公開日: 2022/04/28 (掲載号:No.467)
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谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第13回】「借用概念論の実践的意図とその実現」-株主優待金事件に関する最判昭和35年10月7日民集14巻12号2420頁と最大判昭和43年11月13日民集22巻12号2449頁-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

税法基本判例

【第13回】

「借用概念論の実践的意図とその実現」

-株主優待金事件に関する最判昭和35年10月7日民集14巻12号2420頁と最大判昭和43年11月13日民集22巻12号2449頁-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

前回で、借用概念論は、「税法と私法」論との密接な関連において、私法関係準拠主義(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【60】)を実質的基盤として、借用概念を税法独自の概念(固有概念)と区別することによって「租税法の解釈に関する錯綜した議論を多少とも整理し、またいわゆる実質課税の原則を根拠として租税法に自由な解釈をもち込むことに対して歯止めをかけること」(金子宏『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年)386頁)という、税法解釈論上の実践的意図をもって展開されてきたものとみてよいと述べた。

今回は、借用概念論のそのような実践的意図とその実現について、いわゆる株主相互金融会社における株主優待金の税法上の取扱いに関する昭和35年10月7日民集14巻12号2420頁(以下「昭和35年最判」という)と最大判昭和43年11月13日民集22巻12号2449頁(以下「昭和43年最大判」という)を素材にして、検討することにする。

昭和35年最判では、株主優待金が所得税法上の利益配当(「法人から受ける利益の配当」)に該当するか否かが争われたのに対して、昭和43年最大判では、株主優待金が法人税法の課税所得の計算上損金に算入されるか否かが争われたところ、「両者はいちおう別個の問題ではあるが、株主優待金の法的構造ないし性質をいかに把握するかという点では、両者に共通する問題が横たわっているといえる。」(後者に関する調査官解説である可部恒雄「判解」最判解民事篇(昭和43年度)1432頁、1440頁)ことから、以下では、両者を比較しながら、借用概念論の実践的意図とその実現について検討していくことにする。

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税法基本判例

【第13回】

「借用概念論の実践的意図とその実現」

-株主優待金事件に関する最判昭和35年10月7日民集14巻12号2420頁と最大判昭和43年11月13日民集22巻12号2449頁-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

前回で、借用概念論は、「税法と私法」論との密接な関連において、私法関係準拠主義(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【60】)を実質的基盤として、借用概念を税法独自の概念(固有概念)と区別することによって「租税法の解釈に関する錯綜した議論を多少とも整理し、またいわゆる実質課税の原則を根拠として租税法に自由な解釈をもち込むことに対して歯止めをかけること」(金子宏『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年)386頁)という、税法解釈論上の実践的意図をもって展開されてきたものとみてよいと述べた。

今回は、借用概念論のそのような実践的意図とその実現について、いわゆる株主相互金融会社における株主優待金の税法上の取扱いに関する昭和35年10月7日民集14巻12号2420頁(以下「昭和35年最判」という)と最大判昭和43年11月13日民集22巻12号2449頁(以下「昭和43年最大判」という)を素材にして、検討することにする。

昭和35年最判では、株主優待金が所得税法上の利益配当(「法人から受ける利益の配当」)に該当するか否かが争われたのに対して、昭和43年最大判では、株主優待金が法人税法の課税所得の計算上損金に算入されるか否かが争われたところ、「両者はいちおう別個の問題ではあるが、株主優待金の法的構造ないし性質をいかに把握するかという点では、両者に共通する問題が横たわっているといえる。」(後者に関する調査官解説である可部恒雄「判解」最判解民事篇(昭和43年度)1432頁、1440頁)ことから、以下では、両者を比較しながら、借用概念論の実践的意図とその実現について検討していくことにする。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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