公開日: 2015/04/30 (掲載号:No.117)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第16回】「セグメント情報等の開示」

筆者: 西田 友洋

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【STEP1】報告セグメントの決定

セグメント情報の開示のため、まず、報告セグメント(セグメント情報を開示する対象となるセグメント)を決定しなければならない(基準10)

(1) 事業セグメントの識別

(2) 集約基準

(3) 量的基準

(4) 経済的特徴の判断

(5) 外部顧客への売上高が損益計算書の売上高に占める割合

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(1) 事業セグメントの識別

まず、事業セグメントを識別する。事業セグメントとは、企業の構成単位で、次の要件のすべてに該当するものをいう(基準6)。

 収益を稼得し、費用が発生する事業活動に関わるもの(同一企業内の他の構成単位との取引に関連する収益及び費用を含む。)

 企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、また、その業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するもの

 分離された財務情報を入手できるもの

(※)  新たな事業を立ち上げたときのように、現時点では収益を稼得していない事業活動を事業セグメントとして識別する場合もある(基準6)。一方、企業の本社又は特定の部門のように、企業を構成する一部であっても 収益を稼得していない、又は付随的な収益を稼得するに過ぎない構成単位は、事業セグメント又は事業セグメントの一部とならない(基準7)。

また、事業セグメントの要件を満たすセグメントの区分方法が複数ある場合、各構成単位の事業活動の特徴、それらについて責任を有する管理者の存在及び取締役会等に提出される情報などの要素に基づいて、企業の事業セグメントの区分方法を決定する(基準9)。

(2) 集約基準

上記(1)で識別した事業セグメントは、そのまま報告セグメントになるわけではない。(2)から(5)で報告セグメントを決定することになる。(2)では、集約基準を検討する。

複数の事業セグメントが次の要件のすべてを満たす場合、当該事業セグメントを1つの事業セグメントに集約することができる(基準11)。集約することができる事業セグメントは集約し、(3)を検討する。集約することができない事業セグメントは、個々の事業セグメントごとに(3)を検討する。

 当該事業セグメントを集約することが、セグメント情報を開示する基本原則(基準4)と整合していること

 当該事業セグメントの経済的特徴が概ね類似していること

 当該事業セグメントの次のすべての要素が概ね類似していること

  • 製品及びサービスの内容
  • 製品の製造方法又は製造過程、サービスの提供方法
  • 製品及びサービスを販売する市場又は顧客の種類
  • 製品及びサービスの販売方法
  • 銀行、保険、公益事業等のような業種に特有の規制環境

(3) 量的基準

ここでは、報告セグメントとして開示しなければならない事業セグメントを判定する。

次の量的基準のいずれかを満たす事業セグメントを報告セグメントとして開示しなければならない(基準12)。いずれかを満たす場合、【STEP2】を検討する。いずれも満たさない場合には、(4)を検討する。

 売上高(事業セグメント間の内部売上高又は振替高を含む)がすべての事業セグメントの売上高の合計額の 10%以上であること

 利益又は損失の絶対値が、①利益の生じているすべての事業セグメントの利益の合計額、又は②損失の生じているすべての事業セグメントの損失の合計額の絶対値のいずれか大きい額の 10%以上であること

 資産が、すべての事業セグメントの資産の合計額の 10%以上であること。

(注) なお、量的基準のいずれにも満たない事業セグメントを、報告セグメントとして開示することは妨げられていない。

(4) 経済的特徴の判断

量的基準を満たしていない複数の事業セグメントの経済的特徴が概ね類似し、かつ上記(2)③に記載した事業セグメントを集約するにあたって考慮すべき要素の過半数について概ね類似している場合には、これらの事業セグメントを結合して、報告セグメントとすることができる(基準13)。そして、次は【STEP2】を検討する。

経済的特徴が概ね類似していない場合や、経済的特徴が概ね類似しているが、上記(2)③の要素の過半数について概ね類似していない場合には、下記(5)を検討する。

(5) 外部顧客への売上高が損益計算書の売上高に占める割合

上記(4)まで検討した結果、報告セグメントの外部顧客への売上高の合計額が連結損益計算書又は個別損益計算書(以下「損益計算書」という)の売上高の 75%以上である場合、その他の事業セグメントは「その他」として開示する(基準14、15)。

75%未満である場合には、損益計算書の売上高の75%以上が報告セグメントに含まれるまで、報告セグメントとする事業セグメントを追加する。損益計算書の売上高の75%以上に達したら、その他の事業セグメントは「その他」として開示する(基準14、15)。

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第16回】

「セグメント情報等の開示」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、セグメント情報等の開示について解説する。

セグメント情報等とは、以下の4つの情報をいう(企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準(以下、「基準」という)」1)。

(1) セグメント情報【STEP1】【STEP2】

(2) セグメント情報の関連情報【STEP3】

(3) 固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報【STEP4】

(4) のれんに関する報告セグメント別情報【STEP5】

上記(1)のセグメント情報は、マネジメント・アプローチで開示する(基準50)。マネジメント・アプローチとは、経営上の意思決定や業績を評価するために、経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎としてセグメント情報を開示する方法である(基準45)。

なお、セグメント情報等の開示は、財務諸表利用者が、企業の過去の業績を理解し、将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価できるように、企業が行う様々な事業活動の内容及びこれを行う経営環境に関して適切な情報を提供するものでなければならない(セグメント情報を開示する基本原則。基準4)。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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