公開日: 2025/10/30 (掲載号:No.642)
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〈令和7年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第1回】「令和7年分から適用される改正事項」~基礎控除・給与所得控除の見直し及び特定親族特別控除の創設等~

筆者: 篠藤 敦子

〈令和7年分〉

おさえておきたい

年末調整のポイント

【第1回】

「令和7年分から適用される改正事項」

~基礎控除・給与所得控除の見直し及び特定親族特別控除の創設等~

 

公認会計士・税理士 篠藤 敦子

 

11月に入り、今年も年末調整に向けた準備を始める時期となった。

今回から3回シリーズで、年末調整における実務上の注意点やポイント等を解説する。

第1回(本稿)と第2回は、令和7年度税制改正事項のうち、令和7年分の年末調整に関係する内容を取り上げる。

なお、本年分の記事に加え、論末の連載目次に掲載された過去の拙稿もご参照いただきたい。

(※) 本稿では、年末調整で使用する各申告書等を次のとおり表記する。

・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等申告書

・給与所得者の保険料控除申告書
保険料控除申告書

・給与所得者の基礎控除申告書
基礎控除申告書

・給与所得者の配偶者控除等申告書
配偶者控除等申告書

・給与所得者の特定親族特別控除申告書
特定親族特別控除申告書

・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除申告書

・給与所得に対する源泉徴収簿
源泉徴収簿

・給与所得の源泉徴収票
源泉徴収票

令和7年度税制改正では、物価上昇局面における税負担の調整の観点から、基礎控除及び給与所得控除の見直しが行われ、長く続いたいわゆる「年収103万円の壁」が引き上げられた。また、就業調整対策の観点から、大学生年代の子等を持つ所得者本人に係る新たな所得控除として特定親族特別控除が創設された。これらに加え、同一生計配偶者や扶養親族等の所得要件の引上げも行われている。

いずれの改正も、令和7年分以後の所得税に適用されるが、改正後の法律の施行日が令和7年12月1日であることから、令和7年分の所得税については、令和7年12月1日以後に行う年末調整又は確定申告で適用されることとなる(※)

(※) 令和7年11月までの給与の源泉徴収事務は、改正前の制度に基づいて行われる。

以下、各改正事項について解説を行う。

【1】 基礎控除の見直し
【2】 給与所得控除の見直し
【3】 特定親族特別控除の創設
【4】 同一生計配偶者や扶養親族等の所得要件の見直し

 

【1】 基礎控除の見直し

所得税の基礎控除について、合計所得金額の区分が3段階から8段階へ変更され、控除額は最大で95万円となった(所法86①②、措法41の16の2①)。

〈基礎控除の額(所得税)〉

(※) 合計所得金額132万円超655万円以下の3つの区分は、令和7年分と令和8年分の所得税のみに適用される。令和9年分以後は、合計所得金額132万円超2,350万円以下の区分の控除額はすべて58万円となる。

 

【2】 給与所得控除の見直し

給与所得控除の最低保障額が、55万円から65万円に引き上げられた(所法28③)。

〈給与所得控除の額〉

 

【3】 特定親族特別控除の創設

大学生年代の子等について、控除対象扶養親族としての所得制限を超えた場合にも、一定の所得控除を受けられる仕組みが導入された。この新たな控除を特定親族特別控除という(所法84の2)。

〈特定親族特別控除の対象者及び控除額〉

 

【4】 同一生計配偶者や扶養親族等の所得要件の見直し

同一生計配偶者や扶養親族等の合計所得金額等の金額要件が引き上げられた(所法2①三十二、三十三、三十四、83の2①、所令11の2②)。

〈同一生計配偶者や扶養親族等の合計所得金額等の金額要件〉

*  *  *

次回(第2回)は、各改正事項が、令和7年分の年末調整実務に及ぼす影響について解説する予定である。

【関連記事】

〈令和6年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和5年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和4年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和3年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和2年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和元年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

(注) 上記の記事については、掲載後の税制改正等により、解説内容が現在の規定に基づくものとは異なるケースがある。過年度の記事内に順次コメントを入れるので留意していただきたい。

〔凡例〕

所法・・・所得税法

所令・・・所得税法施行令

措法・・・租税特別措置法

(了)

次回は11/6に公開予定です。

  

〈令和7年分〉

おさえておきたい

年末調整のポイント

【第1回】

「令和7年分から適用される改正事項」

~基礎控除・給与所得控除の見直し及び特定親族特別控除の創設等~

 

公認会計士・税理士 篠藤 敦子

 

