公開日: 2023/09/28 (掲載号:No.537)
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谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第30回】「誤還付「過納金」相当額の「納付」に係る延滞税の賦課と課税上の衡平」-延滞税不発生事件・最判平成26年12月12日訟月61巻5号1073頁-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

税法基本判例

【第30回】

「誤還付「過納金」相当額の「納付」に係る延滞税の賦課と課税上の衡平」

-延滞税不発生事件・最判平成26年12月12日訟月61巻5号1073頁-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

前回は、納税義務の消滅原因(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【104】)の1つである還付金等の充当(同【116】)の前提として整理した還付金等の意義(同【115】)に関連して、過納金相当額の不当利得の返還を認めた判例を取り上げ検討したが、今回は還付金等のうち過納金の還付に関連して、「過納金」相当額の誤還付に伴う「納付」(いわば返納)に伴う延滞税の賦課が争われた事件において延滞税の納付義務の不存在を確認した最判平成26年12月12日訟月61巻5号1073頁(以下「本判決」という)を検討する。本判決には少数意見として千葉勝美裁判官の補足意見と小貫芳宣裁判官の意見が表示されている。

本件は、納税者(上告人ら)が相続税の期限内申告及び納付をした後で更正の請求をしたところ、所轄税務署長において、相続財産(土地)の評価の誤りを理由に減額更正をし、その減額分相当額を過納金として還付した後、自ら当該減額更正の内容を覆しこれに係る相続財産の評価の誤りを理由に増額更正を行い、これにより「新たに」納付すべきこととなった本税額につき、平成28年度税制改正前の国税通則法60条1項2号、2項及び61条1項1号に基づき、法定納期限の翌日から完納の日までの期間に係る延滞税の納付の催告をしたことから、納税者が国(被上告人)を相手に、上記の延滞税は発生していないとして、その納付義務がないことの確認を求めた事件である。

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税法基本判例

【第30回】

「誤還付「過納金」相当額の「納付」に係る延滞税の賦課と課税上の衡平」

-延滞税不発生事件・最判平成26年12月12日訟月61巻5号1073頁-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

前回は、納税義務の消滅原因(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【104】)の1つである還付金等の充当(同【116】)の前提として整理した還付金等の意義(同【115】)に関連して、過納金相当額の不当利得の返還を認めた判例を取り上げ検討したが、今回は還付金等のうち過納金の還付に関連して、「過納金」相当額の誤還付に伴う「納付」(いわば返納)に伴う延滞税の賦課が争われた事件において延滞税の納付義務の不存在を確認した最判平成26年12月12日訟月61巻5号1073頁(以下「本判決」という)を検討する。本判決には少数意見として千葉勝美裁判官の補足意見と小貫芳宣裁判官の意見が表示されている。

本件は、納税者(上告人ら)が相続税の期限内申告及び納付をした後で更正の請求をしたところ、所轄税務署長において、相続財産(土地)の評価の誤りを理由に減額更正をし、その減額分相当額を過納金として還付した後、自ら当該減額更正の内容を覆しこれに係る相続財産の評価の誤りを理由に増額更正を行い、これにより「新たに」納付すべきこととなった本税額につき、平成28年度税制改正前の国税通則法60条1項2号、2項及び61条1項1号に基づき、法定納期限の翌日から完納の日までの期間に係る延滞税の納付の催告をしたことから、納税者が国(被上告人)を相手に、上記の延滞税は発生していないとして、その納付義務がないことの確認を求めた事件である。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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