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平成29年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第8回】「連結法人の申告期限の延長の見直し」

筆者:足立 好幸

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平成29年度税制改正における

『連結納税制度』改正事項の解説

【第8回】

「連結法人の申告期限の延長の見直し」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト
足立 好幸

 

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[10] 連結法人の申告期限の延長の見直し

平成29年度税制改正においては、「攻めの経営」を促すコーポレートガバナンス税制の一環として、企業と株主・投資家との充実した対話を促すため、上場企業等が定時株主総会の開催日を柔軟に設定できるよう、決算日から3ヶ月を超えた日に定時株主総会を開催する場合(例えば3月期決算企業が定時株主総会を7月以降に開催する場合)、定時株主総会後に法人税の確定申告を行うことを可能とする措置が講じられた。

具体的には、連結確定申告書について、平成29年4月1日以後に申請するものについて、次のように取り扱われることとなる(新法法81の24①、平成29年所法等改正法附則1)。

なお、既に2ヶ月間の延長の適用を受けている場合は、改正後も2ヶ月間の延長が認められる(平成29年所法等改正法附則25①②)。

 

1 法人税の申告期限の延長について

(1) 2ヶ月間の延長

連結親法人の連結確定申告書の提出期限は、原則、各連結事業年度終了の日の翌日から2月以内であるが、次に掲げる理由がある場合、2ヶ月間延長することができる(新法法81の24①、81の22①)。

連結親法人が、定款等の定めにより、若しくは、連結法人に特別の事情があることにより、2ヶ月以内に決算についての定時株主総会が招集されない常況にあると認められる場合

連結親法人が、連結子法人が多数に上ることその他これに類する理由により、2ヶ月以内に連結確定申告書を提出することができない常況にあると認められる場合

〈例1〉決算日が3月31日&定時株主総会が6月の連結親法人の場合

7月末(原則5月末+2ヶ月間)まで申告期限が延長されることとなる。
この場合、定時株主総会の開催月の翌月末まで、つまり、単体申告よりも余分に1ヶ月の延長が認められることとなる(新法法75の2①)。

〈例2〉決算期が3月31日&定時株主総会が7月の連結親法人の場合

7月末(原則5月末+2ヶ月間)まで申告期限が延長されることとなる。
この場合、定時株主総会の開催月の末日まで、つまり、単体申告と同期間の延長が認められることとなる(新法法75の2①)。

この点、〈例2〉のように、定時株主総会が3ヶ月超、4月以内の場合は、次の(2)ではなく、この(1)の定めに従って延長が行われることとなる点に注意が必要である。

そして、連結納税の申告期限の延長について、改正前は〈例1〉のケースしか存在しなかったであろうが、改正後は〈例2〉のケースが生じることが想定される。

(2) 2ヶ月超4ヶ月以内の延長

今回の改正によって、次に掲げる場合について。2ヶ月超4ヶ月以内の延長が認められることとなった。

連結親法人が、会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより各連結事業年度終了の日の翌日から4ヶ月以内に決算についての定時株主総会が招集されない常況にあると認められる場合には、その定めの内容を勘案して4ヶ月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間の延長を認めることとする(新法法81の24①一)。

また、特別の事情があることにより、各連結事業年度終了の日の翌日から4ヶ月以内に決算についての定時株主総会が招集されない常況にあること、あるいは、4ヶ月以内に連結法人税の額等の計算が終了できない常況にあることその他やむを得ない事情があると認められる場合、税務署長が指定する月数の期間の延長を認めることとする(新法法81の24①二)。

なお、会計監査人を置いていない場合、あるいは、定款等の定めによらない場合で、連結子法人が多数に上ることを特別の事情として、上記の2ヶ月を超える申告期限の延長が認められるかであるが、このような場合に、すでに(1)で2ヶ月の延長を認めている以上、連結子法人が多く決算が締まらないことを理由として、税務署長が、(2)よりもさらに最大2ヶ月の延長を認めることは、想定されていないと思われる。

