公開日: 2015/06/18 (掲載号:No.124)
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連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第1回】「法人税率の引下げ」

筆者: 足立 好幸

連結納税適用法人のための

平成27年度税制改正

【第1回】

「法人税率の引下げ」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト パートナー
足立 好幸

 

~はじめに~

「連結納税適用法人にとっての“税制改正”」は、次の4種類に分類される。

 連結納税独自の税制に係る改正

 単体納税と共通の税制で単体納税と異なる取扱いに係る改正(連結グループ全体計算)

 単体納税と共通の税制で単体納税と異なる取扱いに係る改正(各連結法人単位の計算)

 単体納税と同一の取扱いに係る改正

上記のうち、は、損益通算、連結欠損金、時価評価、連結子法人株式の帳簿価額修正など単体納税では制度自体が存在しない連結納税独自の税務上の取扱いについて改正されるものである。

次に、は、受取配当等の益金不算入制度、研究開発税制、所得拡大促進税制、連結法人税など単体納税にも同じ制度が存在するが、連結納税グループでの全体計算と個別帰属額の計算を行う税務上の取扱いについて改正されるものである。

は、貸倒引当金など単体納税にも同じ制度が存在し、単体納税と同様に各連結法人を計算単位とするが、連結法人間の債権及び負債利子を除くなど一部について単体納税とは異なる税務上の取扱いについて改正されるものである。

最後に、は、減価償却制度、繰延資産、一括償却資産、賞与引当金など単体納税と同じ取扱いとなるものに係る改正である。

そして、平成27年度税制改正についても、連結法人税率の引下げ()や連結欠損金の繰越控除制度の見直し()、受取配当等の益金不算入制度、研究開発税制、所得拡大促進税制の見直し()、タックス・ヘイブン税制の見直し()、損金算入配当等の益金不算入の除外措置、事業税率の改正及び負担軽減措置()、付加価値割における所得拡大促進税制の導入()などの改正があり、連結納税適用法人についても単体納税適用法人と同様に今年度の税制改正の影響は小さくない。

そうした中、毎年度、税制改正については、多くの書籍や雑誌などで解説されているが、連結納税制度に係る取扱いについては、「連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われています。」という一言で片づけられてしまうことも多く、連結納税適用法人にとって、従来の税制改正の解説は十分なものではなかったといえる。

以上より、本稿では、連結納税適用法人(注)のための平成27年度税制改正をテーマとして、に限定することなく、連結納税適用法人に関係するすべての税制改正について、平成27年3月31日に公布され、平成27年4月1日以後から施行されている改正税法等に基づいて、その取扱いを解説していくこととする。

(注) 本稿でいう「連結納税適用法人」は普通法人であるものとする。したがって、連結親法人が協同組合等の場合は本稿の対象外としている。

本稿で取り上げる項目は以下のとおりである。

[1] 連結法人税率の引下げ(今回)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。

 

[1] 連結法人税率の引下げ

1 改正内容

(1) 連結法人税率の引下げ

普通法人である連結親法人の税率が23.9%(改正前25.5%、▲1.6%)に引き下げられる(法法81の12①)。
また、連結法人税及び地方法人税の個別帰属額の計算に適用される税率も、同様に引き下げられることとなる(法法81の18①、地方法15①)

(2) 連結親法人が中小法人等に該当する場合の軽減税率の適用

連結親法人が中小法人等に該当する場合の軽減税率の特例(連結所得の金額のうち年800 万円以下の部分に対する税率を19%から15%に引き下げる措置)の適用期限を2年延長する。

具体的には、連結親法人が中小法人等に該当する場合、連結所得金額のうち年800 万円以下の部分に対する税率を19%にする軽減税率の適用制度があるが、平成24年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各連結事業年度の連結所得に対しては、その軽減税率を15%に引き下げることとなる(措法68の8①、法法81の12②⑥)。

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連結納税適用法人のための

平成27年度税制改正

【第1回】

「法人税率の引下げ」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト パートナー
足立 好幸

 

~はじめに~

「連結納税適用法人にとっての“税制改正”」は、次の4種類に分類される。

 連結納税独自の税制に係る改正

 単体納税と共通の税制で単体納税と異なる取扱いに係る改正(連結グループ全体計算)

