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[無料公開中]基礎から身につく組織再編税制 【第2回】「完全支配関係の定義」

筆者:川瀬 裕太

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基礎から身につく組織再編税制

【第2回】

「完全支配関係の定義」

 

太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター
税理士 川瀬 裕太

 

前回は本連載の最初として、基本となる「組織再編税制」の考え方について解説を行いました。

今回は、100%グループ内での組織再編の適格要件に用いられる「完全支配関係」の考え方について解説していきます。

 

1 完全支配関係

完全支配関係とは、次のような関係をいいます(法法2十二の七の六)。

 一の者が法人の発行済株式等(自己株式を除く)の全部を直接若しくは間接に保有する関係(当事者間の完全支配関係

 一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係(同一の者による完全支配関係

 

2 「直接完全支配関係」及び「みなし直接完全支配関係」

一の者が法人の発行済株式等の全部を保有する場合における、その一の者とその法人との間の関係を「直接完全支配関係」といいます。

一の者及びこれとの間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人又はその一の者との間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の全部を保有するときは、その一の者はその他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなされます(法令4の2②)。

 

3 名義株がある場合の取扱い

完全支配関係があるかどうかは、原則として、法人の株主名簿、社員名簿又は定款に記載又は記録されている株主等により判定します。ただし、その株主名簿等に記載されている株主等が単なる名義人であって、その株主等以外の者が実際の権利者である場合には、その実際の権利者が保有するものとして判定します(法基通1-3の2-1)。

 

4 従業員持株会や新株予約権がある場合の取扱い

完全支配関係の判定において、発行済株式の総数のうちに次の及びの株式数の占める割合が5%に満たない場合には、その株式を除いて判定することとされています(法令4の2②)。

 従業員持株会が取得した株式

 ストックオプション等により法人の役員又は使用人に付与された新株予約権の行使によって取得された株式

の従業員持株会は、民法上の任意組合契約(民法667①)に該当するものとされており、一般的には、証券会社方式による従業員持株会がこれに該当し、人格のない社団等に該当する信託銀行方式による従業員持株会はこれに該当しないこととされています(法基通1-3の2-3)。

また、その組合員となる者がその法人の使用人に限定されているため、使用人兼務役員は含まれていない点に留意が必要です(法基通1-3の2-4)。

 

5 資本関係がグループ内で完結している場合の取扱い

子会社間で発行済株式の一部を相互に持ち合っている場合には、親会社は、子会社(A又はB)の発行済株式のすべてを保有していないことから、親会社と子会社Aとの間及び親会社と子会社Bとの間には当事者間の完全支配関係がないことになるのか、そうであれば、子会社Aと子会社Bとの間にも当事者間の完全支配関係がある法人相互の関係もないことになるのか、という疑義が生じます。

これについては、完全支配関係の基本的な考え方は、法人の発行済株式のすべてがグループ内のいずれかの法人によって保有され、その資本関係がグループ内で完結している関係、つまり外部株主によってその発行済株式が保有されていない関係と解されていることから、親会社と子会社Aの間、親会社と子会社Bの間及び子会社AとBの間には、それぞれ完全支配関係があることとなります(国税庁 質疑応答事例「資本関係がグループ内で完結している場合の完全支配関係について」参照)。

 

6 株主が個人の場合の取扱い

株主が個人の場合には、個人の保有する株式だけでなく、「特殊の関係のある個人」が保有する株式を含めて、完全支配関係があるかどうかを判定します(法令4①、4の2②)。

《特殊の関係のある個人》

 株主等の親族(※)

 株主等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

 株主等(個人である株主等に限ります。において同じ)の使用人

 からに掲げる者以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの

 からに掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

(※) 親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいます(民法725)。

(具体例)

親が発行済株式の100%を保有するA社と子が発行済株式の100%を保有するB社の場合は親と子を一の者と考えて、A社とB社の間には一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係(同一の者による完全支配関係)があることとなります。

完全支配関係の判定上のポイント

  • 直接保有割合だけでなく間接保有割合も含めて判定します。
  • 自己株式は発行済株式から除いて判定します。
  • 名義株がある場合には、実際の権利者が保有しているとして判定します。
  • 株主が個人の場合には「特殊の関係のある個人」を含めて判定します。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
法規・・・法人税法施行規則
法基通・・・法人税基本通達
耐令・・・減価償却資産の耐用年数等に関する省令
(例)法規3①一・・・法人税法施行規則第3条第1項第1号

(了)

「基礎から身につく組織再編税制」は毎月第3週に掲載されます。

連載目次

基礎から身につく組織再編税制

〔概要〕

〔合併〕

〔分割〕

・・・  以下、順次公開 ・・・

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筆者紹介

  • 川瀬 裕太

    (かわせ・ゆうた)

    太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター
    税理士

    京都大学大学院経営管理教育部卒業。大手税理士法人勤務を経て、2015年7月より現職。
    日系企業、外資系企業への申告書作成業務やM&A、グループ企業内再編案件の税務アドバイザリー業務、海外進出企業の税務アドバイザリー業務に従事。オーナー系企業の事業承継対策、納税資金対策や自社株対策を中心としたコンサルティング業務も行うなど幅広く活動している。

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