公開日: 2014/09/25 (掲載号:No.87)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第9回】「連結キャッシュ・フロー」

筆者: 西田 友洋

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【STEP5】財務活動によるキャッシュ・フローの算定

財務活動によるキャッシュ・フローでは、例えば、以下の項目について検討する。

(1) 新規借入

(2) 借入の返済

(3) 新規リース

(4) リース債務の返済

(5) 配当金の支払

(6) 自己株式の取得

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(1) 新規借入

新規借入を行うことにより、キャッシュが増加するため、新規借入額を借入れによる収入として表示する。

 

(2) 借入の返済

借入の返済により、キャッシュが減少するため、借入金の返済による支出として表示する。

《設例》

前期末、当期末の連結貸借対照表、連結損益計算書は以下のとおりである。

  • 長期借入金・・・前期末:5,000、当期末:6,000
  • 新規借入・・・3,000
  • 長期借入金の返済・・・2,000
  • 未払利息・・・前期末:0、当期末:100
  • 支払利息・・・300
  • 税金等調整前当期純利益・・・5,000

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(3) 新規リース

新たにリース契約を結んだ時点では、キャッシュの増減はないため、連結キャッシュ・フロー計算書上では、表示されない。

 

(4) リース債務の返済

リース債務の返済によりキャッシュが減少するため、リース債務の返済による支出として表示する。

具体的には、資産計上したファインス・リース取引に係る支払リース料は、会社が選択した会計処理により以下のように表示する。

① 資産計上したファイナンス・リース取引の場合

(ⅰ) 利子抜き法
ファインス・リース取引に係る支払リース料は、原則、元本部分と支払利息部分に区分して会計処理を行う(利子抜き法)。この場合、元本部分は、財務活動によるキャッシュ・フローに表示する。支払利息部分は、会社が選択した支払利息の表示区分に従って表示する(上記【STEP1】(9)参照)。

(ⅱ) 利子込み法
ファイナンス・リース取引で支払リース料から利息相当額部分を控除しない方法(利子込み法)を採用している場合、支払リース料全額を財務活動によるキャッシュ・フローに表示する。

② 賃貸借処理の場合

オペレーティング・リースなどで賃貸借処理した支払リース料については、通常は営業損益計算の対象に含まれるため、営業活動によるキャッシュ・フローに表示する(実務指針34(1))。支払リース料は、税金等調整前当期純利益に含まれているため、特段の調整は不要である。

《設例》

前期末、当期末の連結貸借対照表、連結損益計算書は以下のとおりである。

  • リース資産・・・前期末:1,000、当期末:3,500
  • リース債務・・・前期末:1,000、当期末:3,500
    ※リース取引の会計処理は、支払リース料から利息相当額を控除しない方法(利子込み法)である。
  • 減価償却費・・・500
  • 期末に新規取得したリース資産の取得価額・・・3,000
  • 税金等調整前当期純利益・・・5,000
    ※消費税は考慮しない。

※リース取引の会計処理は、支払リース料から利息相当額を控除しない方法(利子込み法)である。

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 (5) 配当金の支払

配当金の支払によりキャッシュが減少するため、親会社の配当は、配当金の支払額として表示する(上記【STEP1】(1)参照)。子会社の非支配株主への配当は、非支配株主への配当金の支払額として表示する。

 

(6) 自己株式の取得

自己株式の取得によりキャッシュが減少するため、自己株式の取得による支出として表示する。

《設例》

前期末、当期末の連結貸借対照表は以下のとおりである。

  • 自己株式 前期末:0、当期末:1,000
    ※自己株式の取得に係る費用はゼロとする。

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第9回】

「連結キャッシュ・フロー」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、連結キャッシュ・フローを解説する。

貸借対照表は企業の財政状態を表す。損益計算書は企業の経営成績を表す。一方、キャッシュ・フロー計算書は企業の資金の流れの状況を表す。

キャッシュ・フロー計算書を作成することで、資金の流れの状況を把握する以外にも、黒字倒産(利益は出ているが、売掛金等の回収がされず、資金繰りに窮して倒産すること)の兆候を把握することができる。

連結財務諸表作成会社では、キャッシュ・フロー計算書は連結のみで作成するため、本フロー・チャートでは、「連結」キャッシュ・フロー計算書について解説する。

連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には、「原則法」「簡便法」がある。

「原則法」とは、各社ごとに個別キャッシュ・フロー計算書を作成し、そこから、連結会社間の内部取引の相殺などを行い、連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法である。

「簡便法」とは、連結貸借対照表の増減やその他の情報をもとに連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法である。

連結キャッシュ・フロー計算書には、「営業活動に係るキャッシュ・フロー」という区分がある(下記、【STEP3】参照)が、この表示方法には、「直接法」「間接法」がある。

「直接法」とは、主要な取引ごとにキャッシュ・フローについて総額で表示する方法である。

「間接法」とは、税金等調整前当期純利益に営業活動に係る資産(売掛金、棚卸資産等)及び負債(買掛金等)の増減、「投資活動によるキャッシュ・フロー(下記、【STEP4】参照)」及び財務活動によるキャッシュ・フロー(下記、【STEP5】参照)」の区分に含まれる損益項目を加減して表示する方法である。

連結キャッシュ・フロー計算書は、「簡便法」かつ「間接法」で作成する会社が多いと推測されるため(特にエクセルで連結キャッシュ・フロー計算書を作成する場合)、本フロー・チャートでは、「簡便法」かつ「間接法」で作成する場合について解説する。

そして、連結キャッシュ・フロー計算書の作成は、以下の9つのステップに分けることができる。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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