《速報解説》
国税庁、「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を改訂
~令和6年度税制改正等を反映し、注書きや参考を追記~
税理士 中尾 隼大
(1) 「ストックオプションに対する課税(Q&A)」の改訂
国税庁は、令和6年11月13日付で「ストックオプションに対する課税(Q&A)」(以下、単に「Q&A」という)を改訂した。
(2) 追加された内容
既存のQ&Aに追加された主な内容は次の通りである。
【問6 税制適格ストックオプションの課税関係】
ストックオプションの「付与決議の日」について、「割当てに関する決議」である旨の解説箇所に、以下の通り会社法に関する解説が追記された。
この「割当てに関する決議」とは、会社法第243条第2項の決議(その決議の後に同法第238条第2項の決議が行われる場合には、当該決議)をいいますが、募集新株予約権の総数の引受けを行う契約を締結する場合には、実質的に対象者に新株予約権が与えられることとなる同法第238条第2項の決議(その決議の後に当該契約の承認の決議(同法第244条第3項)が行われる場合には、当該決議)をいいます。
また、参考として、「令和6年度税制改正で措置された税制適格ストックオプションの改正の概要」が追記された。
➤ 年間権利行使価額の限度額の判定において、設立の日からの期間に応じて1,200万円を2又は3で除す際、1円未満の端数は切り上げて計算する旨。
➤ いわゆる保管委託要件について、譲渡制限株式に限り、発行会社と取締役等との間であらかじめ締結された取決めに従い、発行会社において、当該ストックオプションの行使により取得した株式の管理がされることによることも可能となった旨。
➤ 令和6年度税制改正の内容は、令和6年分以後の所得税について適用し、令和5年分以前の所得税については従前どおりとされている旨。また、令和6年4月1日前に締結された契約については、令和6年12月31日までに契約の変更をすることにより、当該改正後の要件を適用することができる経過措置が設けられている旨。
【問10 税制適格ストックオプションの権利行使価額(契約変更)】
この設問は、令和5年7月の租税特別措置法通達の改正を踏まえ、権利行使価額を引き下げる契約変更を行うことに関するものである。契約を変更した場合において、当初契約に反した権利行使とはならない場合には、税制適格ストックオプションとされる旨等の注書きが追記された。
【問12 税制適格ストックオプション(信託型)の課税関係】
「付与決議の日」及び端数処理、そしていわゆる保管委託要件についても、問6の参考箇所と同様の注書きが加えられ、令和6年度税制改正に沿う形に改訂がなされている。
(3) 今回の改訂について
今回の改訂は、令和6年度税制改正を反映させる形でなされたものであり、随所に参考という形でその内容が追記されている。注書き等の追記であるため細かな改定ではあるが、内容は重要であるため、これらの改訂内容を確認しつつ実務に活用したい。
(了)