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【STEP1】関連当事者の範囲の把握
また、関連当事者の範囲の把握にあたっては、経理部のみで網羅的に把握することが難しい場合もある。そのような場合、各部署の協力をもとに網羅的に把握できる体制を構築する必要がある。
(注) 有価証券報告書は連結ベースで注記し、計算書類は個別ベースで注記するため、関連当事者の範囲は異なる。しかし、それぞれの書類ごとに関連当事者を把握するよりも、まず、両書類又はいずれかの書類で該当する関連当事者を把握することが効果的であると考えられる。そのため、本解説では、【STEP1】で有価証券報告書と計算書類の両方又はいずれかで該当する関連当事者を把握した上で、【STEP2】でそれぞれの書類ごとに関連当事者との取引として集計しなければならないものを把握するという流れで解説している。
(1) 連結財務諸表(計算書類)作成会社の主要株主及びその近親者
(2) 連結財務諸表(計算書類)作成会社の役員及びその近親者
(3) 親会社の有無
(4) 親会社の役員及びその近親者の有無
(5) 子会社の有無
(6) 重要な子会社の役員及びその近親者の有無
(7) 関連会社及び当該関連会社の子会社の有無
(8) 連結財務諸表(計算書類)作成会社と同一の親会社をもつ会社(兄弟会社)の有無
(9) 連結財務諸表(計算書類)作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(その他の関係会社)並びに当該その他の関係会社の親会社及び子会社の有無
(10) 上記(1)、(2)、(4)、(6)の者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社の有無
(11) 従業員のための企業年金の有無
(1) 連結財務諸表(計算書類)作成会社の主要株主及びその近親者
主要株主とは、自己又は他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している法人及び個人株主をいう(基準5(6))。連結財務諸表(計算書類)作成会社の主要株主は関連当事者に該当する。また、主要株主が個人の場合で、近親者(2親等以内の親族。以下、同様)が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑥)。
(2) 連結財務諸表(計算書類)作成会社の役員及びその近親者
連結財務諸表(計算書類)作成会社の役員は関連当事者に該当する。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑦)。役員には、取締役、監査役、執行役等だけでなく、相談役、顧問、執行役員等で、その会社内における地位や職務等からみて実質的に経営に強い影響を及ぼしていると認められる者も含まれる(以下、同様。企業会計基準適用指針第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針(以下、「適用指針」という)」4)。
また、創業者等で役員を退任していても、役員の定義に該当するかどうかを実質的に判定する必要がある(以下、同様。適用指針4)。
(3) 親会社の有無
親会社が存在する場合、その親会社は関連当事者に該当する(基準5(3)①)。
親会社が存在する場合、(4)を検討する。存在しない場合は、(5)を検討する。
(4) 親会社の役員及びその近親者の有無
連結財務諸表(計算書類)作成会社の親会社の役員は関連当事者に該当する。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑧)。
(5) 子会社の有無
子会社は関連当事者に該当する(基準5(3)②)。
(6) 重要な子会社の役員及びその近親者の有無
重要な子会社の役員とは、会社グループの事業運営に強い影響力を持つ者が子会社の役員である場合の当該役員をいう(基準21)。つまり、「重要な」は子会社ではなく、役員にかかっている。
そして、重要な子会社の役員が存在する場合、その役員は関連当事者に該当する(基準5(3)⑨)。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑨)。
(7) 関連会社及び当該関連会社の子会社の有無
関連会社及び当該関連会社の子会社が存在する場合、これらの会社は、関連当事者に該当する。(基準5(3)⑤)。
(8) 連結財務諸表(計算書類)作成会社と同一の親会社をもつ会社(兄弟会社)の有無
兄弟会社が存在する場合、その兄弟会社は関連当事者に該当する(基準5(3)③)。
(9) 連結財務諸表(計算書類)作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(その他の関係会社)並びに当該その他の関係会社の親会社及び子会社の有無
その他の関係会社、当該その他の関係会社の親会社及び子会社が存在する場合、それらの会社は関連当事者に該当する(基準5(3)④)。
(10) 上記(1)、(2)、(4)、(6)の者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社の有無
上記(1)、(2)、(4)、(6)の者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社がある場合、これらの会社は、関連当事者に該当する(基準5(3)⑩)。
(11) 従業員のための企業年金の有無
従業員のための企業年金が存在する場合、その企業年金は関連当事者に該当する(基準5(3)⑪)。
なお、関連当事者に該当するのは、企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る(基準5(3)⑪)。例えば、退職給付信託を設定している場合で、年金資産の入替や返還を行うときで、これらの取引に重要性がある場合は、注記対象になると考えられる(基準23)。