〈例3〉決算日が3月31日&定時株主総会が8月の連結親法人の場合

8月末(原則5月末+3ヶ月間)まで申告期限が延長されることとなる。
この場合、改正前の連結納税の申告期限の延長((1)〈例1〉のケース)と同様に、定時株主総会の開催月の翌月末まで、つまり、単体申告よりも余分に1ヶ月の延長が認められるかどうか疑問も生じるだろう(〈例3〉の場合に9月末まで延長できるかどうか)。

しかし、(1)〈例2〉のケースの場合、余分の1ヶ月の延長が認められてないことからすると、〈例3〉についてもプラス1ヶ月の9月末ではなく、8月末までの延長になると考えられる。

この点、今回の改正は、連結納税の実務負担の軽減を目的としたものではなく、外国企業と同様に定時株主総会の開催日を柔軟に設定できる環境を整備するにあたって法人税の申告期限が足かせにならないようにするための改正であることから、当然の取扱いであるといえる。

〈例4〉決算日が3月31日&定時株主総会が9月の連結親法人の場合

9月末(原則5月末+4ヶ月間)まで申告期限が延長されることとなる。

決算日と定時株主総会開催月と申告期限の関係

以下、定款等の定め、会計監査人の設置など他の延長要件が満たされていることを前提とする。決算日 定時株主総会開催月 延長後の申告期限 連結申告 単体申告 3月31日 5月   5月末(※) 5月末 3月31日 6月 7月末 6月末 3月31日 7月 7月末 7月末 3月31日 8月 8月末 8月末 3月31日 9月 9月末 9月末

(※) 連結子法人が多数に上ること等により、2ヶ月以内に連結確定申告書を提出することができない場合は7月末まで延長が認められる。

 

2 法人税の申告期限の延長の申請期限について

申告期限の延長の特例の申請書」に定款等の写し及びケースごとに必要となる書類を添付し、延長の適用を受けようとする連結事業年度終了の日の翌日から45日以内に納税地の所轄税務署に提出する必要がある(新法法81の24②、75の2③④)。

また、住民税について、各連結法人は、連結確定申告書の提出期限の延長の処分があった日から7日以内に「法人税に係る申告書の提出期限の延長の処分等の届出」(東京都様式申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認申請書)を都税事務所、県税事務所、市区町村に提出する必要がある。

 

3 事業税の申告期限の延長について

各連結法人の事業税の申告期限についても、法人税と同期間の延長が可能となる(新地法72の25⑤、72の28②)。

延長が認められる要件についても法人税と同じである(新地法72の25⑤)。

また、各連結法人は、事業税の申告期限の延長の適用を受けるためには、法人税の申請とは別に、延長の適用を受けようとする事業年度終了の日の翌日から45日以内に「事業税等に係る申告書の提出期限の延長の承認申請」(東京都様式申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認申請書)を都税事務所、県税事務所に提出する必要がある。

なお、添付書類も法人税と同様に、定款等の写し及びケースごとに必要となる書類を添付する必要がある(新地令24の4③、24の4の3①)。

 

〔凡例〕
新法法・・・(平成29年度税制改正後の)法人税法
新法令・・・(平成29年度税制改正後の)法人税法施行令
新法規・・・(平成29年度税制改正後の)法人税法施行規則
新地方法・・・(平成29年度税制改正後の)地方法人税法
新地法・・・(平成29年度税制改正後の)地方税法
新地令・・・(平成29年度税制改正後の)地方税法施行令
新措法・・・(平成29年度税制改正後の)租税特別措置法
旧措法・・・(平成29年度税制改正前の)租税特別措置法
新措令・・・(平成29年度税制改正後の)租税特別措置法施行令
旧措令・・・(平成29年度税制改正前の)租税特別措置法施行令
平成29年改正法令・・・法人税法施行令等の一部を改正する政令(平成29年政令第106号)
連基通・・・連結納税基本通達
新連基通・・・(平成29年度税制改正後の)連結納税基本通達
(例)新法法122の12①四・・・(平成29年度税制改正後の)法人税法122条の12第1項第4号

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 

▷平成31年度税制改正(全8回)

▷平成30年度税制改正(全9回)

▷平成29年度税制改正(全9回)

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【第1回】 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

はじめに

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

2 『自己創設営業権』の評価問題が解消!