 単体納税と共通の税制で単体納税と異なる取扱いに係る改正(各連結法人単位の計算)

 単体納税と同一の取扱いに係る改正

上記のうち、は、損益通算、連結欠損金、時価評価、連結子法人株式の帳簿価額修正など単体納税では制度自体が存在しない連結納税独自の税務上の取扱いについて改正されるものである。

次に、は、受取配当等の益金不算入制度、研究開発税制、所得拡大促進税制、連結法人税など単体納税にも同じ制度が存在するが、連結納税グループでの全体計算と個別帰属額の計算を行う税務上の取扱いについて改正されるものである。

は、貸倒引当金など単体納税にも同じ制度が存在し、単体納税と同様に各連結法人を計算単位とするが、連結法人間の債権及び負債利子を除くなど一部について単体納税とは異なる税務上の取扱いについて改正されるものである。

最後に、は、減価償却制度、繰延資産、一括償却資産、賞与引当金など単体納税と同じ取扱いとなるものに係る改正である。

そして、平成27年度税制改正についても、連結法人税率の引下げ()や連結欠損金の繰越控除制度の見直し()、受取配当等の益金不算入制度、研究開発税制、所得拡大促進税制の見直し()、タックス・ヘイブン税制の見直し()、損金算入配当等の益金不算入の除外措置、事業税率の改正及び負担軽減措置()、付加価値割における所得拡大促進税制の導入()などの改正があり、連結納税適用法人についても単体納税適用法人と同様に今年度の税制改正の影響は小さくない。

そうした中、毎年度、税制改正については、多くの書籍や雑誌などで解説されているが、連結納税制度に係る取扱いについては、「連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われています。」という一言で片づけられてしまうことも多く、連結納税適用法人にとって、従来の税制改正の解説は十分なものではなかったといえる。

以上より、本稿では、連結納税適用法人(注)のための平成27年度税制改正をテーマとして、に限定することなく、連結納税適用法人に関係するすべての税制改正について、平成27年3月31日に公布され、平成27年4月1日以後から施行されている改正税法等に基づいて、その取扱いを解説していくこととする。

(注) 本稿でいう「連結納税適用法人」は普通法人であるものとする。したがって、連結親法人が協同組合等の場合は本稿の対象外としている。

本稿で取り上げる項目は以下のとおりである。

[1] 連結法人税率の引下げ(今回)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。

 

[1] 連結法人税率の引下げ

1 改正内容

(1) 連結法人税率の引下げ

普通法人である連結親法人の税率が23.9%(改正前25.5%、▲1.6%)に引き下げられる(法法81の12①)。
また、連結法人税及び地方法人税の個別帰属額の計算に適用される税率も、同様に引き下げられることとなる(法法81の18①、地方法15①)

(2) 連結親法人が中小法人等に該当する場合の軽減税率の適用

連結親法人が中小法人等に該当する場合の軽減税率の特例(連結所得の金額のうち年800 万円以下の部分に対する税率を19%から15%に引き下げる措置)の適用期限を2年延長する。

具体的には、連結親法人が中小法人等に該当する場合、連結所得金額のうち年800 万円以下の部分に対する税率を19%にする軽減税率の適用制度があるが、平成24年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各連結事業年度の連結所得に対しては、その軽減税率を15%に引き下げることとなる(措法68の8①、法法81の12②⑥)。

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連載目次

*  *  *

税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 

▷令和3年度税制改正(全7回)

▷令和2年度税制改正(全9回)

▷平成31年度税制改正(全8回)

▷平成30年度税制改正(全9回)

▷平成29年度税制改正(全9回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

はじめに

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

2 『自己創設営業権』の評価問題が解消!

3 連結納税開始日・加入日が平成29年10月1日の場合は旧税制が適用に!

4 どうせ時価課税されるなら、合併で時価譲渡になる方がいいのか、スクイーズアウトで時価評価される方がいいのか?(時価課税の有利・不利)

【第2回】 スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

[2] スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

1 改正内容

2 連結納税の不利益を受けずに少数株主排除が可能に!

