公開日: 2020/07/22 (掲載号:No.379)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第49回】「特定譲渡制限付株式の会計処理」

筆者: 西田 友洋

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【STEP2】交付後の会計処理

特定譲渡制限付株式の交付後は、現物出資等をされた報酬債権相当額のうち、その役員等が提供する役務として当期に発生したと認められる額を、対象勤務期間(=譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法により算定し、「株式報酬費用」等で費用計上することが考えられる。

なお、付与した報酬債権相当額のうち譲渡制限解除の条件未達により会社が役員等から株式を無償取得することとなった部分(役員等から役務提供を受けられなかった部分)については、その部分に相当する前払費用等を取り崩し、同額を損失処理することなどが考えられる。

【自己株式を処分する場合】

特定譲渡制限付株式の付与を新株発行ではなく自己株式の処分による場合には、自己株式の帳簿価額を減額し、自己株式の処分の対価(報酬債権相当額)と帳簿価額との差額である処分差額(「自己株式処分差益」又は「自己株式処分差損」)を、その他資本剰余金として処理する。

また、その処理の結果、その他資本剰余金の残高がマイナスとなる場合には、期末日において、その他資本剰余金をゼロとし、その負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する。

 

《会計処理の例》

(出所:経済産業省 『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-Q44

【税効果の取扱い】

特定譲渡制限付株式が以下のいずれかに該当する場合、法人税法上、損金算入される。

事前確定届出給与の損金算入要件を満たす場合

退職給与に該当する場合

そして、会計上は、毎期、費用処理する一方、税務上は譲渡制限が解除された時点で損金算入されるため、一時差異が生じる。そのため、回収可能性を検討した上で、繰延税金資産を計上する必要がある。

 

*  *  *

以上、2のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。

※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第49回】

「特定譲渡制限付株式の会計処理」

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

会社が役員に対して報酬債権を付与し、役員等から報酬債権の現物出資を受けるのと引き換えに、その役員等に対して交付された一定期間の譲渡制限がある株式のことを「特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」という。近年、当該株式を交付しているケースが増えている。

そこで、今回は、「特定譲渡制限付株式の会計処理」について解説する。なお、「特定譲渡制限付株式」については、まだ会計基準がないため、経済産業省から公表されている『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』に沿って解説を行う。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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