸表に表せるように評価のルールを定める必要がある。
なお、具体的な会計処理及び表示は、【STEP5】と同様である。
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以上、6つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。
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(了)
「フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 」は、毎月最終週に掲載されます。