公開日: 2019/08/16 (掲載号:No.331)
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平成31年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第8回】「その他の税制改正」

筆者: 足立 好幸

 

[8] 連結納税に係る届出手続の簡略化

1 加入日の特例規定の適用手続の簡略化

平成31年4月1日以後に他の内国法人が連結親法人との間に完全支配関係を有することとなった場合の「連結納税への加入時期の特例」の適用を受けるための手続について、連結親法人(改正前:連結子法人)に一元化する(法法14②、平成31年所法等改正法附則1、15)。

具体的には、『連結納税への加入時期の特例を適用する旨を記載した書類』の提出について、改正前は連結子法人が当該連結子法人の所轄税務署長に提出していたものを、改正後は、連結親法人が当該連結親法人の所轄税務署長に提出することになった。

ここで、「連結納税への加入時期の特例」とは、連結親法人事業年度の中途において、連結親法人との間に完全支配関係を有することとなり、かつ、その完全支配関係を有することとなった日(加入日)から加入日の前日の属する月次決算期間の末日まで継続して連結親法人による完全支配関係がある場合に、連結納税の承認があった日として、完全支配関係発生日の前日の属する月次決算期間の末日の翌日に連結納税に加入したものとみなす取扱い(第1号加入時期の特例)、及びその完全支配関係を有することとなった日(加入日)から加入日の前日の属する月次決算期間の末日まで継続して連結親法人による完全支配関係がない場合に、加入と離脱のみなし事業年度を設けなくてよいものとする取扱い(第2号加入時期の特例)の2つがある(法法14②、4の3⑩)。

この場合、その特例が適用されない場合の完全支配関係発生日の前日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限までに、『連結納税への加入時期の特例を適用する旨を記載した書類』を所轄税務署長に提出する必要がある(法法14②)。

なお、平成30年度税制改正において、連結子法人は『完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類』の提出が不要となり、連結親法人のみが当該書類を提出することとなったが(法令14の7③)、今回の改正により、完全支配関係を有することとなった旨の届出と連結納税への加入時期の特例の届出をまとめて、連結親法人のみが、『完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類及び連結納税への加入時期の特例を適用する旨を記載した書類』を当該連結親法人の所轄税務署長に提出すればよいことになる。

 

2 連結子法人の本店等所在地の異動届出の簡略化

平成31年4月1日以後に連結子法人の本店等所在地に異動があった場合に提出することとされている届出書について、提出すべき法人をその連結子法人(改正前:連結親法人)とした上、連結親法人の納税地の所轄税務署長への提出を要しないこととする(法法20、平成31年所法等改正法附則1、16)。

改正前は、連結子法人の本店又は主たる事務所の所在地に異動があった場合、連結親法人が及びの両方に異動届出書を提出する必要があった(旧法法20②)。

 連結親法人の納税地の所轄税務署長

 異動のあった連結子法人の異動前の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長

 

平成31年度税制改正における

『連結納税制度』改正事項の解説

【第8回】
(最終回)

「その他の税制改正」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト
足立 好幸

 

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[7] 国際税務の見直し

国際税務についても単体納税と同様に、以下の項目に係る改正が行われている。

 

1 移転価格税制の見直し

移転価格税制について、BEPSプロジェクトを踏まえ、独立企業間価格の算定方法として、DCF法を追加するとともに、DCF法で独立企業間価格を算定するものであること等の要件を満たす一定の評価困難な無形資産取引において、予測と実績が一定程度乖離した場合に独立企業間価格の事後的な調整措置を導入することとなった。

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連載目次

*  *  *

税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 

▷令和3年度税制改正(全7回)

▷令和2年度税制改正(全9回)

▷平成31年度税制改正(全8回)

▷平成30年度税制改正(全9回)

▷平成29年度税制改正(全9回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

はじめに

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

2 『自己創設営業権』の評価問題が解消!

3 連結納税開始日・加入日が平成29年10月1日の場合は旧税制が適用に!

4 どうせ時価課税されるなら、合併で時価譲渡になる方がいいのか、スクイーズアウトで時価評価される方がいいのか?(時価課税の有利・不利)

【第2回】 スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

[2] スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

1 改正内容

2 連結納税の不利益を受けずに少数株主排除が可能に!