3 連結納税開始日が平成29年10月1日以後であっても、株式交換等が平成29年9月30日以前に行われた場合は旧税制が適用される!

4 全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式により連結納税に加入した場合、「完全支配関係を有することとなった日」はいつになるのか?

【第3回】 研究開発税制の見直し

[3] 研究開発税制の見直し

【第4回】 所得拡大促進税制の見直し他

[4] 所得拡大促進税制の見直し

[5] 役員給与等の見直し

[6] 地域未来投資促進税制の創設

【第5回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その1)

[7] 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充

1 中小企業経営強化税制の創設

【第6回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)

2 中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の延長

3 商業・サービス業活性化税制の適用期限の延長

【第7回】 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限、災害特例措置

[8] 震災・災害に関する税制措置の整備

[9] 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限

【第8回】 連結法人の申告期限の延長の見直し

[10] 連結法人の申告期限の延長の見直し

1 法人税の申告期限の延長について

2 事業税の申告期限の延長について

【第9回】 地方税率の改正時期の変更他

[11] 地方税率の改正時期の変更

[12] 組織再編税制に係る改正

[13] タックス・ヘイブン税制の総合的見直し

▷平成28年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率等の改正

~はじめに~

[1] 連結法人税、連結地方法人税、住民税、事業税の税率の改正

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し

[2] 連結欠損金の繰越控除制度の見直し

[3] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[4] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第3回】 減価償却制度の見直し

[5] 減価償却制度の見直し

【第4回】 役員給与の見直し

[6] 役員給与の見直し

【第5回】 雇用促進税制の見直し

[7] 雇用促進税制の見直し

【第6回】 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

[8] 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

【第7回】 組織再編関連税制の見直し

[9] 適格現物出資の見直し

[10] 組織再編税制の見直し

【第8回】 移転価格文書化制度(その1)

[11] 移転価格文書化制度

1 多国籍企業グループの移転価格文書化制度

(1) 国別報告書

【第9回】 移転価格文書化制度(その2)

(2) マスターファイル(事業概況報告事項)

【第10回】 移転価格文書化制度(その3)

(3) ローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)

2 国外事業所等との内部取引に係る移転価格文書化制度

【第11回】 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

[12] 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

【第12回】 その他国際税務の改正・固定資産税の特例措置

[13] 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制)の見直し

[14] 国際課税原則の帰属主義への変更の円滑な実施

[15] 機械装置の固定資産税の特例措置の創設

▷平成27年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率の引下げ

~はじめに~

[1] 連結法人税率の引下げ

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その1)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

(1) 連結欠損金の控除限度額の段階的引き下げ

(2) 連結所得金額の100%を控除限度額とする特例

① 中小法人等

② 経営再建中の法人

【第3回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)

③ 新設法人

【第4回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その3)

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第5回】 受取配当等の益金不算入制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

【第6回】 研究開発税制の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

【第7回】 地方拠点強化税制の創設(その1)

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

(1) 改正の概要

(2) 地方拠点建物等の取得費の特例措置

【第8回】 地方拠点強化税制の創設(その2)

(3) 雇用促進税制の拡充

【第9回】 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

【第10回】 所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

【第11回】 事業税の改正

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

【第12回】 国際税務の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

筆者紹介

足立 好幸

(あだち・よしゆき)

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト

グループ通算制度・連結納税制度・組織再編税制を専門にグループ企業の税制最適化、企業グループ税制に係る業務を行う。

著書に、『令和6年10月改訂 プロフェッショナル グループ通算制度』『グループ通算制度への移行・採用の有利・不利とシミュレーション』『グループ法人税制Q&A』『M&A・組織再編のスキーム選択』(以上、清文社)、『グループ通算制度の実務Q&A』『グループ通算制度の税効果会計』『早わかり 連結納税制度の見直しQ&A-グループ通算制度の創設で何が変わる?』『ケーススタディでわかる連結納税申告書の作り方』『連結納税の組織再編税制ケーススタディ』『連結納税の清算課税ケーススタディ』『連結納税の欠損金Q&A』『連結納税導入プロジェクト』(以上、中央経済社)など多数。
 

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