公開日: 2025/09/25 (掲載号:No.637)
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谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第52回】「事業所得と給与所得との区分に関する「判断の一応の基準」の意味」-弁護士顧問料事件・最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

税法基本判例

【第52回】

「事業所得と給与所得との区分に関する「判断の一応の基準」の意味」

-弁護士顧問料事件・最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

今回は、弁護士の顧問料の給与所得該当性が争われたいわゆる弁護士顧問料事件に関する最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁(以下「本判決」という)において示された、事業所得と給与所得の区分に関する「判断の一応の基準」の意味について検討する。

なお、本判決は、民集35巻3号672頁の「判示事項」でも、「いわゆる減額再更正処分の取消を求める訴の利益の有無」が取り上げられ、これに関する判断を示した判決としても(むしろ当時はそのような判決として)注目を集めたが(この問題については園部逸夫「判解」最判解民事篇(昭和56年度)275頁ほか多くの判例評釈がある)、この問題は第39回(特にⅡ2)で検討した。

また、事業所得と給与所得との区分が争われるのは、「所得を得るために必要な支出」という意味での必要経費(理論的意味における必要経費)の控除が実額控除とされるか(事業所得)又は概算控除とされるか(給与所得)という取扱いの違いによるものであるが(理論的意味における必要経費、実額控除、概算控除については拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【312】【262】【267】参照)、その争いの実質的な原因は、多くの場合、大嶋訴訟第2回参照)に典型的にみられたように当該事案における給与所得に係る必要経費の概算控除(給与所得控除)の額が必要経費の実額控除の額を下回る点にあったところ、本件では、確定申告における顧問料収入に係る必要経費については概算控除の方が上回っていたものと思われる(本件における確定申告、更正及び再更正に係る給与所得及び事業所得の収入金額、所得金額等の内訳については原審・東京高判昭和51年10月18日民集35巻3号686頁、687頁以下参照)。

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税法基本判例

【第52回】

「事業所得と給与所得との区分に関する「判断の一応の基準」の意味」

-弁護士顧問料事件・最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

今回は、弁護士の顧問料の給与所得該当性が争われたいわゆる弁護士顧問料事件に関する最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁(以下「本判決」という)において示された、事業所得と給与所得の区分に関する「判断の一応の基準」の意味について検討する。

なお、本判決は、民集35巻3号672頁の「判示事項」でも、「いわゆる減額再更正処分の取消を求める訴の利益の有無」が取り上げられ、これに関する判断を示した判決としても(むしろ当時はそのような判決として)注目を集めたが(この問題については園部逸夫「判解」最判解民事篇(昭和56年度)275頁ほか多くの判例評釈がある)、この問題は第39回(特にⅡ2)で検討した。

また、事業所得と給与所得との区分が争われるのは、「所得を得るために必要な支出」という意味での必要経費(理論的意味における必要経費)の控除が実額控除とされるか(事業所得)又は概算控除とされるか(給与所得)という取扱いの違いによるものであるが(理論的意味における必要経費、実額控除、概算控除については拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【312】【262】【267】参照)、その争いの実質的な原因は、多くの場合、大嶋訴訟第2回参照)に典型的にみられたように当該事案における給与所得に係る必要経費の概算控除(給与所得控除)の額が必要経費の実額控除の額を下回る点にあったところ、本件では、確定申告における顧問料収入に係る必要経費については概算控除の方が上回っていたものと思われる(本件における確定申告、更正及び再更正に係る給与所得及び事業所得の収入金額、所得金額等の内訳については原審・東京高判昭和51年10月18日民集35巻3号686頁、687頁以下参照)。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」

第1回~第20回

第21回~

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同センター理事・同センター「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社・2023年)、『基礎から学べる租税法〔第4版〕』(共著・弘文堂・2025年)、『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)など。
 
  

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