11月に入り、今年も年末調整に向けた準備を始める時期となった。

今回から3回シリーズで、年末調整における実務上の注意点やポイント等を解説する。

第1回(本稿)と第2回は、令和7年度税制改正事項のうち、令和7年分の年末調整に関係する内容を取り上げる。

なお、本年分の記事に加え、論末の連載目次に掲載された過去の拙稿もご参照いただきたい。

(※) 本稿では、年末調整で使用する各申告書等を次のとおり表記する。

・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等申告書

・給与所得者の保険料控除申告書
保険料控除申告書

・給与所得者の基礎控除申告書
基礎控除申告書

・給与所得者の配偶者控除等申告書
配偶者控除等申告書

・給与所得者の特定親族特別控除申告書
特定親族特別控除申告書

・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除申告書

・給与所得に対する源泉徴収簿
源泉徴収簿

・給与所得の源泉徴収票
源泉徴収票

令和7年度税制改正では、物価上昇局面における税負担の調整の観点から、基礎控除及び給与所得控除の見直しが行われ、長く続いたいわゆる「年収103万円の壁」が引き上げられた。また、就業調整対策の観点から、大学生年代の子等を持つ所得者本人に係る新たな所得控除として特定親族特別控除が創設された。これらに加え、同一生計配偶者や扶養親族等の所得要件の引上げも行われている。

いずれの改正も、令和7年分以後の所得税に適用されるが、改正後の法律の施行日が令和7年12月1日であることから、令和7年分の所得税については、令和7年12月1日以後に行う年末調整又は確定申告で適用されることとなる(※)

(※) 令和7年11月までの給与の源泉徴収事務は、改正前の制度に基づいて行われる。

以下、各改正事項について解説を行う。

【1】 基礎控除の見直し
【2】 給与所得控除の見直し
【3】 特定親族特別控除の創設
【4】 同一生計配偶者や扶養親族等の所得要件の見直し

 

【1】 基礎控除の見直し

所得税の基礎控除について、合計所得金額の区分が3段階から8段階へ変更され、控除額は最大で95万円となった(所法86①②、措法41の16の2①)。

〈基礎控除の額(所得税)〉

(※) 合計所得金額132万円超655万円以下の3つの区分は、令和7年分と令和8年分の所得税のみに適用される。令和9年分以後は、合計所得金額132万円超2,350万円以下の区分の控除額はすべて58万円となる。

 

【2】 給与所得控除の見直し

給与所得控除の最低保障額が、55万円から65万円に引き上げられた(所法28③)。

〈給与所得控除の額〉

 

【3】 特定親族特別控除の創設

大学生年代の子等について、控除対象扶養親族としての所得制限を超えた場合にも、一定の所得控除を受けられる仕組みが導入された。この新たな控除を特定親族特別控除という(所法84の2)。

〈特定親族特別控除の対象者及び控除額〉

 

【4】 同一生計配偶者や扶養親族等の所得要件の見直し

同一生計配偶者や扶養親族等の合計所得金額等の金額要件が引き上げられた(所法2①三十二、三十三、三十四、83の2①、所令11の2②)。

〈同一生計配偶者や扶養親族等の合計所得金額等の金額要件〉

*  *  *

次回(第2回)は、各改正事項が、令和7年分の年末調整実務に及ぼす影響について解説する予定である。

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〈令和4年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和3年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和2年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

〈令和元年分〉おさえておきたい年末調整のポイント

(注) 上記の記事については、掲載後の税制改正等により、解説内容が現在の規定に基づくものとは異なるケースがある。過年度の記事内に順次コメントを入れるので留意していただきたい。

〔凡例〕

所法・・・所得税法

所令・・・所得税法施行令

措法・・・租税特別措置法

(了)

次回は11/6に公開予定です。

  

連載目次

〈おさえておきたい年末調整のポイント〉

「〈令和2年分〉おさえておきたい年末調整のポイント」

「〈平成27年分〉おさえておきたい年末調整のポイント」(全3回)

「〈平成24年分〉おさえておきたい年末調整のポイント」(全2回)

筆者紹介

篠藤 敦子

(しのとう・あつこ)

公認会計士・税理士

津田塾大学卒業
1989年 公認会計士試験第二次試験合格
1994年 朝日監査法人(現 あずさ監査法人)退社後、個人事務所を開業し、会計と税務実務に従事。
2008年より甲南大学社会科学研究科会計専門職専攻教授(2016年3月まで)
2010年より大阪電気通信大学金融経済学部非常勤講師

【著書等】
・『マンガと図解/新・くらしの税金百科』共著(清文社)
・『会計学実践講義』共著
・『日商簿記1級徹底対策ドリル 商業簿記・会計学編』共著(以上、同文舘出版)
・『148の事例から見た是否認事項の判断ポイント』共著(税務経理協会)
・「不動産取引を行った場合」『税経通信』2012年3月号(103-109頁)

【過去に担当した研修、セミナー】
SMBCコンサルティング、日本経済新聞社、日本賃金研究センター
社団法人大阪府工業協会、西日本旅客鉄道株式会社、社団法人埼玉県経営者協会
大阪法務局

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