3 連結納税開始日・加入日が平成29年10月1日の場合は旧税制が適用に!

4 どうせ時価課税されるなら、合併で時価譲渡になる方がいいのか、スクイーズアウトで時価評価される方がいいのか?(時価課税の有利・不利)

【第2回】 スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

[2] スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

1 改正内容

2 連結納税の不利益を受けずに少数株主排除が可能に!

3 連結納税開始日が平成29年10月1日以後であっても、株式交換等が平成29年9月30日以前に行われた場合は旧税制が適用される!

4 全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式により連結納税に加入した場合、「完全支配関係を有することとなった日」はいつになるのか?

【第3回】 研究開発税制の見直し

[3] 研究開発税制の見直し

【第4回】 所得拡大促進税制の見直し他

[4] 所得拡大促進税制の見直し

[5] 役員給与等の見直し

[6] 地域未来投資促進税制の創設

【第5回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その1)

[7] 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充

1 中小企業経営強化税制の創設

【第6回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)

2 中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の延長

3 商業・サービス業活性化税制の適用期限の延長

【第7回】 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限、災害特例措置

[8] 震災・災害に関する税制措置の整備

[9] 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限

【第8回】 連結法人の申告期限の延長の見直し

[10] 連結法人の申告期限の延長の見直し

1 法人税の申告期限の延長について

2 事業税の申告期限の延長について

【第9回】 地方税率の改正時期の変更他

[11] 地方税率の改正時期の変更

[12] 組織再編税制に係る改正

[13] タックス・ヘイブン税制の総合的見直し

▷平成28年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率等の改正

~はじめに~

[1] 連結法人税、連結地方法人税、住民税、事業税の税率の改正

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し

[2] 連結欠損金の繰越控除制度の見直し

[3] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[4] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第3回】 減価償却制度の見直し

[5] 減価償却制度の見直し

【第4回】 役員給与の見直し

[6] 役員給与の見直し

【第5回】 雇用促進税制の見直し

[7] 雇用促進税制の見直し

【第6回】 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

[8] 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

【第7回】 組織再編関連税制の見直し

[9] 適格現物出資の見直し

[10] 組織再編税制の見直し

【第8回】 移転価格文書化制度(その1)

[11] 移転価格文書化制度

1 多国籍企業グループの移転価格文書化制度

(1) 国別報告書

【第9回】 移転価格文書化制度(その2)

(2) マスターファイル(事業概況報告事項)

【第10回】 移転価格文書化制度(その3)

(3) ローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)

2 国外事業所等との内部取引に係る移転価格文書化制度

【第11回】 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

[12] 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

【第12回】 その他国際税務の改正・固定資産税の特例措置

[13] 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制)の見直し

[14] 国際課税原則の帰属主義への変更の円滑な実施

[15] 機械装置の固定資産税の特例措置の創設

▷平成27年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率の引下げ

~はじめに~

[1] 連結法人税率の引下げ

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その1)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

(1) 連結欠損金の控除限度額の段階的引き下げ

(2) 連結所得金額の100%を控除限度額とする特例

① 中小法人等

② 経営再建中の法人

【第3回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)

③ 新設法人

【第4回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その3)

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第5回】 受取配当等の益金不算入制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

【第6回】 研究開発税制の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

【第7回】 地方拠点強化税制の創設(その1)

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

(1) 改正の概要

(2) 地方拠点建物等の取得費の特例措置

【第8回】 地方拠点強化税制の創設(その2)

(3) 雇用促進税制の拡充

【第9回】 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

【第10回】 所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

【第11回】 事業税の改正

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

【第12回】 国際税務の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

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