3 連結納税開始日が平成29年10月1日以後であっても、株式交換等が平成29年9月30日以前に行われた場合は旧税制が適用される!

4 全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式により連結納税に加入した場合、「完全支配関係を有することとなった日」はいつになるのか?

【第3回】 研究開発税制の見直し

[3] 研究開発税制の見直し

【第4回】 所得拡大促進税制の見直し他

[4] 所得拡大促進税制の見直し

[5] 役員給与等の見直し

[6] 地域未来投資促進税制の創設

【第5回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その1)

[7] 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充

1 中小企業経営強化税制の創設

【第6回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)

2 中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の延長

3 商業・サービス業活性化税制の適用期限の延長

【第7回】 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限、災害特例措置

[8] 震災・災害に関する税制措置の整備

[9] 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限

【第8回】 連結法人の申告期限の延長の見直し

[10] 連結法人の申告期限の延長の見直し

1 法人税の申告期限の延長について

2 事業税の申告期限の延長について

【第9回】 地方税率の改正時期の変更他

[11] 地方税率の改正時期の変更

[12] 組織再編税制に係る改正

[13] タックス・ヘイブン税制の総合的見直し

▷平成28年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率等の改正

~はじめに~

[1] 連結法人税、連結地方法人税、住民税、事業税の税率の改正

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し

[2] 連結欠損金の繰越控除制度の見直し

[3] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[4] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第3回】 減価償却制度の見直し

[5] 減価償却制度の見直し

【第4回】 役員給与の見直し

[6] 役員給与の見直し

【第5回】 雇用促進税制の見直し

[7] 雇用促進税制の見直し

【第6回】 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

[8] 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

【第7回】 組織再編関連税制の見直し

[9] 適格現物出資の見直し

[10] 組織再編税制の見直し

【第8回】 移転価格文書化制度(その1)

[11] 移転価格文書化制度

1 多国籍企業グループの移転価格文書化制度

(1) 国別報告書

【第9回】 移転価格文書化制度(その2)

(2) マスターファイル(事業概況報告事項)

【第10回】 移転価格文書化制度(その3)

(3) ローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)

2 国外事業所等との内部取引に係る移転価格文書化制度

【第11回】 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

[12] 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

【第12回】 その他国際税務の改正・固定資産税の特例措置

[13] 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制)の見直し

[14] 国際課税原則の帰属主義への変更の円滑な実施

[15] 機械装置の固定資産税の特例措置の創設

▷平成27年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率の引下げ

~はじめに~

[1] 連結法人税率の引下げ

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その1)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

(1) 連結欠損金の控除限度額の段階的引き下げ

(2) 連結所得金額の100%を控除限度額とする特例

① 中小法人等

② 経営再建中の法人

【第3回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)

③ 新設法人

【第4回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その3)

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第5回】 受取配当等の益金不算入制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

【第6回】 研究開発税制の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

【第7回】 地方拠点強化税制の創設(その1)

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

(1) 改正の概要

(2) 地方拠点建物等の取得費の特例措置

【第8回】 地方拠点強化税制の創設(その2)

(3) 雇用促進税制の拡充

【第9回】 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

【第10回】 所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

【第11回】 事業税の改正

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

【第12回】 国際税務の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

筆者紹介

足立 好幸

(あだち・よしゆき)

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト

グループ通算制度・連結納税制度・組織再編税制を専門にグループ企業の税制最適化、企業グループ税制に係る業務を行う。

著書に、『令和6年10月改訂 プロフェッショナル グループ通算制度』『グループ通算制度への移行・採用の有利・不利とシミュレーション』『グループ法人税制Q&A』『M&A・組織再編のスキーム選択』(以上、清文社)、『グループ通算制度の実務Q&A』『グループ通算制度の税効果会計』『早わかり 連結納税制度の見直しQ&A-グループ通算制度の創設で何が変わる?』『ケーススタディでわかる連結納税申告書の作り方』『連結納税の組織再編税制ケーススタディ』『連結納税の清算課税ケーススタディ』『連結納税の欠損金Q&A』『連結納税導入プロジェクト』(以上、中央経済社)など多数。
 

関連書籍

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