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《速報解説》 所得拡大促進税制の適用要件の見直しと中小企業者等向け控除税額の拡充について~平成29年度税制改正大綱~

筆者:鯨岡 健太郎

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 《速報解説》

所得拡大促進税制の適用要件の見直しと

中小企業者等向け控除税額の拡充について

~平成29年度税制改正大綱~

 

公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎

 

1 はじめに

平成28年12月8日、与党(自由民主党及び公明党)より「平成29年度税制改正大綱」が公表された。

平成29年度の税制改正においても、企業収益の拡大が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資のさらなる増加に結びつくという経済の好循環を強化するために、賃上げの引上げを促すための取り組みを進めるとの考え方が示されている。

賃上げの促進に関しては、かねてより、所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)が整備され、政策目標を着実に達成させるべく、過去数回の改正が行われてきたところである。平成29年度の税制改正大綱においても、上述の考え方を踏まえ、企業にさらなる賃上げインセンティブを与える機能を強化する観点から、直近において高い賃上げを行う企業への支援を強化するための改正が盛り込まれた。

本稿では、平成29年度税制改正大綱において示された、所得拡大促進税制の見直しの内容について述べる。なお文中意見にわたる部分は筆者の私見である。

 

2 所得拡大促進税制の適用要件(現行制度)

本税制の適用を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要がある(措法42の12の4①)。

(1) 雇用者給与等支給増加額 ≧ 基準雇用者給与等支給額×増加促進割合(※)

(2) 雇用者給与等支給額 ≧ 比較雇用者給与等支給額

(3) 平均給与等支給額 > 比較平均給与等支給額

(※) 増加促進割合
事業年度	中小企業者等以外	中小企業者等 H27.4.1~H28.3.31の間に開始	3%	3% H28.4.1~H29.3.31の間に開始	4%	3% H29.4.1~H30.3.31の間に開始	5%	3%

 

3 改正点① 適用要件の見直し(中小企業者等以外の法人)

中小企業者等以外の法人について、本税制の適用要件のうち、平均給与等支給額に係る要件が見直されることとなった。

現行制度では、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を「超える」ことが要件とされているが、平成29年度の税制改正により、以下のように変更される。

平均給与等支給額 ≧ 比較平均給与等支給額 × 102%

平均給与等支給額は、2事業年度にわたり在籍する従業者(継続雇用者)の1人当たり・1月当たりの給与支給額を示す指標であるが、より一層の賃上げを促進する観点から、平均給与等支給額の増加幅について具体的な指標を用いて明確化するための改正であると考えられる。

なお、本改正は中小企業者等には適用されない。

 

4 改正点② 控除税額の上積み(中小企業者等)

中小企業者等の所得拡大促進税制による控除税額については、以下の2つの合計額とされる。

(1) 雇用者給与等支給増加額 × 10% ←【現行制度と同様】

(2) 雇用者給与等支給増加額のうち、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額の12% ←【改正により追加】

(※) 具体的には以下の算式による。
(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)× 12%

(2)の要件は、特に、前事業年度からの賃上げに対して追加的インセンティブを付与するものであり、中小企業者のさらなる賃上げを後押しするための改正であると考えられる。

なお、本改正は中小企業者等以外の法人には適用されない。
(注) 中小企業者等以外の法人の場合、上記(2)の12%が2%となる。

 

5 地方税への影響

事業税(外形標準課税)の所得拡大促進税制の取扱いについても、上記2点と同様に改正される予定である。

また中小企業者等については、所得拡大促進税制による税額控除は住民税(法人税割)の計算にも及ぶ点は従来と変わらない。

(了)

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筆者紹介

  • 鯨岡 健太郎

    ( くじらおか・けんたろう )

    公認会計士・税理士
    税理士法人ファシオ・コンサルティング パートナー

    1998(平成10)年公認会計士試験合格後に大手監査法人に入社。主に国内上場企業に対する法定監査業務及び株式公開支援業務に従事。2002(平成14)年に公認会計士登録。
    その後、2003(平成15)年に大手税理士法人に転籍し、主に国内外の法人に対する税務コンプライアンス業務及び税務コンサルティングサービスに従事したほか、M&Aにおける税務デューデリジェンス業務、ストラクチャリング業務等のM&Aアドバイザリー業務にも関与。2005(平成17)年に税理士登録。

    2008(平成20)年に独立開業。現在は税理士法人のパートナー税理士として、中小企業の経営支援業務や連結納税導入支援業務等に従事している。

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