各ステップに移動する場合はこちらをクリック
【STEP4】回収可能性の検討
【STEP3】で算定した繰延税金資産は、回収可能性がない限り連結貸借対照表に計上できない。また、繰延税金負債も例外的な場合に支払可能性の検討が必要な場合がある。ただし、未実現損益の消去に係る一時差異については、その検討方法が異なる。
そこで、【STEP4】では、納税会社ごとに未実現利益に係る一時差異とそれ以外の一時差異に分けて回収可能性を検討する必要がある。
(1) 未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の検討
(2) 未実現損益の消去に係る一時差異における繰延税金資産及び繰延税金負債の検討
(1) 未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の検討
未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産について、その全額を貸借対照表に計上できるわけではなく、将来の課税所得(税金)を減少させる部分しか貸借対照表に計上できない。
そこで【STEP4】では、連結貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定するために、納税会社ごとに未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産と個別財務諸表上の繰延税金資産を合算し、「繰延税金資産の回収可能性」を検討する(連結実務指針41)。
具体的には、以下の①~③の検討が必要である。詳細は、【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」参照のこと。
① 企業の分類
(ⅰ) 企業の分類の決定
(ⅱ) 企業の分類ごとの回収可能性の判断指針
② 回収可能性の検討
(ⅰ) 一時差異等の解消のスケジューリング
(ⅱ) 将来減算一時差異と将来加算一時差異の解消年度ごとの相殺
(ⅲ) 将来減算一時差異と繰戻・繰越期間内の将来加算一時差異との相殺
(ⅳ) 将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額の算定
(ⅴ) 将来減算一時差異と一時差異等加減算前課税所得の解消年度ごとの相殺
(ⅵ) 将来減算一時差異と繰戻・繰越期間内の一時差異等加減算前課税所得との相殺
(ⅶ) 回収可能性のある繰延税金資産及び回収可能性のない繰延税金資産(評価性引当額)の算定
③ 支払可能性の検討
(2) 未実現損益の消去に係る一時差異における繰延税金資産及び繰延税金負債の検討
① 未実現利益の消去に係る税効果
連結手続上、消去された未実現利益に係る税効果は、未実現利益が発生した連結会社と一時差異の対象となった資産を保有する連結会社が異なるという特殊性を考慮し、かつ、従来からの実務慣行を勘案し、売却元で発生した税金額をそのまま繰延税金資産として計上する。この場合、繰延税金資産の回収可能性を検討する必要はない。
その後、未実現利益の実現(減価償却費の計上、売却等)に対応させて取り崩す(連結実務指針13)。
土地、建物等のように、未実現利益の実現が長期間にわたることになっても繰延税金資産を計上する。
ただし、無制限に繰延税金資産を計上できるわけではない。未実現利益の消去に係る将来減算一時差異の額は、売却元の売却年度における課税所得額が限度となる(連結実務指針15)。
② 未実現損失の消去に係る税効果
未実現損失の消去に係る税効果は、売却元で課税所得の計算上、未実現損失が損金処理されたことによる税金軽減額を繰延税金負債として計上する。その後、未実現損失の実現(減価償却費の計上、売却等)に対応させて取り崩す(連結実務指針14)。
なお、未実現損失に係る繰延税金負債の計上にも限度額がある。未実現損失の消去に係る将来加算一時差異の額は、売却元の当該未実現損失に係る損金を計上する前の課税所得額が限度となる(連結実務指針15)。